ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用vol.6

修学旅行の生徒を対象に「環境と仕事の授業」

[2015/09/30]

CDA資格活用vol.6

 小学校、中学校、高等学校の児童・生徒が環境問題を学習するために、環境省が訪問を受け入れていることをご存じですか? 主に修学旅行などの際に環境省を訪れ、授業を受ける学校が多いようです。
 先月ご紹介したキャリアカウンセラー(CDA)の藤代尚子さんは、訪問を受け入れる側として、環境学習の授業を運営しています。小中高の児童・生徒たちが、環境問題や環境関連の仕事などについて楽しく学べるように、さまざまな工夫を凝らして完全にカスタマイズした授業を行っているとのことです。

 『キャリアカウンセラー養成講座』で学んだことをどのように活用しているかの事例としても、非常に興味深いお話です。ぜひご参照ください。


藤代様

●今回お話を聞いたのは・・・
 環境省 大臣官房政策評価広報課 環境学習担当
 キャリアカウンセラー(CDA)
 藤代 尚子 さん

新幹線・在来線のグリーンアテンダントを経験後、当時勤めていた企業で初の女性正社員の鉄道員となる。退職後、国土交通省の行政相談窓口にて鉄道などに関する苦情・内部告発の受付を担当。同時に、2014年から鉄道業界専門の「アテンダントと鉄道員のカウンセラー」としてフリーランスの活動も開始。2015年4月からは環境省の大臣官房政策評価広報課に所属し、修学旅行で訪れた中学生などへの環境学習を担当している。

★本記事は、先月ご紹介した「キャリアカウンセラーの資格活用」記事の続編です。


修学旅行生などを対象に環境学習

 私は昨年までの3年間、鉄道員になりたいという人の就職支援をするかたわら、有期雇用職員として国土交通省に勤めていました。担当業務は行政相談窓口で、鉄道・航空・自動車に関する苦情相談や内部告発の受付をしていました。どのような立場の人が何をどう思っているのか、何に悩んでいるのかを聞けたことは、非常に勉強になりました。
 その契約期間が満了になる頃、10代を対象にしたキャリア支援に関心が出てきました。若い子がスマホからメール相談してくる様子に、刺激を受けたからです。それに、若い頃から自分のキャリアを考えることはとても大切だからです。

 そんな時、たまたま見つけたのが環境省の求人情報です。環境省を訪問する小学校、中学校、高等学校の児童・生徒を対象に、環境問題や環境省の仕事について学習するための授業を行う仕事です。総合学習や社会科などの校外学習や、修学旅行時の研修プログラムなどを対象としています。主に、中学校の修学旅行でグループでの自主行動として利用するケースが多いようです。
 私は高校時代に生物部の部長をするほど環境や生き物が大好きだったので、「これだ!」と思いました。運よく、今年の4月からその仕事に就くことができました。


毎回異なる完全カスタマイズ授業

 授業にあたっては、まず、お申し込みのあった学校から、環境に関する疑問・質問をいただきます。環境に関することであれば何でも受け付けます。たとえば、「絶滅危惧種って何ですか?」「地球温暖化って何ですか?」「海のごみのことを教えてください」などのテーマをいただきます。また、「環境省ではどんな仕事をしているんですか?」など、環境省の仕事に関する質問をいただくこともあります。

 次に、いただいたテーマに沿って授業の準備をします。授業の内容は学校の要望に沿って変えますので、毎回違うからです。完全なカスタマイズ授業だと言えます。
 具体的な準備としては、環境省の職員にヒアリングしたり調べたりして情報を収集。それを、子どもたちでもわかりやすく理解できるようにパワーポイントでまとめます。環境省の職員は生物のことが大好きな人が集まっていますので、ヒアリングするととても詳しく教えてくださいます。お話が止まらないくらいです。


CDA資格活用Vol.6-3

リラックスできるよう、ざっくばらんに

 子どもたちが来てくれたら、私が案内役講師役として説明します。1回の授業は60分から120分、平均90分くらいです。
 授業は、子どもたちがリラックスして興味を持ってもらえるように、ざっくばらんな感で進めています。
 たとえば、「絶滅危惧種っていうのは、絶滅の危機にある生物のこと。そのまま放っておくと、地球上からいなくなっちゃう。そんなことにならないように、環境省の人が『どんな生物が減っているのか』を調べてるよ。(写真を見せながら)こんな感じで川でアメリカザリガニを捕獲している人もいれば、山に登って高山植物を調べている人もいるよ。それだけじゃなくて、危機から守るための法律案も作ったりもするよ。でも、もしその法律ができるのが遅くなると、それまでに絶滅してしまう生物がいるかもしれないでしょ。絶滅してしまったら、もう二度とその生物には会えないんだよ。だから、環境省の人は、時には夜遅くまで働いてがんばっているんだよ」など、くだけた表現でお話ししています。


身近なところから環境問題への関心を

 教育的なお話をすることもあります。
 「環境省の人が絶滅危惧種を守ろうとしても、それだけじゃ法律はできないよね。だから、ほかの人たちがよくわかるように説明して、賛成してもらう必要があるの。そのためには、わかりやすい文章を書いたり、グラフや表を作ったりしなければいけないの。だから、みんなが今、国語や算数を勉強することはとっても大事なことなんだよ」などのように。
 訪問してくる中には動物の好きな子どもが多いので、動物に関する職業を教えてあげることもあります。地方から来た子どもの場合、動物園、酪農、獣医くらいしか知らないケースもありますので、どんな職業があって、それになるにはどうすればいいかなど。時には、「でも、遠くの大学などに行こうと思ったら、お父さんやお母さんにお金を出してもらう必要があるから、早めに相談しなくちゃね」なんてお話もします。

 さらに、子どもたちが自分の暮らす地元を大事にしてほしいとの思いから、各校の地元のことを事前に調べて、「君たちが住んでいるところは、実はこんなにいいところなんだよ」というお話もするようにしています。身近なことを知ることで、たとえばポイ捨てをやめたり、ごみの分別に関心を持ったりすることにつながるからです。
 環境省は生活に密着した省ですから、自分の身近なところから環境問題に関心を持ち、生活面から見直してもらえればと思います。


CDA資格活用vol6-4

工夫すれば意識づけられる

 環境学習の授業はだいたい週に1日。多い時には1日3校の授業を行うこともあります。
 準備はたいへんですが、とてもやりがいのある楽しい仕事です。子どもたちは純粋ですから、こちらが工夫して関心を誘うようにすれば、真剣に聴いてくれますし、何かに目覚めるような意識づけを実感できるからです。
 たとえば、「500mlのペットボトル3本をリサイクルすることでワイシャツ1枚ができるよ」「日本のペットボトルのリサイクル率は世界トップクラス!みんなが駅やコンビニのゴミ箱で分別してくれてるからだよ」などとお話をしたりします。そうすると、目を輝かせて聴いてくれて、ごみの分別に興味を持ってくれたりするんです。
 授業を受けた子から後日お礼の手紙をもらうこともありますが、そんな時にはうれしく涙が出てきます


子どもたちに未来へのチャレンジを

 キャリアカウンセラーの資格取得のために学んだこともすごく役に立っています。以前は自分の視野が狭い傾向がありましたが、ものすごく広がりました。広い社会の中の自分を、ニュートラルに素直に見ることもできるようになりました。理論を知り、自分の何かかが変わったことによって、自分の可能性も見出すことができるようになりました
 だから今、子どもたちに話していることの大切さや、環境省の職員のたいへんさもわかるのだと思います。

 子どもたちには明るい未来があります。その未来を実現するためには、いろんな方法があります。今、もし嫌なことがあっても、それは大人になった時に活かせる時が来ます。人生はつながっているのですから。諦めないで、自ら未来を切り拓いていこう。失敗してもいいから、やりたいことにチャレンジしよう。
 もしかすると今の職場ではないかもしれませんが、今後、若年者支援を通してそんなことを伝えていければと考えています。

>>環境省の環境学習について
http://www.env.go.jp/info/gakusyu/

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