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評価される「職務経歴書」の作り方

[2009/09/25]

 多くの応募者の中から採用を勝ち取るためには、まず職務経歴書をしっかりと書いて書類選考をクリアしなければなりません。また、職務経歴書の内容は面接試験でも質問されますので、職務経歴書を書くことは面接試験対策としても有効です。

 先月の同コーナーでは、採用担当者が「経験業務」「見やすさ」「価値観・職業観」「自社との適合性」の4点を重視して、職務経歴書を評価していることをお伝えしました。ただ、問題となるのは、「採用担当者に高く評価されるためには、どのように職務経歴書を作成すればいいのか?」ということです。

 面接官として長い経験を持ち、キャリアカウンセラーでもある田中稔哉さんは、「高評価される職務経歴書を書くためには、キャリアの棚卸しをすべき」だと言います。今月は、田中さんからうかがったその手法と秘訣をご紹介いたします。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアセンター支援推進部 企画課 次長
 田中 稔哉 さん

 ※経歴は取材当時のものです。

職務経歴書の3つの記述方式

 職務経歴書の記述方式は、会社から書式を指定されない限り自由ですが、主に3つの方式に分かれます。 最もオーソドックスなのは【年代式職歴記述】です。文字通り、初めての仕事から現在に至るまで、年代を追って記述する方式です。経験業務の積み上がっていく経緯がわかりやすく、職歴の短い人や転職歴の少ない人に向いています

 2つ目は【逆年代式職歴記述】。これは年代式職歴記述とは逆に、現在から過去にさかのぼって記述する方式です。過去よりも現在の職務能力を強調できるという利点があり、特に年配の人で職歴の長い人は、この方式が向いています

 3つ目の方式は【職能別(専門別)職歴記述】です。これは、時系列にこだわらず、職務の種類や発揮したスキルなどによって経験を分類する方式です。転職歴の多い人や専門的能力のある人はこの方式で書いた方がわかりやすいでしょう。

 実際に職務経歴書を作成する時は、一旦、年代式職歴記述方式か逆年代式職歴記述方式で書き出したうえで、どのように分類し直すかを考えることをお勧めします。

キャリアの棚卸しが必要な理由

 もっとも、記述の方式はあくまで「見せ方」の問題です。それ以上に大切なことは「見せる内容」です。
 そして、評価される内容を書くためには、【キャリアの棚卸し】が欠かせません。

 キャリアの棚卸しとは、自分がこれまでに経験してきたことを思い起こし、自分の強み・弱み、できること・できないこと、得意なこと・苦手なことなどを総点検する作業のことです。このキャリアの棚卸しを踏まえた職務経歴書は、キャリアの棚卸しがなされていない職務経歴書に比べて、採用担当者の評価は高くなるはずです。なぜなら、後者よりも前者の方が説得力ある職務経歴書になり、訴求力が強まるからです。

 ですからみなさんも、本気で転職・再就職を目指すのであれば、ぜひキャリアの棚卸しをしてください。なかには、「職務経歴書なんて普通に書いておけば大丈夫。これまでにもそれで問題なかったし・・・」という人がいるかもしれませんが、"普通の職務経歴書"よりも"説得力ある職務経歴書"の方が有利に決まっています。また、職務経歴書に書いた内容は、面接でも質問されます。その意味では、職務経歴書の作成は面接の準備でもあるのです。

 大切なのは、"普通の職務経歴書"からどれほどプレゼンテーション力の高い職務経歴書にブラッシュアップしていくかということ。そして、そのカギを握るのが【キャリアの棚卸し】なのです。

職歴を区切って「仕事の内容」を書き出す

 キャリアの棚卸しにあたっては、まず今までの職務経験をいくつかに分類します。職務経歴書でも分類して記載した方がわかりやすいからです。

 分類方法は人によって異なります。転職歴の多い人は、所属していた会社ごとでいいでしょう。配属先が何回も変わった人も、配属先ごとで構いません。一方、ひとつの会社で同じ職務を何年も行ってきた人は、時系列で区切ります
たとえば「1.アシスタント期、2.独り立ち期、3.リーダー期」という分け方でも構いませんし、「1.入社1〜5年目、2.6〜10年目、3.11〜15年目」などの分け方でも構いません。自分の経験をわかりやすく分類できる方法で区切りましょう。

コラム0910
【図1】キャリアイベントリーシート
拡大

 過去の職務を分類できたら、分類した職務経験ごとに1枚ずつ、【図1】のような記入用紙を用意します。これは"キャリアイベントリーシート"と呼ばれるもので、キャリアカウセンリングの場でよく使われます。もちろん、同じような欄を設けた紙で代用しても問題ありません。

 記入用紙が用意できたら、まず上部に会社名、(会社の)業種、所属部署名、対象期間を書きこみましょう。 そうして、【図1】のAにあたるスペースに「仕事の内容」を書きます。どのような仕事をしていたか、できるだけたくさん書き出してください。メールチェックや電話応対、書類整理など、日常業務や些細な業務もどんどん書き出しましょう。また、仕事の量や頻度、規模、額、相手など、できるだけ具体的な情報も書き入れておきます。

 昔のことですぐに思い出せなければ、当時の手帳や日記、名刺などを引っ張り出して、なんとか思い出してください。そこにあなたのアピール材料があるかもしれません。(【図2】の記入例をご参照ください)

工夫した点やほめられたことを書き出す

コラム0910
【図2】キャリアイベントリーシート
記入例(拡大

 「仕事の内容」を書き終えたら、【図1】のBにあたるスペースに「工夫した点」や「誉められたこと」など、長所につながるような経験を書きます。「気配りしたこと」でもいいでしょう。A欄に書き出した「仕事の内容」を見ながら、「この仕事はたいへんだったけれど、確かああして工夫したんだよなあ」とか、「あの上司はあまり誉めてくれなかったけれど、このことについては誉めてくれた」などと思い起こしながら書くといいでしょう。

 人によっては「何も思い浮かばない」というケースもあるかもしれませんが、長所は誰にもあります。たとえば、「その会社ではみんながしていた」ことも、ほかの会社では珍しい長所かもしれません。また、「オフィスにゴミが落ちていて気になったので、たびたび拾っていた」とか、「苦手な先輩がいて口もきかなかったけれど、ある時に自分の無礼を謝り、一緒に飲みに行く間柄になった」とかでもいいのです。

 自分で自分の良さを挙げるのは難しいことですが、この部分が採用につながるアピール材料になるのですから、時間をかけてとことん見つけ出してください。「私にはもっと何かアピール材料があるはずだ」と思い込めば、きっと見つかるはずです。(【図2】の記入例をご参照ください)

自分のコンセプトを見つける

 こうして「仕事の内容」と「工夫した点/誉められたこと」が出揃ったら、それらのまとめをします。【図1】のCとDにあたるスペースに端的な言葉で書き留めましょう。

 「仕事の内容」については、業務内容を表す一般的な用語に直します。たとえば「郵便物の仕分け・発送、社内座席表の作成、名刺の発注管理、消耗品の発注・支払い・在庫管理など」という内容であれば、「庶務管理全般、用度品管理全般」という具合です。求人媒体などを参考にすれば、表現のヒントはあると思います。

 一方、「工夫した点/誉められたこと」については、少し難しいかもしれません。ただ、これをまとめた言葉は、転職活動・再就職活動における【自分のコンセプト】になります。いわば、あなたの強みを端的に表現するフレーズになるのです。たとえば、「粘り強い」「気配り」などの性格でもいいですし、「計数管理」「システム構築」などの専門性でも構いません。

 これら2つの項目がまとまれば、まとめた言葉はそのまま職務経歴書に書き写せる言葉となり、あなたの特性を表します。それを見やすい構成でていねいに文書化すれば、最初に作成した"普通の職務経歴書"に比べて大幅にブラッシュアップされるはずです。

 また、もし自分ひとりで棚卸しするのに行き詰まりを感じてしまったら、一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。カウンセラーがうまく経験を思い出させてくれたり、まとめの表現のアドバイスをしてくれたりしますので、心強いサポートになると思います

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