ちょっと一息

企画書のブラッシュアップ

説得力のある企画書に改善するために

[2010/04/27]

1005企画書_1 ビジネスに企画書は欠かせません。
 たとえば、顧客に対して商品・サービスを売り込む時、社内の経営層に新規事業を提案する時、あるいは部署内で業務改善を提案する時や営業施策のアイデアを説明する時・・。 いずれのケースにせよ、企画書が大切なツールであることは間違いありませんよね。多忙なみなさんにとって、企画書作りに割ける時間は少ないかもしれませんが、満足できる企画書が仕上がっていますでしょうか?
 「企画を立案したり、口頭で説明したりするのは得意なんだけれど、書類にまとめる作業はどうも苦手」という人も少なくないようです。でも、たとえ素晴らしい企画を口頭で説明できたとしても、相手が決裁者でなかったら・・企画書は決裁者に届いても、口頭説明の内容は届きません。企画書の仕上がりだけが売上や評価に直結してしまうこともあるでしょう。
 そこで、企画書作成代行の業務経験が豊富な水谷一生さんに、「企画書の改善方法」について伺いました。ご参照ください。

●アドバイスしてくださったのは・・・
 有限会社エディット
 代表取締役
 水谷 一生 さん


「いい企画書」とは

 「いい企画書」を作るためには、「いい企画」を立案することが前提となります。逆に、立案した企画の内容さえ素晴らしければ、企画書の仕上がりが多少悪くても採用されることはあります。
 ただ、企画内容が同じであると仮定したら、企画が採用されるか否かは「企画書の仕上がり」によって影響されます。ですから、「いい企画書」を作成できる能力が高いと、ビジネスを有利に展開することができるでしょう。

 言うまでもありませんが、「いい企画書」とは「企画者(および提案相手)の目的を達成すること」です。目的には、「売上を上げる」「新規事業を立ち上げる」「業務改善を行う」「新製品を開発する」などさまざまあります。その目的がどのような目的であれ、叶えることができれば「いい企画書」と言えますし、叶えることができなければ「改善の余地がある企画書」と言わざるを得ません。
 それでは、「いい企画書」に改善するにはどうすればいいのでしょう?


読み手にとって「悪い企画書」は?

 企画書改善の手順は、それほど複雑ではありません。企画書の悪い点を抽出して、解消すればいいだけです。
 ただ、悪い点を抽出するのは、意外に難しいかもしれません。なぜなら、「企画書の良し悪しを決めるのは読み手」であるにもかかわらず、制作者は「作り手の立場で推敲してしまう」からです。
 みなさんも何度となく企画書の読み手になった経験があるかと思いますが、その際、どのような点に「悪い」と感じましたか? 企画内容自体ではなく、企画1005企画書_2書の仕上がりに限っての話です。おそらく、次のような点だったのではないでしょうか。

 1 知りたいことが書かれていない
 2 メリットばかりが強調され、デメリットに触れていない
 3 抽象的な内容で、具体性がない
 4 口頭説明されなければ、意味がわからない
 5 口頭説明の内容をメモするのが面倒
 6 結論に至るのが遅く、回りくどい
 7 論理展開がよく理解できない
 8 全体と各論の位置づけがわからない
 9 何を言いたいのかわからない
 10 専門用語の意味がわからない


「悪い点」の原因

 これらの悪い点は何に起因するかというと、「情報取捨」「論理展開」「表現」の3つに分類することができます。

 1〜5は情報の取捨が適切でないことによります。
 1〜3は、相手の視点に立った情報が不足しています。相手が求めていることは何かを十分に調査・意識した上で、企画書に盛り込むべき情報の取捨をする必要があります。4と5については、口頭説明がなければ成立しない企画書になってしまっています。しかし、決裁者が説明を聞いていなければ、企画書だけで採用・不採用を判断されてしまいます。たとえ説明相手が決裁者だったとしても忘れてしまうかもしれません。ですから、企画書を読むだけで内容を理解できる独立性が必要です。

 6〜8は論理展開の問題です。
 6の原因は、論理の順序が好ましくありません。結論が遅いと相手は苛立ってきますので、なるべく早く説明すべきです。むしろ、冒頭で結論を示した上で、その後に理由や詳細を記載するのがベターでしょう。7と8の原因はいろいろ考えられます。論理の順序や情報の取捨に問題があるかもしれませんし、見出しレベルの整理に不備があるかもしれません。不備とは、大見出し・中見出し・小見出しの分類が理に適っていないという意味です。
 ちなみに、提案企画で望まれる一般的な論理展開は次のようになります。
  (1) 導入:「表紙」「はじめに」など
  (2) 俯瞰:「目次」「サマリー(要約)」など
  (3) 必要性:「目的」「背景」「現状課題」「要件」など
  (4) 解決策方針:「コンセプト」「全体像」「企画骨子」など
  (5) 解決策詳細:「企画内容」「実施内容」など
  (6) 効果:「成果予測」「メリット」「費用対効果」など
  (7) 実施:「スケジュール」「実行体制」「留意事項」など
  (8) 予算:「見積書」「想定コスト」など
  (9) 資料:「参考資料」など

1005企画書_3 また、9と10は表現の問題です。
 9はおそらく、「一文が長い」「省略された文節がある」「接続詞が適切でない」などが原因として考えられます。長文を避けて、箇条書きで簡潔にまとめると同時に、箇条書きの一つひとつを単独で読んでも理解できるようにしましょう。一方の10は、読み手への配慮の問題です。難しい専門用語を使っても、相手は「格好いい」と思ってくれません。「わからない」という不満が溜まるだけです。
 なお、書式はあまり関係ありません。わかりやすければ、どのような書式でも構いません。ただ、ボリュームは相手によって変えるべきです。時間のない人に説明するのであれば少ない枚数で端的に書くべきですし、じっくりとしたプレゼンテーションが求められているのであれば相応の枚数が必要です。
 また、文章だけでなく、写真が図表を盛り込むなどビジュアル面による理解促進も図るべきです。


改善のためのチェック項目

 企画書は奥が深いため、本格的に上達するためには何日も必要になりますが、手っ取り早く改善するためには、企画書を作成したら一晩おくなどして、一旦、書いたことを忘れてしまいましょう。その上で、読み手の立場で読んでみると、気づかなかった「悪い点」が見えやすくなります。自分が書いたものを読み手の立場で読むのは難しいと思いますが、朝一番のスッキリした頭で読むと、意外に慣れてきます。その際には、少なくとも以下の点をチェックしてみてください。

●情報取捨の改善
 ・記載内容が相手にマッチした内容になっているか?
 ・相手が求める要件に沿っているか?
 ・相手が知りたがっている情報は、本当にこれだけか?
 ・企画が通った場合のデメリットや留意点も書かれているか?

●論理展開の改善
 ・企画書全体がシンプルな論理展開になっているか?
 ・論理展開に関係の薄い情報は、最後に回しているか?
 ・(複数枚の企画書の場合)1枚につき1メッセージになっているか?
 ・企画書の1枚1枚がシンプルな論理展開になっているか?
 ・結論の後に理由や詳細を述べているか?
 ・因果関係や対比関係が明確か?
 ・見出しのレベル分類が的確か?

●表現の改善
 ・簡潔でわかりやすい文になっているか?
 ・箇条書きを多用しているか?
 ・専門用語を理解しやすい言葉に変えているか?
 ・目立つ部分と目立たない部分が明確か?
 ・わかりやすく図解しているか?

1005企画書_4 これらの中でも特に、「シンプルな論理展開」と「簡潔でわかりやすい文」は見逃しやすい項目です。「シンプルな論理展開」にするためには、相手の目的を実現するための解決策について、原因と結果を一つひとつ確認しながら粗筋を考えましょう。また「簡潔でわかりやすい文」を書くためには、長い一文は禁物です。一文は短くするよう十分に気をつけてください。
 そうして、自分オリジナルの企画書フォーマットを作成しておくと、次回から比較的楽に書けるようになるはずです。

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 水谷さんのアドバイスはいかがでしたでしょうか? 日本マンパワーには、ロジカルな考え方やプレゼンテーション能力を養う通信講座がありますので、興味のある方はぜひご参照ください。

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