社内のタテ割り気質を解消するためには
[2012/07/26]
部署間の対立のような状況、みなさんの会社・組織にはありませんか?
たとえば開発部門と営業部門の対立。開発部門が「自分たちはいい商品を作ったのに、営業部門の売り方が悪い」と思っている一方で、営業部門は「開発部門が売れない商品ばかり作るので困る」と不満を言う、などのケースです。
対立とまではいかなくても、
「部署間・チーム間のコミュニケーションがとれていない」
「組織全体としてのまとまりに欠けている」
などの話はよく聞かれます。
組織が大きくなればなるほどタテ割りになりがちですが、お互いに足を引っ張り合ってしまうのは悲しいことです。できれば協力し合って、組織全体としての力を高めていきたいものです。
今回は、そうした視点から組織開発の新しい観点についてご紹介いたします。お話をおうかがいしたのは、日本マンパワーのコンサルタントで、『組織開発ファシリテーター養成講座』の進行役も務める水野みちさんです。ご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
人材開発企画部 研究開発G 専門部長
水野 みち さん
タテ割り組織に生じやすい“溝”
部下の能力不足やミスを、上司が厳しく突き詰めていく。部下の問題点を指摘し、その問題を解決しようとして、原因を掘り下げながら追及していく。
こうした光景はよくあることです。上司にとっては、教育的指導と問題解決を図るためのひとつの方法です。しかし、部下の立場からみるとどうでしょうか。教育につながればいいのですが、結果的に、上司に不平不満を抱く状態になってしまうことは少なくありません。
こうした問題追及型のコミュニケーションは、お互いの理解が深まるどころか、場合によっては新たな“溝”を生じさせることがあります。
コミュニケーションが適切でないことによって生じる“溝”は、部門間・部署間・チーム間でも想定できます。たとえば、商品の売れ行きが芳しくない時、コミュニケーションの状況によっては、開発部門が営業部門に対して次のような思いを抱くかもしれません。
「自分たちがせっかくいい商品を作ったのに、営業は全然売る気がない」
「営業は売る能力がないんじゃないか」
一方で営業部門も、開発部門に対して次のような不満を持つかもしれません。
「売れ行きが悪いのは、開発のセンスがないからだ」
「ウチの開発部門はロクな商品を作らない」
タテ割り組織では、こうした状況を生んでしまうリスクがあります。実際、一定規模以上の会社では、多かれ少なかれ似たような“溝”があるのではないでしょうか。
船内で攻撃し合うと船が沈んでしまう
本来、組織というものは「一隻の船」のようなものであるべきです。その例えで言うならば、組織に所属する人は全員「同じ船に乗っている船員」ということになります。船員はそれぞれ自分の役割を受け持ちますが、たとえ役割が違ってもみんなが同じ方向を目指します。
でも、その船員たちがケンカをしてしまったらどうなるでしょうか。たとえば航海担当と機関担当とがいがみ合い、お互いを攻撃してしまったら・・。
自分たちの船に穴があき、双方とも船ごと沈んでしまうかもしれません。
タテ割りの組織で部門間・部署間・チーム間に“溝”ができる、上司と部下の間に“溝”ができるということは、こうした例え話に近い状況だと思うのです。そして、その原因のひとつが、問題追及型コミュニケーションやコミュニケーション不足だと考えられます。
ホールシステムアプローチで全体を見える化
こうした状況を改善するひとつの方法が【全員による対話】です。部署内やチーム内の対話ではなく、組織に所属する全員が一堂に会する対話を指します。全員が参加することで、組織の全体像・全体システムが見える化され、組織と自分の関係性がわかりやすくなります。また、ほかの人の仕事内容や事情、想いなどもわかってきます。
船の例で言えば、「船はどこに向かっているか」「船の中で自分はどのような役割を持つか」「自分の役割のために何をすべきか」「ほかの人はどのような役割を担っているか」「ほかの人の仕事にはどのような困難があるか」「ほかの人はどのような思いで働いているのか」「ほかの人はどのような考え方をしているのか」「お互いがどのように協力すれば、船が目的地に着けるか」、そんなことが対話を重ねることで見えてくるかと思います。
こうした全体での対話の手法は、ホールシステムアプローチと呼ばれます。具体的には、ワールドカフェ、A.I.、OST、マスストーリーテリングなどのプログラムがあります。
「こういう会社にしたい」と個々をポジティブに
そのホールシステムアプローチの中でも、A.I.はポジティブアプローチという考え方に基づいた手法です。現状の認識や相手の思いの共有だけでなく、「強みや価値の発見」や「共有のビジョンを作り上げていこう」とする点に特徴があります。つまり、問題追及型のような「なぜこんな問題が起きたんだ。問題を起こさないようにするのはどうしたらいいか」というネガティブな方向性ではなく、「こんなことをやろうよ」というポジティブな方向性を生むものです。
もし、互いに「こういう会社にしたいね」というビジョンを言葉にし、深く共有し合うことができたなら、元々あったビジョンと例えほぼ同じビジョンであっても、個々の想いは主体性を伴い、集団としてのポジティブな意識も高まります。
以上の考え方や手法は、組織開発のひとつとして注目されています。ご参考にしてください。