40歳代、バブル期入社社員のキャリア課題と企業のサポート
[2012/09/26]
バブル期に入社した40歳代社員が、今、企業の人事・教育担当者の関心事のひとつとなっています。というのは、この世代が抱く思いと企業の状況との間で、大きなズレが生じているからです。
実際、日本マンパワーで「40歳代社員のキャリア開発」というテーマで人事・教育担当者向けセミナーを開催すると、定員を超えるほどの応募が殺到します。先日の8月9日には、テレビ東京系列の番組『ワールドビジネスサテライト』で「バブル社員と企業の新しい関係」が取り上げられ、セミナーの様子も紹介されました。
バブル期に入社した社員は何に不安を感じているのか?
企業はどのような問題に直面しているのか?
双方にとって望ましい解決策はどのようなものか?
これらの疑問について、今回からシリーズでご説明していきます。指南役はセミナーでも講師を務める日本マンパワー・片山繫載さんです。深く大切な問題ですので、ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
取締役 教育研修・人材事業担当
片山 繫載 さん
この先をどうするか——本人も企業も難しい局面
バブル経済の時期に学卒で入社した人は、今、43歳から47歳くらいかと思います。この、いわゆるバブル期入社社員をめぐって、本人たちも企業も難しい局面を迎えています。その局面を望ましい方向に転回していくため、現状、原因、解決策についてお話しさせていただきます。
ただ、最初に留意してほしいのは、バブル期入社社員をめぐる問題について「単なる世代論として考えない」ということです。世代の特徴だと捉えてしまうと、本当の原因を見失ってしまい、的確な解決策を見い出しにくくなるからです。
バブル期入社社員の問題を検討する際には、これまで二十余年の企業や社会の状況と照らして考えるべきでしょう。そのことをお断りした上で、お話しいたします。
45歳を過ぎても課長になれない
まず、バブル期入社社員を対象に日本マンパワーが調査したアンケート結果(平成23年10月実施)をご紹介します。
アンケート結果から読み取れることは、「マンネリ・停滞感」「不平不満」「依存体質」「あきらめ感」です。これらの数値は、ほかの世代に比べて比較的高いと言えます。しかも、こうしたバブル期入社社員の心のうちに対して、残念ながら、企業は適切な措置・体制を整えられていないと言わざるを得ません。
なぜこのような現象が生まれているのでしょうか。 第1に「バブル期の採用人数の多さ」が挙げられます。1991年の大卒有効求人倍率は、最高値で2.8倍を超えたと言われます。たとえば、例年100人しか新卒採用していない企業が、150人、200人、250人などの新人を採用したのです。
それから二十余年。大量に入社した新人は、一部の人たちが転職したとは言え、今も多くが会社に残っています。しかし、その人数に対応するだけの管理職ポストがあるでしょうか? 50歳代の人がまだ管理職として残っていますので、必然的にポスト不足の状態となります。つまり、「45歳を過ぎても課長になれない」という人たちがたくさんいるというのが、現状なのです。一般的な課長昇進適齢期は40〜45歳と言われますから、それが「仕事の立場・役割が変わらないのが不満だ」という「マンネリ・停滞感」「不平不満」につながっていると考えられます。
組織のフラット化でポストは減少
一方、企業の状況に目を転じると、ポストはむしろ減少化する傾向にあります。かつてはピラミッド型の組織形態が一般的でしたが、現在は職階を短縮化するフラット型の方向に進んでいるからです。マネジャーのポストが減っているのはそのためです。結果、40歳代のポスト待機者が増えているという現象が生じます。
この状況を放置しておくとどうなるか。先に挙げた「マンネリ・停滞感」「不平不満」「依存体質」「あきらめ感」がさらに進行し、生産性が低下していくでしょう。企業にとっては、「若手の時期に投資して社員を育成し、中堅以降に成果を回収する」というサイクルが、回収できないことによって崩れていきます。
しかも一部では、40歳代の社員が30歳代の社員に追い抜かれていくという状況も生まれています。入社当初にちやほやされたバブル期入社社員に比べて、就職氷河期を乗り越えてきた30歳代社員には、たくましさを伴った優秀な人材が比較的多いからです。40歳代社員の立場なら、モチベーションが下がってしまうのも仕方ないでしょう。
「リストラされるかも」の不安
バブル期入社社員の心のうちには、「不安」も現れています。
日本マンパワーが平成23年12月に行った「仕事に関する意識調査」では、「仕事をする上で、どのような悩みや不安がありますか(ありましたか)?」という設問について、世代ごとの集計をしています。
このアンケート結果は、数多くの選択肢の中から「定年までの継続雇用に不安がある」という部分だけを抜き出したものです。もちろん、ほかにも不安を抱いている項目はあるのですが、特に継続雇用については40歳代のポイント高が顕著でした。およそ4人に1人が「もしかするとリストラされるかも」と考えていることがわかります。これは、本人のキャリア形成にとっても、企業の成長にとっても、マイナス要因だと言えるのではないでしょうか。
もっとも、バブル期入社社員であっても活躍されている人はたくさんいます。特に女性は、それ以前の世代が総合職入社できなかった企業にも就職しやすくなり、水を得た魚のように各界で活躍しています。また、インターネットビジネスを開拓して成功する事業家も現れました。
しかし、そうでない人が多くいるのも事実です。原因が根深く、解決の難しい問題ではありますが、次回以降も考察を深めていきたいと思います。