キャリアカウンセラーの新能力要件と、キャリア教育の義務化
[2011/08/23]
平成23年3月29日、厚生労働省から「平成22年度キャリア・コンサルティング研究会」の報告書がとりまとめられました。この報告書は、今後のキャリアカウンセラーのあり方を見通すという点で、関係者から注目を集めています。
なかでも、標準レベルのキャリアカウンセラー(キャリア・コンサルタント)に求められる能力要件として、キャリア教育の拡充が提言されたことは、新しい専門性が教育分野に広がっていくものと捉えることができます。
そこで、新能力要件およびキャリア教育の今後について、日本キャリア開発協会の立野了嗣理事長にお話をおうかがいしました。ぜひご参照ください。
●今回お話をうかがったのは・・・
日本キャリア開発協会
理事長
立野 了嗣 さん
キャリアカウンセラーに求められる新しい能力
厚生労働省から公表された「平成22年度キャリア・コンサルティング研究会」の報告書は、「実態調査部会」「能力要件部会」「キャリア教育部会」という3つの部会の報告から構成されています。
このうち、能力要件に関する部では、標準レベルのキャリアカウンセラー(キャリア・コンサルタント)に求められる能力要件と、それに伴う養成講座・試験のあり方の検討結果が記載されています。ポイントとしては、キャリア教育、人事労務管理に関する知識・スキル、ジョブ・カードの活用などについて、拡充の必要性が提言されていることです。
なかでも、キャリア教育の拡充については、キャリア教育部会においても、キャリアカウンセラーの具体的な役割や能力要件が提言されています。
大学設置基準改正によるキャリア教育の義務化 新しい能力要件にキャリア教育が組み込まれた背景には、全国の大学・短大を対象とする「大学設置基準」および「短期大学設置基準」が、今年4月に改正されたことが挙げられます。これらの設置基準には、次の条項が新しく盛り込まれました。
大学(短期大学)は,当該大学(短期大学)及び学部等(学科)の教育上の目的に応じ,学生が卒業後自らの資質を向上させ,社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を,教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう,大学(短期大学)内の組織間の有機的な連携を図り,適切な体制を整えるものとすること。
大学関係者をはじめとする関係者は、この改正を「キャリア教育の体制整備が義務化されることになった」と認識しているようです。実際、「平成22年度キャリア・コンサルティング研究会」の報告書も、この設置基準改正を踏まえた内容となっています。
キャリアカウンセラーの活躍機会の広がり
以下は私見になりますが、こうした動向を客観的に勘案すると、各大学・短大では今以上に学生に対するキャリア形成支援のプログラムの充実が図られるでしょう。そのためには、プログラムを策定・運用できる専門家を学内に招く動きが展開されるように思います。
このように、キャリアカウンセリングのメカニズムが教育分野に広がっていくことを個人的に期待していますし、同時にそのような見通しも持っています。
キャリアカウンセラーにとっては身につけるべき新しい専門性が加わる反面、活躍の範囲も広がっていくことになるのではないでしょうか。