IT業界で働きながら診断士取得を目指す方へ
[2009/09/25]
IT企業に勤めながら中小企業診断士試験を受験する人が増えています。日本マンパワー東京校でも、診断士通学講座の受講生の中で最も多い受講業種ナンバーワンは、IT通信業界なのです。
ただ、これから診断士を目指す人にとって、ITスキルを活用した診断士の話を聴けるチャンスは少ないかもしれません。
そこで去る9月12日、日本マンパワー東京校で、IT業界から転身して独立診断士となった樋野昌法さんによる「キャリア戦略セミナー」を実施しました。
当日は雨天にもかかわらず、多くの方が参加。樋野さん自身の実体験を交えながら、なぜIT業界出身の診断士は有利なのか、前職のスキルをどのように生かせるのか、診断士になってどのように仕事を獲得するのかなど、非常に興味深い話を聴くことができました。
とってもとっても参考になる話でしたので、キャリ達読者のみなさんにもセミナー内容をダイジェストにしてご紹介いたします。
●講師プロフィール
樋野 昌法 氏
中小企業診断士・社会保険労務士。工業用センサーメーカーを経て、基幹業務パッケージ開発・販売会社へ入社。
営業部にて販売戦略策定、営業、システム導入コンサルテーションを担当。その在職中に中小企業診断士の資格を取得する。
2007年4月、トリプルウィンコンサルティングを設立して独立開業。現在、代表取締役として、組織・人事およびITに関する経営支援、各種研修・セミナーを中心に活動している。
なぜ中小企業診断士なのか?
「中小企業診断士と社会保険労務士の資格をとって、将来的には独立して仕事がしたい。」そう思って資格取得を志したのは、最初に勤めていた工業用センサーメーカーの人事部で働いていたときのことです。
私にとって、「なぜ診断士なのか」という問いは、「何のために働くのか」と同義です。そもそも「何のために働くのか」を考えた時、生活のためにお金をもらうと同時に、「関わってくれる人に喜んでもらいたい」と思ったのです。なぜなら、サラリーマン時代にはその実感を得ることができなかったからです。
もちろん、人に喜んでもらえる仕事はたくさんあります。いろいろな道があります。その中で私が望んだのは、1.自由に仕事がしたい、2.知識面での専門性を磨きたい、3.ある程度の収入もほしい、ということ。人に喜んでもらえて、なおかつ私の3つの希望を実現できるのが診断士であり、独立することだったのです。
診断士が他の資格と大きく異なるのは、「診るところ」の幅広さにあります。たとえば、一つの会社を診る場合、社労士が診るのは「組織」の部分です。会計士や税理士は「財務戦略」が中心です。
でも診断士は、「経営戦略」から「マーケティング戦略」、「オペレーション戦略」、「財務戦略」など、会社全体を診る必要があります。その分、資格取得にあたっては勉強が大変だと思われるかもしれませんが、私にとってはその学習自体が非常におもしろいものでした。
また、大学院に通わなければ取得できないMBAと違い、働きながら資格が取得できるという点も魅力でした。
診断士資格は業務の幅を広げる
就職先として私が2社目に選んだのは、基幹業務パッケージの開発・販売を行っているIT企業でした。転職前の1年間で社会保険労務士の資格を取得していましたので、人事系の知識を生かしながら、これから需要が伸びると予想されるシステムを学べるIT企業を選んだのです。そして、働きながら診断士の資格を取得しました。
資格を取得してからは、仕事の内容が変わりました。社内の経営的な部分に関わる仕事が増えたのです。たとえば、経営会議に参加するようになりましたし、事業計画の作成、社内人事制度の構築、プレスリリースの作成、プライバシーマークの取得など、より内部的な仕事を任されるようになりました。
その理由は、診断士の知識を得たことで、私自身が会社全体を経営的な角度から大きな視点で見ることができるようになったからでしょう。
たとえば、開発に携わっている人ならば、診断士の知識を得ることで、自分の今の仕事が会社全体の中でどの部分を担っているのかがよくわかるようになると思います。また、目の前のことだけでなく、「こちらの方も考えなければいけないのではないか」という視点が生まれます。
そうした思考が身につけば、自ずと提案の幅は広がります。さらには、経営的な視点が身につきますので、経営の中枢を担う人材に成長することも可能だと思います。
ちなみに、診断士の2次試験でも、「大きい方向性を捉えられるかどうか」が合格のキーポイントとなります。
実は私の場合、2次試験に2年連続して失敗するという苦しい体験をしています。3年目に日本マンパワーの通学講座「2次対策標準コース(現・2次完全マスターコース)」を受講したことで、自分に足りないものがわかり、2次試験に合格することができました。
日本マンパワーでは、単に合格するためのテクニックを教えるのではなく、情報を正確に把握して、体系をきちんと作り上げるという診断の基本を身につけさせてくれます。2次試験の合格にはその思考プロセスが必要であり、その時に学んだことは、今も実務に大いに役立っています。
独立後のIT知識は強みになる
その後、私は独立したわけですが、独立してわかったことは、ITと経営は密接に関連しているということです。診断士は、組織、マーケティング、生産管理、財務・会計のすべてに関わる知識を必要とします。そのいずれの分野にも、システム構築やインフラ整備等でITは関連してきます。
つまり、診断士として活動するうえで、IT業界で培った知識は非常に役立つのです。
実際、「ホームページを作りたいが、よくわからない」、「自社ドメインを作ることもできない」という中小企業は少なくありません。さらに、診断士の中にもITに詳しい人が少ないのが現状ですから、みなさんが当たり前に持っているITの知識があるだけでも、大きな強みになります。
私自身も、ITの知識を経営コンサルティングの付加サービスとして顧客に提供し、支援するという方法で、他の診断士との差別化が図れていると思います。
このように、診断士の学習を通じて経営の知識を習得することは、IT業界で働く人にとってスキルアップにつながります。一方で、私のように診断士に転身した場合には、IT業界で培った知識が経営コンサルティングに役立ちます。ぜひ、みなさんがキャリアアップを図るうえで、参考にしていただければと思います。
◆樋野さんによる「独立後の経験談やアドバイス」は、次回以降の『キャリアの達人』でご紹介させていただきます。
中小企業診断士についてもっと詳しく知りたい方は こちらをクリック