ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 Vol.10

「ほめて伸ばす」前に大切なこと

[2009/02/25]

 上司が部下を育成指導する際、「ほめて伸ばす」という方法が有効であると言われます。
 でも、本当に「ほめる」だけで人は伸びるのでしょうか?
 私の経験を思い起こすと、上司からほめてもらってうれしかった時と、あまりうれしくない時がありました。私の能力が伸びたかどうかは定かでありませんが、少なくとも「ほめられたからといって、常にやる気になったわけではない」ことは確かです。人の心理は、そんなに単純なものではないように思います。

 今回は、この「ほめて伸ばす」ことについて、キャリアカウンセラーの水野みちさんに伺いました。そのポイントは・・・ほめる前にとっても大切なことがあるようです。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアドック部
 CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
 水野 みち さん

内面をよく観察し、価値観やモチベーションの源泉を知る

 私自身が部下の立場だった時、あまり好きでなかったのは「ウソっぽくほめられる」ことでした。「この人、おだてて仕事をさせるためにほめているんじゃないかなあ」と感じることがあったからです。
 それについて今考えると、単にほめるだけではなく、相手を理解した上でほめているかどうかがポイントとなるように思います。私はマネジメントの専門家ではありませんので、心理学的な側面に限定した場合のお話ではありますが・・・。

 つまり、「あっ、この人、私のことをよくわかってくれているんだな」と部下が感じられれば、ほめられた時にうれしく感じ、モチベーションが高まるということです。逆に、そう感じられなければ、部下はほめられてもピンとこないのではないでしょうか。
 ですから、もしみなさんが上司の立場にあるならば、ほめる前に「部下を観察する」ことをお勧めします。ただ、この場合の「観察」とは、行動を観察するという意味ではありません。観察すべきことは固有の価値観やモチベーションの源泉です。「この子は何を大切にしているのだろう?」「この子のモチベーションはどこにあるのだろう?」「この子は何を原動力に働いているのだろう?」などについて観察することが大切です。
 そうすれば、部下の心理に合った対応ができ、人材育成にもつながるのではないでしょうか。

 場合によっては、観察しても部下の内面が見えないこともあるでしょう。でも、価値観やモチベーションの源泉は、普段の行動や発言、しぐさ、反応などににじみ出るものです。喜ぶ時、やる気を見せる時、涙を流す時、怒る時・・・。そうした瞬間を本気で観察すれば、その要因も見えてくるはずです。そして、要因をひもとけば、価値観やモチベーションの源泉までつながっていきます。

 たとえば、部下が悔し涙を浮かべたら、それはプライドを持っている裏返しかもしれません。そうだとすれば、そのプライドはどのようなプライドで、どのような価値観から生まれたのかまで想像することができます。部下の内面を映し出している瞬間を、ぜひ観察してみていかがでしょうか。

部下の立場の人は上司の価値観を観察してみましょう

 また、同じようなことが部下の側にも言えます。
 上司と部下との関係がぎくしゃくしているケースには、「上司は自分と同じ価値観を部下に一方的に期待し、部下は上司の価値観を理解していない」という傾向が強いからです。

 たとえば、上司がプロモータータイプで新しいことを展開するのに価値を見い出している一方、部下である自分自身はチームワークよく協調することに価値を見い出している場合。お互いに相手の価値観を知らなければ、部下は「どうもあの人は苦手だ」「私はがんばっているのに、なぜわかってもらえないのだろう」という結果に陥りがちです。

 でも、「あの上司にとって大切なことは、新しいことを展開することなんだ」ということがわかれば、その原因に納得ができるはずです。さらに、新しい企画提案書を作成し、「このようなことを考えてみましたが、いかがでしょうか?」などの行動を示せば、上司からの評価も変わってくるかもしれません。

 もちろん、お互いに理解し合い、ケアしながら働ける関係が最も良好かと思いますが、上司の考えを変えることは至難の業です。そうした際は、自分が相手をよく観察してみる。そして、相手の価値観やモチベーションの源泉を理解した上で、それを少し自分にも採り入れてみる。そうすれば、今までよりもコミュニケーションがスムーズになるはずです。

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