ちょっと一息

キャリアカウンセラーの傾聴スキル

キャリアカウンセリング実践力の身につけ方

[2010/08/03]

 キャリアカウンセラーとは、個人の興味や価値観、能力、その他の特性などをもとに、その人にとって望ましいキャリア形成を支援する専門家です。
 キャリアカウンセラーに相談する人(クライエント)は、たとえば、仕事に行きづまっている人、自信を失っている人、自分のことがわからなくなった人、キャリアの節目にさしかかっている人、失業してしまった人など・・。そうした人たちが、自分では納得しないまま人生をおくるのではなく、自分で価値観を見い出して自律的・主体的にキャリアを捉えることができるよう、支援・アドバイスするのが、キャリアカウンセラーの役割となります。そのためにはまず、クライエントの興味・能力・価値観を共有することから始まります。その際に必要になる能力が、傾聴スキル(コミュニケーションスキル)です。
 ただ、傾聴スキル(コミュニケーションスキル)を身につけるのは容易ではありません。キャリアカウンセラーとして活躍している人は、どのように身につけたのでしょうか? 日本マンパワーのキャリアカウンセラー養成講座・通学コースでの方法について、講座担当の平阪圭志さんにうかがいました。ご参照ください。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアドック部 CDA通学課
 平阪 圭志 さん


グループワークで実践力を身につける

CDA_1 日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座(通学コース)』は8日間、合計70時間のカリキュラムです。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格を取得するためのコースではありますが、講師が一方的に解説するような受験準備一辺倒の内容ではありません。むしろその正反対で、70時間のうち約7割はグループワークを行っています
 グループワークを行い、他の受講生が感じた感想をフィードバックしてもらうことによって、それまで自分が知り得なかった自分自身(ジョハリの窓の「ブラインドの領域」)を知り、同時に、他の受講生へのフィードバックを通じてさまざまな見方や捉え方、価値観を学んでいきます。こういった実践を積み重ねていくことで、キャリアカウンセラーに必要な実践力を身につけていきます。なかでも最も重視しているのが、傾聴スキルをはじめとするコミュニケーションスキルです。


経験を振り返って自ら気づくような質問

 コミュニケーションといっても、キャリアカウンセラーに求められるのは一般的なコミュニケーションとは少し異なります。通常のコミュニケーションでは、質問者が聞きたい内容が質問されます。たとえば「今日はどこでご飯食べましたか?」という質問。これは、質問者が情報を得ようとして行う質問です。しかし、キャリアカウンセラーの場合は、クライエント(相談者)中心の質問を行います

CDA_2 次のようにイメージしてみるとわかりやすいでしょう。
 「今の仕事が嫌になった」と打ち明けるクライエント(相談者)がいるとします。その場合、単に「どんな仕事をしているのですか?」「職場には上司はいるんですか?」「人事には相談されましたか?」など状況確認の質問をするのではありません。キャリアカウンセラーであれば、次のような質問をします。
 「○○さんは、どうしてこの仕事が嫌になったのですか?」
 「今仕事をしていると、どんなお気持ちになられますか?」
 「仕事をしていく中で、嫌だと感じられるところは何でしょうか?」
 このような質問を投げかけていくことで、クライエントは不満に思っていることを徐々に整理をしていくことができます。そして、
 「仕事が嫌なのではなく、実は人間関係が嫌になった」
などと、クライエント自身が本質的な課題に気づき、またその課題に対する自分の捉え方についても内省を深め、よりよい選択をすることができるようになっていきます
 このような支援を行うスキルこそ、傾聴スキルとなります。


自分を知る、人脈を広げる

CDA_3 『キャリアカウンセラー養成講座(通学コース)』には、「自分を知るきっかけになる」「幅広い人脈ができる」というメリットもあります。
 前者については、自分自身が適職検査を受けたり、キャリアインベントリーシート(職務経歴書)・ライププランシートを作成したりします。そうした取り組みを通じて、改めて自分の興味・能力・価値観を知り、「自己分析ができた」「自己の棚卸ができた」ということも受講生の満足感につながっているようです。
 後者の「幅広い人脈ができる」というのは、さまざまな年代・属性の受講者が参加していることによります。企業の人事担当者、営業担当者、人材サービス会社の人、行政機関の人、教育機関の人、離職中の人など、本当に業種・職種は多岐にわたっています。こういった幅広い業種の方、幅広い世代の方とロールプレイングをすることにより、今まで交流し得なかった方々の価値観などに触れる機会が、キャリアカウンセラーとしての実践力にも活かされます。また、ロールプレイングを通じて自然にクラス全員(20名)の方々と親しくなれ、講座終了後も交流をされる方々が多くおられます。

 通学コース受講者の95%以上は「通学コースに参加して良かった」と答えています。もし、キャリアカウンセラー養成講座の通信コースを受講したのに、まだ通学コースを受講していないという人がいれば、ぜひ受講してみてください。受講料を払うだけの価値はある講座だと思います。
 そして、講座で得たスキルをぜひ自分自身や今後の仕事、他者支援に大いに活かしてください。

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