ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 Vol.11

「本当に好きな仕事」で充実するために

[2009/03/25]

 企業の採用担当者の方とお話ししていると、次のような感想を聞くことがあります。
 「面接の時、応募者の志望動機を聞いていると、本当にこの仕事がやりたいのかなぁと疑問に思うことがあるんですよね。何か、勘違いしているんじゃないだろうかって」
 私にも経験がありますが、就職や転職の際には「こんな仕事をやってみたい」という想いがあって、そうした仕事のできる会社を探します。そして、採用面接で志望動機を話すわけですが、その方法自体が"勘違い"をもたらす原因となっているのでしょうか?

 「できれば、自分が本当に好きな仕事で、充実した社会人生活を送りたい」
 そう考えている方に向けて、キャリアカウンセラー・水野みちさんのお話をご紹介いたします。就職・転職・再就職を控えている人はもちろん、仕事環境に迷いや悩みを抱いている人にも非常に参考になる内容です。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアドック部
 CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
 水野 みち さん

※肩書きは取材当時のものです。

価値観を分解して自分を知る

 たとえば、「本を作りたい」という漠然とした想いを持つ人がいるとします。そうした目標を掲げることは非常に大切なことで、それ自体には問題がありません。ただ、ひと口に「本を作る」と言っても、さまざまなジャンルの本がありますし、職種によって役割も異なります。会社によって、作り方も異なるでしょう。
 そうした千差万別の状況ですから、たとえ「本を作れる」会社に入社できたとしても、自分の想いを満たせるとは限りません。
 ですから、「本当に好きな仕事」に就くためには、「本を作りたい」という想いに潜んでいる"自分の価値観"を分解することが重要になります。「本を作りたいという欲求は、自分のどのような価値観から発しているのか?」を見い出すのです。

 たとえば、何かひとつのテーマに関心があり、それに関する仕事に携わりたいのか? あるいは、学生時代の文集作りが楽しかったように、ほかの人と一緒に何かを作ることを望んでいるのか? あるいは、言葉の表現の美しさを勉強したいのか?
 価値観を分解してそれを自覚し、自分の仕事と重ね合わせることができれば、働く前に想い描いていた仕事のあり方と多少違っていたとしても、充実した気持ちで働くことができる はずです。

自分らしさの活かし方は多様

 また、万一、希望の会社に入社できない状況になったとしても、価値観の自覚があれば、ほかの会社で働いても満足を得ることは可能です。

 今お話しした「本を作りたい」という例で言えば、「何かひとつのテーマに関心がある人」は、本作りでなくても、目当てのテーマに関わる仕事に就けば、満足を得られるのではないでしょうか。同じように、「ほかの人と一緒に何かを作りたい人」は、メーカーなどでも価値観を充足できるでしょう。「言葉の表現の美しさを勉強したい人」は、たとえば教育の分野に価値を見い出せるかもしれません。企業の営業企画担当者として販促ツール作りを担ったり、スーパーマーケットのポップにセールス文を書いたりすることで、満足を得ることも考えられます。
 ですから、漠然とした目標だけにこだわらず、ぜひ、自分の価値観を分解してみてください。それが、いわゆる"自分の棚卸し"と呼ばれる作業です。その上で、「見い出した価値観をどこでどのように活かすのか?」ということを工夫されるといいと思います。

今後のキャリア形成に向けて

 ちなみに、今の話に似た理論として、「キャリア・アンカー」という考え方があります。組織心理学やキャリア発達論の研究者として有名な、米国のエドガー・H・シャインが唱えた理論です。
 アンカーとは錨(いかり)という意味で、シャインはキャリアの形成を、「船が潮に流されてあちこちに動いてしまったとしても、しっかりと錨をおろしていれば安定している」という情景に例えています。つまり、自分の錨となる拠り所がしっかりしていれば、異動などで仕事環境が変わったり、迷ったり悩んだりしても、自分らしいキャリアを形成することができるという意味です。

 この錨は、次の3つの要素で構成されています。

 1.いろいろな仕事環境での成功体験に基づく自覚された才能と能力
 2.現実の場面での自己診断や他者からの評価に基づく自覚された動機と欲求
 3.自身の考え方と、働く集団・組織や仕事環境の規範および価値との衝突の経験に基づく自覚された態度や価値

 これらを確かなものとして自覚するためには就労経験が必要とされますが、「自分が本当に大切にしたい想い」であれば、就労経験がなくてもある程度見つけることができます。
ぜひ、自分の棚卸しをして、今後のキャリアを自分らしいものにしてください。


  • 講座コンシェルジュ

    おすすめの講座・資格をご紹介

  • 講座を選ぶ

    キャリア形成にお役立てください

  • キャリアを考える

    キャリアビジョンを創る