ストレスと上手に付き合うために、2つのことを知る
[2014/09/29]
ストレスフルな社会。みなさんは自分のストレスケアをしていますか?
ただ、けっしてすべてのストレスが悪いものであるわけではありません。たとえば、スポーツ・シーン。緊張とプレッシャーに包まれた状況はストレスのひとつですが、だからこそ練習の時に出したことのないような新記録が出ることも多々あります。みなさんも、締め切り前になるといつも以上のパフォーマンスで成果を上げる、ということはありませんか? そうしたストレスは、適度なストレスだと言えます。
でも、過度なストレスが長期間にわたって続くこともあります。いわゆる「ストレスがたまる」という状態です。そうした状態になると、心身に悪影響を及ぼし、場合によってはメンタルヘルス不調などにつながることがあります。
活き活きと健康的に働くためには、ストレスと上手に付き合っていくことが大切です。そこで、メンタルヘルス対策の講師などを務める小出真由美さんに、ストレスをためない秘訣をおうかがいしました。2つのことを知るだけでも、ストレスとの付き合い方が上手になるようですよ。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
人材開発企画部 研究開発グループ
専門課長
小出 真由美 さん
ストレスから自分を守るために
ストレス自体はけっして悪いものではなくて、適度なストレスは集中力を高めたり、モチベーションを保ったりする効果を生みます。しかし、過度なストレスが長期間続くとメンタルヘルス不調につながるケースがありますので、ストレスと上手に付き合えるようにご自身でストレスケアをすることが大切です。
ストレスケアの方法はいくつかありますが、今回は「2つのことを知る」という視点でお話しさせていただきます。
自分の心のクセや思考パターンを知る
最初の「知る」は、『自分の心のクセや思考パターンを知る』です。
誰でも、何らかの出来事に遭遇した瞬間、頭に思い浮かぶ思いがあるはずです。『心のクセ』や『思考パターン』とは、その瞬間的に思い浮かぶことを指します。それは前向きなプラス思考のこともあれば、後ろ向きなマイナス思考のこともあるでしょう。ただ、いつもマイナス思考の傾向が強いと、ストレスがたまりやすくなります。
たとえば、テストで80点を取ったとします。それがたとえクラスの平均点以上だとしても、マイナス思考だと次のように考えるかもしれません。
①「100点じゃなきゃ、0点と同じだよ」
②「20点も減点されるなんて、私は本当に頭が悪いなあ」
③「友だちに笑われた。こんなテストで80点なんてバカなヤツだと思われたんだ」
④「80点しか取れなかった・・こんなんじゃ、いい大学に入れない」
⑤「80点取れる人なんてこの世に山ほどいるのだから、たいしたことない」
①の場合は、物事を全か無かでしか考えられない完璧主義の思考パターンです。②は心のフィルターがかかり、悪いことばかりを思い出させてしまう思考パターン。③は心の読みすぎで、友人がなぜ笑ったかを確認もせずに、バカにされたと決めつけるパターン。④は先読みの誤りで、妥当な根拠もないのに決めつけてしまう、③と類似する結論の飛躍が見られます。そして⑤は、自分の成功やいい点を極端に小さく考える過小評価の思考パターンです。
認知の歪みを自覚する
このように、つい悪い方向に考えてしまう『心のクセ』や『思考パターン』を、専門用語で認知の歪みと言います。①〜⑤はその一例で、ほかにも
・1度や2度起こっただけの失敗や出来事を、常に起きることだと思い込む
・何でもないことや良い出来事さえも、悪い出来事にすり替えて考えてしまう
・自分の失敗や悪いところを必要以上に大きく考えてしまう
・感情的に物事を決めつけてしまう
・「〜すべき」だと自分の設定した基準が当然だと考えてしまう
・自分や他人にイメージを創り上げて、そのイメージを固定化してしまう
・何か良くないことが起こった時、何でも自分のせいだと考えてしまう
などの歪みがあります。
認知の歪みは無意識のうちに出てしまいますが、性格ではありませんので、トレーニングで改善することができます。
自分でも簡単にできるワークとしては、たとえば次のような方法があります。
まず、最近起こった嫌なことや気になっていたことを思い出す。次に、それについて当時どのような感情を抱いていたか、「怒り○%、悲しみ○%・・」というように書き出していく。そして、事実はどうだったのかを客観的に書き出すのです。
そうすると、出来事が起こった時にたとえば「私はもう終わりだ」と思っていたことであっても、事実は思ったほど悪くなかったことが多いということがわかります。つまり、悪い方向に考えたり、落ち込んだりすることは、適切でないことが多いのです。
ですからみなさんも、自分が陥りやすい認知の歪みを知っておくと、次に同じような思いを抱いた時に、「ああ、たぶん私は今、いつものクセ/パターンが出てしまっているのね。でも事実はきっとたいして悪いことじゃないはず」などと発想でき、気持ちが楽になると思います。そうすれば、ストレスはたまりにくくなります。
ソーシャルサポートを知る
もうひとつ知っておきたいのは、『ソーシャルサポート』です。ソーシャルサポートとは、周囲からのサポートのことを指し、個人のストレスを弱めたりなくしたりするのに効果があると言われています。
ソーシャルサポートには、「道具的サポート」「情報的サポート」「情緒的サポート」「評価的サポート」の4種類があります。
「道具的サポート」とは、直接的に問題解決が進むようなサポートのことです。たとえば、自分がたくさんの仕事を抱えていて忙しい際に、同僚が手伝ってくれるというようなサポートです。
「情報的サポート」とは、間接的に問題解決が進むようなサポートで、「その資料なら○○にあるよ」「やり方をこう工夫すれば楽になるよ」などと、役に立つ知識や助言を与えてくれることです。
また、「情緒的サポート」とは、「おはよう」と笑顔で接してくれたり、「大丈夫だよ」と励ましてくれるようなサポートを指します。これだけでも、情緒が安定してやる気が起こり、ストレス軽減に効果があります。
「評価的サポート」は職場では主に上司の役割になりますが、「いつもがんばっているよ」「助かっているよ」などと努力を評価したりほめたりすることです。
サポートを確認することが心の支えになる
自分が誰からどのようなサポートを受けているかを知ることは、いざという時に向けての安心感が得られ、心の支えになります。
それを確認するためには、一度紙に書き出してみる(下図参照)といいでしょう。真ん中に自分を書き、その周辺にサポートしてくれる人を書いてみます。仕事に関係する人ばかりでなく、家族やお友達も含めてください。大きなサポートを与えてくれる人は大きく囲み、小さなサポートの人は小さく囲むと、よりイメージがつきやすくなります。