ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方vol.33

大切にしたいことの「重みづけ」で自分らしさを感じる

[2011/04/28]

ハッピーキャリア201105_1

 「なんだか気持ちが満たされない」
 「どの道を選択すべきか決められない」
 「私には制約が多すぎて、環境に恵まれていない」
 キャリア形成の過程では、スムーズにいかないこともあります。むしろ、迷ったり、悩んだり、不満足だったりすることの方が多いかもしれません。自分ではどうしようもないこともあるかと思います。
 そうした時、私たちはどうすればいいのでしょうか?
 どう考えて今後のキャリアを探していけばいいのでしょうか?
 キャリア支援を日々推進する原恵子さんに、そのヒントをいただきました。とても参考になるお話だと思います。ぜひご一読ください。

●今回お話をうかがったのは・・・
 原 恵子 さん
 〔主な資格〕CDA、産業カウンセラー、心理相談員、認定MBTIユーザー

Career Seed 代表
日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座(通学コース)」講師
教育出版社、派遣会社を経て独立。現在は、キャリア支援に関わる実践と研究に取り組む。具体的には、キャリアカウンセラーなどキャリア支援職者に対する専門家教育やスキル向上支援、産業領域を中心としたキャリア開発やコミュニケーション分野の講師として活動。その一方で、筑波大学大学院(人間総合科学研究科)においてキャリア支援職者の職務特性や職業的発達についての研究を継続させている。

※肩書き、経歴は取材当時のものです。


すべてを満たそうとすると矛盾が生じる場合も

 自分に適したキャリア形成の方向性を見つけるためには、Will−Can−Must全体の視点から、自分と仕事について考えてみることが大切だと言われています。


Will:自分のやりたいこと、好きなことや大切にしたいこと、興味や関心、価値観など
Can:自分のできること(ヒューマンスキルや職務能力を含む)
Must:やらなければならないこと、求められること

 ただ実際には、これらがすべて満たされることは難しい側面もあり、特に、WillとMustには相反することもあるかもしれません。
 たとえば私の場合、Willのキーワードとして「専門性を深める」「心理学」「人にかかわる」「自由さ」「共感できる仲間」「組織・チームでの活動」「多様性」「東京で住み働く」などが挙げられます。でも、この中で「自由さ」と「組織・チームでの活動」はある意味では相反する部分もあると言えます。組織にはルールや制約がありますから、自由さだけを追い求めて活動することは難しいからです。
ハッピーキャリア201105_02 さらにMustを挙げれば、相反することはもっと増えてくるはずです。Will−Can−Mustすべてを満たそうとすると、何かしらの矛盾が出てきたり、折り合いがつかずにもやもやし焦る気持ちになってしまう危険性もあります
 それは、「すべて満たしたい」と思ってしまうと、いつまでもゴールにたどり着かず、「満たされていない感覚」をずっと持ち続けてしまうからかもしれません。あるいは、「自分の思いを満たすキャリアはどこにもない」と、八方ふさがりの気持ちになってしまうのかもしれません。そうした状態の時に何かを選択しなければならない節目にあたってしまうと、混乱したまま目先のことだけに目が向いてしまい、長期的に自分らしいキャリアを育てていくといった視点が置き去りになってしまうことにもなりかねません。

譲れるか、譲れないかの重みづけ、自己評価をする勇気を

 こうした状態になっている時は、Willの重みづけをしてみてはいかがでしょうか。
 具体的な方法としてはまず、先月のメールマガジンでご紹介したライフラインチャートやバリュー(価値観)カードなどを使って、自分のWillを様々な角度から洗い出してみます。
 そして、Willの一つひとつについて、
「どうしても譲れないもの、どうしても実現させたいこと」なのか
「望ましいけれどそれほどではないもの、できれば実現させたいこと」なのか、
いずれにあてはまるかを考えて、自分なりに整理・評価をしていきます。これが、Willの重みづけです。
 家探しや部屋探しと同じ要領です。家探し・部屋探しでは、「路線を優先するか」「間取りを優先するか」「家賃を優先するか」「駅からの徒歩時間を優先するか」など、諸条件に優先順位をつけて探しますよね。つまり、自分なりの条件に基づいて現実的な妥協点を検討していきますが、同じような方法で自分らしいキャリアを探っていくことが可能です。
 Willはすべて大切にしたいものであり、自分なりのこだわり所だとは思いますが、現実を吟味をしながら自分なりの最善解を模索していくためには、すべてを満たすキャリアを見つけることに固執しないことも場合によっては有効かも。広く暖かく自分自身を改めて見つめ、優先順位をつけてみる重みづけをしてみる、こうした自己評価をしていく勇気も持ちましょう。


自分を理解できれば、納得感が高まる

 同時に、CanやMustについても考えてみる必要があります。Willと同じように重みづけをしてみてください。たとえばWillやMustであれば、「どうしてもやらなければならないこと」なのか、「それほどやらなくていいこと」なのかに分けられると思います。
 そうして、Will−Can−Mustをトータルに考えてみると、自分の「どうしても譲れない大切なことやもの」を理解できるのではないでしょうか。
ハッピーキャリア201105_3 私の場合をもう一度例にとると、Willの「自由さ」と「組織・チームでの活動」とを比較して、「自由さ」を結果的には優先させています。つまり、独立して仕事をするという選択をしました。ただし、「組織・チームでの活動」は優先順位を下げてはいるものの、特定の組織と深いパートナーシップを通してお付き合いするなど、プロセスとして満たせるような選択や行動もしています。学生時代は体育会に所属するなど組織・チームでの活動に対する指向はずっと高いため、時には寂しく感じることもありますが、「自分の譲れない大切なことやもの」は「自由さ」だと把握していますので、自分の中で納得感を持て、自分らしさや精神的な安定感を感じられているとも言えます。
 いかがでしょうか。自分の中で重みづけがきちんとできていると、自分自身に対する理解も深まり、自分の中の納得感が高まり、それがひいては自分らしさや気持ちの安定感につながる。そういった状態であれば、何かを選択しなければならない時もぶれないで自分らしい選択をすることにつながると思えますし、場合によっては「捨てる勇気」を持たざるを得ない時にも大きな味方になってくれるのではないでしょうか。

 何かの選択に悩んだり、満たされない気持ちになったりした時は、今回のような考え方もぜひ参考にしてください。

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