社会に出ていく大学生のために、自分の経験を活かす
[2016/02/26]
「キャリアカウンセラーってどんな仕事?」
「キャリアカウンセラーになるにはどうすればいいの?」
みなさんのそうした疑問に、1人の女性キャリアカウンセラーの例をもってお答えいたします。その女性は、先月の当コーナーでご紹介した名古屋才子さんです。
名古屋さんは、大学卒業後、私立高校の国語科教員として就職。やりがいを感じながらも、結婚を機に退職。その後、塾講師、日本語学校教師、生活情報紙の広告営業・取材・原稿執筆、幼稚園児・小学生対象学習教室のマネジメント、幼稚園・小学校の受験サポートなどの仕事に携わってきました。周囲から見ると「とても精力的に活動している女性」と映ったことでしょう。でも、ご自身にとっては必ずしもそうではありませんでした。仕事に対して「何かが違う」と違和感を抱き続けていたそうです。
そんな名古屋さんが「私の経験してきたバラバラな仕事を統合し、教育の現場に戻れる仕事は、これしかない!」と発見したのが、キャリアカウンセラーです。その後どのようにしてキャリアカウンセラーとして活躍できるようになったのか? その軌跡をご紹介いたします。
●今回お話を聞いたのは・・・
私立大学勤務
2級キャリアコンサルティング技能士
国家資格キャリアコンサルタント
キャリアカウンセラー(CDA)
名古屋 才子 さん
大学卒業後、私立高校の国語科教師、専業主婦、学習塾講師、日本語学校教師、生活情報紙営業、学習塾マネジメントなどを経ながら、自己のキャリアを模索。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格取得後は、私立大学にて学生へのキャリアカウンセリングを中心に就職活動支援を行っている。
大学生の大事な時期にかかわりたい
私が日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』を受講し始めたのは、2013年の春。講座は毎週1回、合計10回のスクーリングがあります。その初回の授業の冒頭で、私は次のように自己紹介しました。
「CDAの資格を取って、大学のキャリアカウンセラーになりたいと思います!」
それまで、幼稚園児から高校生までの教育の仕事に携わってきましたが、大学生とはかかわっていませんでした。だからでしょうか? 「これから社会に出ていく大学生の、大事な時期にかかわりたい」という強い思いがありました。
『キャリアカウンセラー養成講座』での授業は非常に勉強になり、クラスメイトとの出会いとその後のつながりも、とても素敵で貴重なものになりました。働きながらの学習ですから時間を作る必要はありましたが、今思い起こしても楽しく充実した日々でした。
そうして迎えた資格試験。残念ながら2次試験は2回目受験での合格となりましたが、2014年6月に無事、正式にCDA資格取得者として認定されました。
資格取得後すぐ転職活動、勉強、そして採用
資格取得後は、大学のキャリアカウンセラーになるべく、すぐさま転職活動を始めました。まず、派遣会社2社に登録。「大学 キャリアカウンセラー」などのキーワードでインターネット検索して、求人している大学を探したりもしました。
ところが、転職活動は思っていた以上に難航しました。「資格があっても実務経験がないと難しい」と言われたこともありました。確かに、当時の私には大学でのキャリアカウンセラー経験はありませんでした。でも、だからと言って諦めていたら、ずっと実務経験のないままになってしまいます。
ですから、日本キャリア開発協会などの研修に参加したり、関連本を読んだり、ちょうど就職活動を終えたわが子の様子を振り返りながら、できる限りの勉強をしました。そして、「できない」とマイナスに捉えるのではなく、「できるかもしれない」と考えました。そう考えられたのは、根拠のない自信があるという、私の性格によるものかもしれません。
そうして、おかげさまで私立大学への就職が決まりました。他に応募されていた方々もいらしたと聞いていますが、キャリアカウンセラーとしての実務経験のない私でも、今までの経験や素養を認めていただけたと、とてもありがたく思います。
学生に自分自身を知ってもらうために
私立大学で働き始めたのは同年10月から。キャリア形成・就職支援室のキャリアカウンセラーになることができました。
実際にキャリアカウンセリングをしてみると、「想像した以上にいろんな学生がいる」ということを実感しました。自分の長所がわからない学生、自分のがんばったことがわからない学生、なかには過去の辛い経験がトラウマになって対人関係がうまくいかない学生もいます。そして、それぞれに苦しんでいます。
そこで私は、学生が自分自身のことを知ることに力を入れました。その取り組みのひとつが、『キャリアカウンセラー養成講座』で学んだライフラインチャートです。ライフラインチャートとは、横軸に年齢、縦軸に満足度をとったグラフで、生まれた時から現在に至るまでの満足度を描く曲線のことです。これを学生たちに書いてもらい、一緒に掘り下げていくことで、自分自身を知る手掛かりにしてもらいました。
自分自身を知った学生は、人によっては泣き出すケースもあります。一人ひとり、何か抱え込んでしまっている思いがあるからでしょう。その思いにキャリアカウンセラーが寄り添い、学生が自分を紐解くことをサポートしたり、心理面を支えたりすることは、非常に大切なことだと思います。それはCDAならではの方向性でもあり、私にすごくマッチしています。
450人を前に「キャリアデザイン」の授業
2015年4月からは、雇用形態が派遣社員から常勤嘱託社員に変わりました。それに伴って、仕事の幅も広がっています。
たとえば、毎年5月に就職支援室では単位修得対象となる授業「キャリアデザイン」の90分・1コマを任されているのですが、今回は私も担当教授に見られながらの、450人の学生を前にした授業を行いました。授業内容のプランニング、大学生を対象とした講師、学生が提出したレポートのチェックなど、すべてが初体験でしたが、一度やってみたらもっとやりたくなりました(笑)。
授業では「キャリアとは何か」に主な焦点をあてたのですが、関連して私個人の体験もお話ししました。それに対して、学生からのレポートに「人生って無駄がない、自分の経験が全部役に立つというお話が一番印象に残りました」「名古屋さんのようにいろんな仕事をやることで経験やキャリアを積んでいく、というやり方もあるんですね」という旨が書かれているのを読んだ時は、大切なことを伝えられた満足感を得られました。
また、最近では営業で培ったフットワークを活かし、企業の展示会や学生を引率し企業訪問会などにも積極的に足を運んでいます。
今後は、これまでバラバラな仕事をしてきた私だからこその経験を活かして、これから社会に出ていく大学生のために、就職や仕事について右も左もわからない大学生のために、キャリアカウンセラーとして支援できればと思います。
そして、旅立っていった大学生たちが今後何かにつまずいた時、私とお話ししたことを少しでいいから思い出してもらえるようなかかわりができればいいなと思います。
自分の生きざまをそのまま活かせる仕事
こうして、私立高校の教員時代から今に至るまで、私のキャリアを振り返ってみると、「やっと私のキャリアが落ち着いたかな」という感じがしています。自分なりになんとか、納得のいくところに来たような気がします。
仕事には、いろいろな表現の仕方があると思いますが、自分の生きざまをそのまま活かせる仕事は、キャリアカウンセラーだけではないでしょうか。自分の生きざまをすべて傾けて、誰かの胸に届けられる仕事。そんな素晴らしい仕事ができていて、とても嬉しく感じます。
また、CDAという資格を通してさまざまな人とのつながりができたことも、大きな喜びです。養成講座のクラスメイト、試験対策で一緒に学んだ仲間、資格取得してからのネットワーク・・これらのつながりはCDAがあってこそのつながりです。それぞれ異なった思いを持ちながら、人とかかわる仕事をしている人たち。職種も年齢層も違う人たち。そうした人とのつながりが、今でもどんどん拡がっています。