仕事を円滑に進める「対話術」をマスター
[2011/05/26]
みなさんの職場では、チームメンバー全員が目的に向かって一体になり、お互いの考えを前向きに捉え、いい影響を与えながら仕事ができていますか?
なかなか難しいことですよね。
「メンバーの個性が強くてバラバラ」「やる気の感じられないメンバーがいる」「一部に仲の悪い関係性が見られる」など、何らかの問題を抱えているのが一般的かもしれません。
会議風景は、チームの状態をよく反映しています。「発言する人はいつも特定の2〜3人だけで、ほかのメンバーはほとんど発言しない」ということはありませんか? 「命令されたから仕方なく参加した」「自分の業務を気にしていて身が入っていない」「考えているのか考えていないのかわからない」と感じられるメンバーは見かけられませんか?
こうした状態を解消するためのひとつの方法が、リーダーの対話スキル向上です。日本マンパワーの通信講座『仕事を円滑に進める 対話術コース』では、対話スキルを中心としたビジネスコミュニケーションを学ぶことができます。これからの組織を牽引していくべき次世代リーダーの方は、ぜひ身につけておきたい内容です。講座担当の小出真由美さんに概要をうかがいましたので、ご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアクリエイト部
小出 真由美 さん
相手を尊重しながら価値を作り上げる
対話と会話とは、どう違うのでしょうか? 対話は、会話のひとつではありますが、意味を共有できているかどうかに大きな違いがあります。対話とは、前向きなテーマのある話題に対してお互いの意見を交換し、相手を尊重しながら、価値を作り上げていくコミュニケーションだといえます。
職場を活性化させて仕事を効率よく進めていくためには、リーダーが対話スキルを身につけておく必要があります。特に、主任、係長、課長補佐、チームリーダーなど、管理職前の中堅社員の方は、対話スキルを身につけることが自分を助けることにつながると思います。
対話の基礎スキルには、「聴く」「訊く」「伝える」という3つがあります。
「聴く」とは、「話の内容だけでなく、事情と想いを想像する。察する」ことを指し、信頼構築につながります。
「訊く」とは、「相手の中にあるものを引き出し、形作る」ことを指し、相互理解につながります。
「伝える」とは、「相手と自分の間を結び、何かを立ち上げる。つなげていく」ということを指し、行動促進につながります。
本質を引き出す質問デザイン力
『仕事を円滑に進める 対話術コース』では、これらのスキルを高めるため、ビジネスシーンの事例を挙げながら、具体的に説明しています。その例として、「訊く」について少しご紹介します。
「訊く」というのは、いわゆる「質問」のことです。メンバーのことを理解したり、メンバーの価値を引き出して相互の思考を深め、すり合わせというゴールを求めるには、質問が欠かせません。ただ、効果的に質問するためには、タイミングと表現が大切になります。
たとえば次のように、話が逸れてしまったり、核心になかなかたどりつけなかったりする場合はなおさらです。
Aさん「山登りの魅力って何ですか?」
Bさん「最近登ったのは海山なんですが、海山はいいですよ! 穴場です」
Bさんの答えはズレてしまっています。Aさんはどうすれば「山の魅力」について引き出すことができるのでしょうか?
Aさん「海山ですか。初耳です。どんな魅力があるんですか?」
Bさん「眺望ですよね、やっぱり」
Aさん「山登りの魅力ってやっぱり眺望ですか?」
Bさん「ああ、そうですね」
Aさん「眺望のほかの魅力もありそうですね」
Bさん「そりゃたくさんありますよ、まず・・」
Aさんは、話が逸れたにもかかわらず、「山登りの魅力」というゴールにたどり着くまで質問を重ねました。こうしたことができるスキルを質問デザイン力といいます。質問デザイン力は、「リーダーに任せておけば大丈夫」だと安心感を与える対話スキルです。
場を変えるコミュニケーションデザイン
また、コミュニケーションデザイン力も対話スキルのひとつです。コミュニケーションデザインとは、「場全体を捉え、その中で生まれるコミュニケーションの量と質に気を配る考え方」です。
たとえば、あなたがリーダーとして会議を開いた時、「みんなが思考を停止して押し黙っている」ように感じたらどうしますか?
押し黙ったままでは会議の意味がありませんし、無理やりに発言を求めたとしても、メンバーが会議のテーマを自分のこととして捉えて思考しなければ、価値ある結論を導くことができません。
コミュニケーションデザインができる人は、会議の最中にメンバーの表情、身体の動き、身体の重心などを見ています。単に「みんなが思考を停止して押し黙っている」と感じるのではなく、たとえば
・あくびをしている人が2〜3人
・パソコンを開いている人が多数
・ブラインドが閉まっていて部屋が暗い
ということを見ることができます。
「見る力」は、コミュニケーションデザインの最も重要なスキルです。「見る力」を高めるためには、「何が見えたか」「どう見えたか」「何を見たいか」の3ステップがポイントとなります。
このケースでは、「何が見えたか」というのは、あくびとパソコンとブライントに関することです。そして、「どう見えたか」「何を見たいか」については次のようになります。
「どう見えたか」
・疲れている人が多く、気持ちが1つにまとまっていない
・仕事を引きずってこの場に集まっている
「何を見たいか」
・全員の気持ちが切り替わって、この場に集中している状態
このように3ステップで考えれば、
・身体を動かすミニアクティビティで気持ちをリフレッシュする
・パソコンは全員に閉じてもらう
・ブラインドを開けて明るい空間を作る
などの「すべきこと」がおのずと見えてくるはずです。
「みんなが思考を停止して押し黙っている」ような状況でも、リーダーのスキルによって場を変えることができるのです。
ビジネスにポイントを絞った実践的テキスト
テキストでは、ビジネスにポイントを絞った上で、基礎的な知識から実践的な内容まで、チャート図やイラストなどを使ってていねいにわかりやすく解説しています。2回の添削問題には、みなさんの対話スキルを向上・確認する記述式問題も盛り込んでいます。
また、リーダーのスキルアップだけでなく、メンバーのモチベーションや方向性をコントロールしながら、周りを巻き込んでチーム全体の対話スキルを高めていく方法についても学びます。
所属部署における中心的リーダーの方、リーダーに必要な知識・スキルを身につけたい方には、ぜひ取り組んでいただきたい講座です。