職場からストレスをなくすために
[2007/05/24]
「メンタルヘルス」という言葉は、みなさん聞いたことがあるかと思います。働く人々のストレスが年々増大しつつある現在、職場のメンタルヘルス対策は非常に重要視され、企業の社会的責任のひとつだとも言われています。2006年3月には、厚生労働省も「労働者の心の健康の保持増進のための指針」をまとめ、メンタルヘルスケアの実施方法を定めています。
「ウチの会社、いや少なくともウチの部署では大丈夫。私がきちんと配慮しているから」と思われる方もいるかもしれませんね。でも、メンタルヘルスとはそんな単純なものではないようです。産業保健、人事労務などさまざまな見地から検証された正しい知識に基づいて、適切な対処をすることが求められているのです。
試しに、問題をひとつ挙げてみます。
◆最近、ある部下がいつもより元気がなくなったとします。それに気づいたあなたは、管理監督者として、本人にどのように声をかけますか?
(1)「元気がないようだから今日一緒に飲みに行こう」と声を掛け、コミュニケーションを深めるようにする。
(2)「どうしたんだ? 元気がないけど何かあったのか」と、何かあったら相談にのるよという姿勢で声をかける。
(3)「仕事のことで悩んでいるのか? 私が新入社員の頃はもっと大変だったんだ」と自分の経験談を話して勇気づける。
(4)「一番若い君が元気がなくてどうする。君には期待しているんだから頑張ってくれよ」と励ます。
私なら、(1)か(2)が正解なんだろうなと思いつつ、(4)の行動をとってしまうと思います。適切な対処ができるかどうか、自信がありません。それがいけないのでしょうね。
そこで、日本マンパワー「メンタルヘルス・マネジメント検定対策講座」の担当であり、自身も同検定Ⅰ種を合格している小出真由美さんに、メンタルヘルス・マネジメントの意義や資格試験の内容などについてお話を伺いました。
※問題の正解は(2)です。(1)の飲む席でのコミュニケーションは、メンタルヘルス不全だった場合には逆効果。また、(3)(4)のように自分の価値観や考え方を相談者に押しつけるべきではありません。「どうしたんだ」などと声をかけることにより、元気のない理由を尋ね、部下の変化に注目し、まずは話を聴くことが重要です。
−「メンタルヘルス・マネジメント検定」とはどのような資格ですか?−
「2006年に厚生労働省が公表した『労働者の心の健康の保持増進のための指針』を受けて、大阪商工会議所が主催している新しい資格です。第1回試験は昨年の10月、第2回試験は今年の3月に行われ、来る10月14日には第3回目の試験が行われる予定です。
資格はⅠ種からⅢ種までの3コースに分かれ、それぞれ対象や目的が異なっています」
●Ⅰ種(マスターコース)
<対象>人事労務担当・管理者・経営幹部など
<目的>社内のメンタルヘルス対策の推進
<到達目標>自社の人事戦略・方針を踏まえたうえで、メンタルヘルスケア計画、産業保健スタッフや他の専門機関との連携、社員への教育・研修等に関する企画・立案・実施ができる。
<試験日程>年に1回(例年10月)
●Ⅱ種(ラインケアコース)
<対象>管理職・管理監督者など
<目的>部門内、上司としての部下のメンタルヘルス対策の推進
<到達目標>部下が不調に陥らないように普段から配慮するとともに、部下に不調が見受けられた場合には、安全配慮義務に則った対応を行うことができる。
<試験日程>年に2回(例年3月と10月)
●Ⅲ種(セルフケアコース)
<対象>一般社員および新入社員など
<目的>組織における従業員自らのメンタルヘルス対策の推進
<到達目標>自らのストレスの状況・状態を把握することにより、不調に早期に気づき、自らケアを行い、必要であれば助けを求めることができる。
<試験日程>年に2回(例年3月と10月)
−実際に検定試験を受けられて、どのように感じましたか?− 「私は、第1回試験でⅠ種を受験したのですが、一緒に試験を受けた周りの方々に企業の人事労務担当者が多く、みなさんが自社従業員の心の健康に危機感を抱いていらっしゃって、メンタルヘルス対策の必要性を肌で痛感しました。
たとえば、『心の病』による長期休業。多くの人事労務担当者が、自社に長期休業をとっている従業員が存在していることを打ち明けられていました。実際、(財)社会経済生産性本部が2004年に行った調査でも、回答した会社のうち66.8%の会社に1カ月以上の休業者が存在し、従業員3000人以上の規模では95%以上もの会社に休業者がいるというデータもあります。
人事労務のご担当者が会社のメンタルヘルスに目をつむってしまうと、何か事故があった時、企業全体の価値を下げてしまうことにつながりかねません。逆に、働く人のストレスがなくなってモチベーションが上がれば、会社や組織が活性化し、業績にも好影響を与えるはずです。
メンタルヘルス対策は、企業の社会的責任、法令遵守、従業員のモチベーション向上という点で、必要不可欠なものだと思います」
−検定試験の内容はどのようなものですか?−
「Ⅱ種とⅢ種は、4つの選択肢から『より適切なもの』あるいは『より不適切なもの』を選ぶマークシート問題50問で、合格ラインは70点以上です。
Ⅰ種はそれに論述式問題が加わります。私が受験した第1回試験は、2問出題された問題の中からどちらかを選択し解答するもので、1200字もしくは、500字を2問での解答を求められました。
合格率は、第1回がⅠ種23.35%、Ⅱ種87.50%、Ⅲ種83.66%と、ほかの資格に比べると高かったようです。でも、第2回ではⅡ種46.18%、Ⅲ種53.37%と合格率が下がりました。今後はますます難しくなっていく可能性もあります。
少なくとも、私が受験したⅠ種は出題範囲が広く、論述式問題もあったため、とても学習が難しいと感じました。基本的には公式テキストの範囲をよく理解することが重要なのですが、テキストを読むだけでは合格は難しいと思います。テキストを学んだ上で、ノートにまとめ、重要ポイントを暗記したり、過去問題や添削問題に取り組む必要があるでしょう。準備期間も、1日につき1時間のペースで学習するとした場合、3〜4カ月はほしいところです。10月の試験に向けて、6月から始められれば最適です。