ちょっと一息

将来のお金とキャリア

マネープランの前に必ず考えておきたいこと

[2014/11/26]

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 「これから先、いくらお金が必要なのか心配」
 「子どもの教育費が高そうだけど大丈夫かしら」
 「老後もちゃんと生活していけるのだろうか」
 そんな漠然とした不安が頭をよぎることはありませんか? 経済動向や年金制度など、けっして明るいとは言えない情報が飛び交っていますから、そうした思いを抱くのは当然のことかもしれません。
 近年は「マネープランを立てよう」というような記事やセミナーなども多く見受けられます。でも、マネープランを考える際、見逃しやすい落とし穴があるそうです。
 ファイナンシャル・プランナーでもありキャリアカウンセラー(CDA)でもある鈴木茂美さんに、その注意点と望ましい考え方についておうかがいしました。ぜひご一読ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 キャリアカウンセラー(CDA)
 ファイナンシャル・プランナー
 鈴木 茂美 さん

企業におけるコミュニケーション力向上のためのトレーニング・研修などの教育担当をするかたわら、シングルマザーの支援をめざして、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)とファイナンシャル・プランナーの資格を取得。ママを元気にする活動や、お金にまつわる市民講座の講師や個別相談対応なども行っている。


将来の必要資金は人によって違う

 マネープランに関する個別相談に対応していると、ご相談者の方から「将来、いくらくらいお金が必要なのでしょうか?」「保険を見直したいと思っているのですが、どうすればいいでしょうか?」などの相談を受けることがあります。
 そんな時、私は「どうしてそう思われるのですか?」とご質問します。その上で、ご自身どのようなライフデザインを描いているをじっくりとうかがいます。ライフデザインとは、今後の生き方のことです。どのような家族・家庭を望んでいるのか、仕事・キャリアをどうしたいのかなど、個人の価値観を反映した展望だとも言えるでしょう。
 もちろん、思い描くライフデザインは一人ひとり異なります。そして、ライフデザインが異なれば、必要な資金も変わってきます。ですからマネープランとは、自分独自のライフデザインに合わせて考えていく必要があるのです。各種の統計で見られるような、平均的あるいは一般的な「老後の必要資金」が自分に合うとは限りませんので、十分にご留意ください。むしろ、合わないケースの方が多いと思った方がいいかもしれません。

 以上のことは、「将来の生活費に漠然とした不安があるのだけど、何をどう考えればいいのかわからない」というケースも同様です。
 いずれの場合も、まずはご自身が「どのようなライフデザインを描いているのか」を明らかにすることがスタートラインになります。


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家族をどうするか、自分をどうするか

 では、ライフデザインをどのように描けばいいのでしょうか? お金に大きく影響するのは家族のライフイベントですから、少なくとも次のことについて、ご自身が「どうしたいか?」を考えてみましょう。
 ・パートナーを持つか、持たないか?
 ・子どを生むか、生まないか? 生むなら何人か?
 ・子どもへの資金援助をいつまでするか? 社会人になるまでか? あるいは、結婚資金や結婚後の援助もするか?
 ・持ち家を持つか、持たないか?
 ・親の介護をどうするか?

 家族については必ずこれらを押さえておいてください。ただ、それだけでは大事なことが抜けています。それは、自分のことです。大きく分けると次の2つになります。
 ・どのようなキャリアアップを望むか?
 ・どのようなセカンドライフを望むか?

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 お子さんがいらっしゃる方は、もしかすると教育費のことで頭がいっぱいかもしれません。でも多くの場合、お子さんは成人してまもなくすると親元から離れます。日本の平均寿命を考えると、その後の人生の方が長いのです。
 ですから、自分の時間が取れるようになった時に何をするか、何をしたいかまで考えておきたいものです。現在の仕事をいつまで続けるはもちろん、退職後のキャリア、余暇の過ごし方、社会とのかかわも含めて、ご自身のキャリアを改めて棚卸して、今後に対する意思を整理してみてください
 子育てが終わってから考えるのでは、「何をしていいかわからない」などと意外に思いつかず、結果として子離れできないというケースが生じることもあります。自分のことは見落としたり軽視したりしがちですので、ぜひこの機会に掘り下げてみられてはいかがでしょうか?


ライフデザインを整理できればマネープランは簡単

 ライフデザインを整理できれば、マネープランを立てることは比較的簡単です。
 まず、自分が希望する個々のライフイベントについて、費用がいくらかかるを調べてみましょう。インターネットで統計情報などを検索すれば、おおよその予算がわかります。そうすれば、いつまでにいくら必要かが見えてくるはずです。
 次に、適切な時期に必要資金を準備できるかを検討します。もし準備できる見込みがなければ、ライフデザインの個別要素に優先順位をつけた上で、何を変化させればより望ましい将来を送れるかを考えるといいでしょう。

 こうしたことを1人で整理・検討するのが難しい場合は、関連講座・セミナーなどのイベントに出向いたり、専門家に尋ねたりするのがいいかと思います。ただ、世の中にはさまざまなイベントがあり、専門家も得意分野が異なります。ですから、事前告知資料などをよく読んで、キャリアを含めて幅広い視野で話が聞けるような場に出向かれることをお勧めいたします。


女性は特に早めのライフデザイン検討を

 人によってはもしかすると、「そんなことを考えるのは、自分には早すぎる」と思うかもしれません。でも、ライフデザインを考えることに、早すぎるということはありません。むしろ、女性の場合は特に、早めに考え始めましょう。できれば、20代半ばくらいから考えておくのが理想的です。
 なぜなら、出産がキャリア形成に大きく影響するからです。業種や組織によって異なりますので一概には言えませんが、現実問題として出産・育児休暇はキャリアのブランクになりがちです。たとえ、休暇後に復職してキャリアを築き上げようと思っても、組織の実情や家庭の事情などによって、思い通りにいかないことが往々にしてあるからです。
 逆に、休暇を取る前にある程度のキャリアを築き、組織に必要とされる人材になっておけば、いつでもいいから、ぜひ戻ってきてほしい」と望まれやすくなります。
 組織の特性も踏まえた上で、ライフデザインを考えておくことは、その後のキャリア形成にも大きく影響するのです。

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 一方で、「これからキャリアを考えても遅いんじゃないかしら」「今さらキャリアを考えて意味があるのかしら」と思う方がいらっしゃるかもしれません。でも、そんな風に思わないでください。キャリアチェンジは何歳になっても可能です。
 大切なことは、自分の可能性を信じることです。キャリアをきちんと棚卸して自分の強みを把握できれば、可能性を見い出せるはずです。また、「実は私、これをやりたいんだ」という想いがあれば、諦めないでください。いつか、その想いを後押ししてくれる人と出会えるかもしれません。勇気をもって一歩を踏み出せば、何かが回り始めることも多々あります。

 将来のお金について考える際は、事務的にマネープランを立てるのではなく、自分のキャリアや価値観も明確にする——そんな機会にしてはいかがでしょうか。

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