ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用

「人生は変えられる」ミドル・シニアから紡ぐキャリア

[2015/07/28]

資格活用(執筆者)

 人生は必ずしも順風満帆ではありません。楽しい時もあれば苦しい時もあるでしょう。うれしいこともあれば悲しいこともあるでしょう。人生を積み重ねれば積み重ねるほど、そうしたさまざまな経験が増えていくのだろうと思います。
 その意味で、人生経験豊富な方から教わることはたくさんあります。

 本記事でご紹介する荒木三惠さんは、これまでさまざまな仕事に携わり、その過程で大きな挫折を経験します。すっかり自信を喪失し、「過去を消してしまいたい」と自己否定のかたまりのようになり、引きこもってしまいました。
 そんな彼女の人生を180度変えたのが「キャリアカウンセラー養成講座」との出会いです。資格取得に向けた学習を通して過去の自分を受け入れられるようになり、人とのかかわりが元気をもたらし、生きる支えとなる。キャリアカウンセラー(CDA)資格取得後は、知人や仲間からの紹介で仕事が舞い込み、フリーランスとして多方面で活躍しています。
 今、荒木さんはしみじみと「CDAを学んでいなかったら今の私はいない」と言い切ります。自分で自分を否定し続けた荒木さんが、なぜ、変わることができたのか? なぜ、活き活きと充実した毎日を送れるようになったのか? ご本人におうかがいいたしました。


●今回お話を聞いたのは・・・
 フリーランス・カウンセラー/講師(CDA)
 荒木 三惠 さん

出版社での秘書業務、食品会社での営業統括、人事・教育職を経て、医療事務、不動産営業事務、電話相談業務請負を経験。現在、大学でのキャリアカウンセリング、公共就業支援施設でのキャリアカウンセリングおよびセミナー講師、企業の人材採用・育成セミナーの企画立案・講師およびキャリアカウンセリング、個人対象キャリアカウンセリングなど、フリーランスとして多方面で活躍している。


資格活用-2

挫折、転職、自己否定、引きこもり・・

 私は、出版社で秘書業務を経験した後、食品会社で営業統括、人事・採用・教育を担当しました。情熱を注いでいた仕事でしたが、結果的にうまくいきませんでした。これまでの人生で最も大きな挫折です。その後、医療事務、不動産営業事務にも就きましたが、いずれも長続きせず、すっかり自信を喪失しました。「私は人前に出ちゃいけない」「生きているのも恥ずかしい」「自分の過去を消してしまいたい」と自己否定のかたまりのようになり、引きこもり状態になりました。
 それでも生活していかなければなりませんので、電話相談業務を請け負うようになりました。外出せずに自宅でできますし、こんな私でも誰かの悩みは聞けるかもしれない」と思ったからです。
 電話相談の内容には決まったテーマがありませんでしたが、なぜか私には、仕事についての相談が多く集まってきました。そうしているうちに、「相談を受ける勉強のためにも、もう一度社会に戻って働いてみたい」と思うようになったのです。

 そこで、ハローワークへ相談に行ったところ、相談員に勧められ、公共の職業訓練校に入校しました。キャリアカウセリングを初めて知ったのは入校後です。挫折をして短期転職を繰り返してきた私に、職業訓練校のキャリアカウンセラーは、あなたのような人じゃなきゃできない仕事もある。キャリアカウンセラーが向いているかもしれない」とアドバイスしてくれたのです。
 キャリアカウンセラーに興味を抱きつつ、何カ月か経った後、今度は別の事務員さんとお話しました。その方は日本マンパワーで受講経験があり、日本マンパワーの講座は本当に良かった」と言って、資料を取り寄せてくれたのです。それで受講申し込をすることに決めました。

資格活用-3

私の人生が大きく変わり始めた瞬間

 キャリアカウンセラー養成講座の初日、教室に入った途端、私の目に飛び込んできたものがあります。それは、掲示されていたキャリアカウンセリングの定義でした。

<キャリアカウンセリングの定義>
キャリアカウンセリングとは、発達的視点に立って、成長と適応という個人の積極的側面に強調点を置き、個人が環境の中で効果的かつ自律的に機能できるように支援すること。自己概念の開発を通してキャリア形成を図ること。

 この言葉を目にした時、衝撃が走りましたあぁ、人間は変わることができるんだ。私は変われるかもしれない。私はゆるされるかもしれない」。なぜかわかりませんが、そう感じたのです。大学・大学院で教育学や心理学を学んでいたからでしょうか。あるいは、それまで自分の苦悩を誰にも相談することができず、追い込まれていたからかもしれません。キャリアカウンセリングの定義が救いの言葉に感じられました。私の人生が大きく変わり始めた瞬間です。

 授業では、キャリアカウンセリングの理論・技法の座学に加えて、グループワークやロールプレイもあります。受講生がキャリアカウンセラー役や相談者役になって実際にカウンセリングをするロールプレイでは、自分の可能な範囲で過去の体験や悩みを話すことになります。当時、過去を振り返るのも辛い私でしたが、できる範囲で少しずつ自己開示をすることによって、新しい発見や気づきがありました。仲間と一緒にロールプレイをすることで自分との距離が縮まり、もう一度自分と出会うことができという感覚です。自己探求自己発見を積み重ねていくことができました。
 そうして私はようやく、それまで思い詰めていた観点とはまったく異なる観点で、自分の人生を捉え直すことができるようになりました。挫折体験であっても、それを見つめ直し、今の自分にとっての意味を発見し、その後の人生に活かしていくことができるのなら、挫折体験はけっしてマイナスではない。貴重な経験として意味を持ち、輝き始めるのだとわかりました。
 キャリアカウンセラー養成講座を通じて初めて、過去の自分を受け入れ、現在の自分に自信が持てるようになったのです。


周囲の人たちが仕事を紹介してくれた

 CDA資格取得後は、さらに周囲の人たに助けられました。
 まず、日本マンパワーから資料を取り寄せてくださった職業訓練校の事務員さんが、「荒木さんにチャンスを与えてやってくれないか」と学校関係者に交渉してくださり、資格取得とほぼ同時期から講師として教壇に立つことができました。校長からも「講義の内容は任せるから自由に使っていいよ」と言っていただき、日本マンパワーで学んだことを活かして講義したところ、受講生のみんながすごく元気になってくれました。
 また、一緒に資格を取った仲間にもすごく面倒をみていただきました。CDA有資格者の集まりに誘っていただいたり、知人を紹介してくれたり。たとえば、仲間に紹介されたある人からは、「CDAの絆はとても深くて強い。いろいろな先輩がいるから、どんどん場に出て、いろいろな人に会いなさい」とアドバイスしてくださいました。その言葉に従ってある会に参加したところ、大学のキャリアカウンセラーに出会いました。その人と名刺交換してメールでお礼をしたら、「一度会いましょう」という話になり、週1回、大学のキャリアセンターに勤められるようになりました。そうして大学でキャリアカウンセリングをしているうち、人員配置の関係などで週3日に増やしていただくことができました。
 また、その大学の教授からある企業の担当者をご紹介していただき、人材採用・育成セミナーの仕事も務めることになりました。
 こうして、自宅で電話相談業務請負だけをしていた私が、今や公共就業支援施設で女性を対象に週3日のキャリアカウンセリングとセミナー講師、大学キャリアセンターで3〜4年生を対象に週3日のキャリアカウンセリング、企業の人材採用・育成セミナーの企画立案・講師・キャリアカウンセリング、個人を対象とする電話および面談でのキャリアカウンセリングを行うほどになれました。これはまさに、CDAの絆によるものだと思います。


資格活用-4

さまざまな出会いをもたらすCDAは「魔法の鏡」

 私が変わることができたように、人は変わることができます。人間は生涯成長していく存在で、どのような経験も成長へのプロセスとなり得ます。辛い過去を背負っていても、キャリアカウンセリングの定義にあるように、「発達的視点に立って、成長と適応」ができるのです。年齢は関係ありません。
 それを教えてくれた上、自分との出会い、仲間との出会い、先輩との出会い、相談者との出会い、社会との出会いをもたらしてくれたCDAには、本当に心から感謝しています。同時に、それに携われる今の状況に、無上の喜を感じています。
 そのお礼の意味も込めて、私は、相談者のみなさんのいいところを探すお手伝いをさせていただいています。いいところを探すことで自己効力感を持っていただく。自己効力感を持っていれば行動することができ、行動すれば何らかの出会が生じます。自分との出会い、人との出会い、社会との出会い。そうした出会いを紡ぎ、過去や未来をも紡いでいく——それが、私の大切にしているCDA精神です。

 CDAという資格は、必ずしもキャリアカウンセラーになりたい人だけの資格ではありません。自分の人生を振り返り、意味づけて、「これからの人生をどう生きていこうか」と考えるためのツールとして、CDAの学習をすることは非常に効果的だと思います。それによって、自分の人生はもちろん、他人の人生も大事に思えてくる、平和な世の中を形成する基礎のように思います。
 また、不思議なことに、キャリアカウンセラー自身が悩んでいる時、それに答えを出してくれるような相談者の方が現れてきます。「相談者の方に元気になってもらいたい」「支えて応援させてもらおう」とかかわっていると、なぜか私まで元気になってくるんです。CDAはまるで「魔法の鏡」のようです。
 いつかみなさんと出会えることを楽しみにしています。

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