日本大学文理学部が「日本最強の就活支援」と言われる理由
[2013/10/29]
『別冊宝島 本当の「大学ランキング」』(宝島社)や『新大学受験案内〜夢をかなえる172大学〜』(東進ブックス)などの就職特集で「日本最強の就活支援!」と絶賛された、日本大学文理学部(東京都世田谷区)。同学部の就職指導課は、就職活動生のバイブルと言われる漫画『銀のアンカー』(集英社)のモデルにもなりました。さらに、大学3年生向けに毎年発行している『ジョブガイド』は、全国の大学就職支援担当者が選ぶガイドブック第1位にも選ばれています。
なぜ、日本大学文理学部の就職支援がこれほど注目されているのでしょうか? おそらく、一人ひとりの学生に本当に必要とされる情報・アドバイスを追求し、他大学では見られない独自の就職活動支援プログラムを実践している結果であろうと思われます。
そこで、就職指導課の主任でありキャリアカウンセラーでもある友寄秀俊さんに、支援の内容をうかがいました。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
日本大学 文理学部
就職指導課 主任
友寄 秀俊(ともより・ひでとし) さん
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
1978年埼玉県生まれ。2001年、日本大学法学部を卒業後、同大学に入職。文理学部会計課を経て、2004年から現職。毎年、文系・理系の学生約2,000人に対し、就職に関する講義・面談などを行う。主な監修書に『就職活動スタートブック』『入りたい業界・企業が見つかる本』『エントリーシート 志望動機・自己PRの書き方がわかる本』(すべて洋泉社)などがある。
表現の力を後輩にも伝えたい
私が就職活動支援の職に就きたいと思ったきっかけは、学生時代にさかのぼります。
当時、大学3年生だった私は、インターンシップに応募をしました。勉強もサークル活動もアルバイトも活発に行っていたこともあり、書類審査や面接試験には自信がありました。ところが、応募したすべての会社で不採用になったのです。
「なぜ、通らないんだろう?」
それが正直な気持ちでした。不採用の原因がまったく思い当たりませんでした。
そうした時、友人が「就職指導課に行けばエントリーシートを添削してくれるよ」と教えてくれました。半信半疑のまま就職指導課を訪ねると、「全然ダメ。こんな細かい文章、読みたくもない」との厳しい言葉。と同時に、お手本を見せてくれて、「エントリーシートは相手に伝えるものなのだから、こういう風にわかりやすく書いてごらん」とアドバイスをいただきました。
その後の1週間は、就職指導課に毎日通って添削指導を受けました。すると、これまで一方通行で抽象的な自己PRばかりだったエントリーシートが、的確な具体的事例を盛り込みながら簡潔にわかりやすく伝わるエントリーシートに変わったのです。実際、その後は1社も落ちることはありませんでした。
「表現ってすごい力があるな。後輩にもぜひ伝えたい」
私が就職支援の仕事に強く惹かれたのは、この経験によります。大学4年生の時には他校の就職活動仲間と一緒に、代々木オリンピックセンター貸切で3年生のための就活支援イベントも行ったほどです。就職も、母校である日本大学の職員に決めました。
学生の就職活動経験を就職指導課のノウハウに
文理学部の就職指導課に配属されたのは約10年前です。志望していた就職支援業務ですので張り切っていましたが、配属後すぐにショックを受けるできごとがありました。学生向けのパネルディスカッションの司会を務めたのですが、尊敬していた先輩職員から「学生はお前の話なんか聞きたくないんだ。聞きたいのは、自分が目指す業界・職種に就職できた先輩の話なんだ」と指摘されたのです。
確かに当時私は、自分の経験の範囲内でしか語れる言葉を持っていませんでした。けれども、文理学部には文系も理系もあります。私が理系職種への就職活動についてアドバイスできるわけがありません。
そこで私は、学生に頭を下げて「エントリーシートを見せてほしい」とお願いしました。そうして何枚ものエントリーシートを分析すると、内定を得られる傾向や企業の特質が見えてきました。また、学生から「エントリーシートの書き方がわからない」と相談された際、先輩の事例をお手本として見せられるようになりました。つまり、自分の経験だけしかなかったノウハウが、年間約2000人の卒業生の経験にまで広がったのです。
内定を得た4年生が就活を再現する演劇
今、文理学部の就職指導課では、就職ガイダンスをはじめ、職種研究講座、企業研究講座、志望動機講座、エントリーシート講座、面接・グループディスカッション講座、採用試験対策など、年間を通じてさまざまなプログラムを実施しています。なかでも特徴的な行事は「4年生内定者による就職活動再現講座」です。
本講座はいわゆる演劇です。私が大まかなシナリオを書き、内定を得た4年生や就職指導課の職員がそこに各自の体験を加えた役者となって、就職活動を再現した演劇を3年生に見てもらうのです。演劇では、面接やグループディスカッション、説明会、店舗見学、OB・OG訪問、内定辞退など、さまざまなシーンについて失敗例のビフォー・成功例のアフターを見せます。文理学部の先輩が実際に体験した内容を元にしていますので、3年生には強く響きます。まだ就職活動を始めていない学生にも様子は伝わりますし、どのような言動が好ましく、どのような言動がよくないか、職員が言葉で伝えるよりも明確にインプットされます。
また、毎年秋には3年生向けに『ジョブガイド』を発行しています。これは、全国の大学就職支援担当者が選ぶガイドブックの第1位にも選ばれました。
『ジョブガイド』には、内定を得た文理学部4年生の就職活動事例が詰まっています。志望理由、OB・OG訪問、エントリーシートの書き方、面接・グループディスカッション、職種別の自己PR法など、項目別に事例を整理・構成しています。事例が少ないと多様な価値観に対応しにくいため、100人以上の学生に登場してもらっています。また、認知度は低いけれども優良企業に内定した学生や、企業の人事担当者の声も盛り込んでいます。
『ジョブガイド』は発行から約10年、つまり、現在の学生は1000人以上の卒業生の事例をロールプレイングできるというわけです。
こうした取り組みは、ほとんど就職指導課で内製しています。『ジョブガイド』もすべて、私たちが取材・執筆し、外部委託は一切行っていません。なぜなら、私たち自身がノウハウを蓄積し、個別相談や書類添削、模擬面接などでフォローアップしていく必要があるからです。
就職支援は、本人の価値観を尊重しながらも就職を成功させなければいけないという難しさがあります。本人にとって人生を左右する重大機会であると同時に、私たち支援する側にとっても非常にやりがいのある仕事です。