ちょっと一息

「中小企業診断士」学習のコツ

通信講座を活かした第1次試験対策の年間学習モデル

[2014/11/26]

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 中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対して適切な診断・助言を行う専門家の国家資格です。試験に合格して中小企業診断士として登録されれば、「経営コンサルタントとして一定のレベル以上の能力を有する者」として位置づけられます。
 ステータスの高い資格ですから、試験はけっして易しくありません。昨年度の例では、第1次試験の合格率が21.7%、第2次試験の合格率が18.5%でした。
 ただ一方で、合格基準が特別に高いというわけではありません。第1次試験の場合は「総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと」が基準です。「総点数の60%以上」ということは、7科目の平均得点率が60%でいいという意味です。合格基準はむしろ「比較的低い」と言えるかもしれません。
 では、なぜ合格率が低いのでしょうか? その最たる原因は、出題範囲の広さだと言えるでしょう。そのため、合格を勝ち取るためには、時間効率のいい学習をすることが望まれます。
 そこで今回は、通信講座を上手に活かした「オススメの年間学習法」について、日本マンパワーの講座運営担当で、自身も診断士の資格を保有している高橋哲史さんにお話をうかがいました。ご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー
 キャリアクリエイト部 1課
 高橋 哲史 さん


暗記中心学習よりも理解中心学習の方が効率的


 中小企業診断士とは、中小企業に対して適切な経営の診断および助言をできる、一定レベル以上の能力を持った人を登録する制度です。しかし、中小企業と言ってもさまざまな業界・業種があり、各企業の経営事情も異なります。それなのになぜ、たったひとつの資格によって、すべての中小企業に診断・助言できる「一定レベル以上の能力を持った人」と判断されるのでしょうか。それは、企業活動には「経営資源を外部環境に投入してリターンを得る」という共通点が あからだと思います。この共通点に関する基本をしっかりと学習することが求められる試験だからこそ、あらゆる企業を対象に経営コンサルティングができるとみなされるのだと思います。

 一方、みなさんが受験を志すと、多くの場合、最初の関門である第1次試験対策に向けて、多肢選択式問題に対応した暗記中心学習をしようとしてしまいがちです。それはけっして間違いではありませんし、実際、第1次試験を合格しなければ第2次試験の受験資格を得ることができません。
 しかし、別の観点から考えれば、第1次試験に合格しただけでは診断士資格を得ることができないのも事実です。そして、第2次試験では読解力・思考力・記述力が問われるため、暗記だけでは通用しません。いわば、学習のやり直が求められるようなもので、第2の関門が大きく立ちはだかることになります。

 ここで大切なことは、診断士の試験とは、第1次試験・第2次試験・実務補習までの過程で、使える知識」が身についているかを問われるということです。ですから、第1次試験対策をしながら第2次試験対策にもつながるような、理解中心の学習をすることをお勧めします。
 それを念頭に置いていただいた上で、第1次試験対策の年間学習法をイメージしていただければと思います。


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5月初旬までにテキストを3回読む

 今回は、初学の人が来年8月の第1次試験ストレート合格を目指すケースを想定します。便宜上、この12月から日本マンパワーの『中小企業診断士受験通信講座』を受講して学習するとします。

 学習するにあたっては、最初に『学習マニュアル』と『学習ガイドDVD』に目を通します。それにより、診断士試験とはどのようなものという全体像を把握できます。
 そして、科目ごとにテキストを3回読みましょう。ただ、やみくもに読めばいいというわけではありません。次のように読むことをお勧めいたします。

 まず、「企業経営理論」のテキストを通読します。流し読で構いません。わからない記述は飛ばしても構いません。冒頭の「科目の概要」の項で「この科目は何のためにどのようなことを学ぶのか」のポイントを示してありますので、それを押さえた上で1冊を流し読みすれば、科目の全体像をつかむことができはずです。
 次に、「企業経営理論」のテキストをもう一度頭から読みます。今度じっくり時間をかけて、書かれていることを理解しようとしてください。大事なことは、暗記ではなく理解をすること。それを心掛けましょう。
 2回目の読みが終わったら、「企業経営理論」の添削問題を解きます。これによって、この科目で何が問われるのかがわかります。
 そして、もう一度「企業経営理論」のテキストを読みます。添削問題を解いた後ですので、重要な部分が見えてくるはずです。その部分にアンダーラインを引いたり、自作のノートにまとめたりしながら読むのも効果的です。

 ここまでが、科目ごとの1クールです。「企業経営理論」が終わったら、ほかの科目も同様に進めていきます。1科目につき2〜3週間を目途に取り組めば、ゴールデンウィーク明けには全科目を終えられるでしょう。その頃には、相当理解が進んでいるはずです。
 もし、2回目のテキスト読みで理解するのが難しい場合は、次対策映像スクール(USBメモリー)』オプション、科目別受講可)をご利用いただければ、あたかも通学しているような授業を視聴でき、理解の促進に役立つと思います。


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過去問1年分を「じっくりと読む」

 テキストの3回読みが終わったら、『中小企業診断士受験通信講座』に付属している『1次試験模範解答解説集』を読みます。この教材には直近の過去問とその解答解説が掲載されていますが、解く」のではなく「読む」のです。
 最初に、設問の問題文を読みます。速く読む必要はありません。時間を気にせず、じっくりと読んでください。そして、「問題の意味が理解できるか」「何が問われているのかイメージできるか」「テキストのどのあたりに書いてあったか思い出せるか」などについて確認しましょう。
 次に、解答群の選択肢をじっくりと読んで、各選択肢に「どのようなことが書いてあるのか」の意味を考えます。
 そうしたら、設問1問ごとに解答解説を読み、各選択肢の正解/不正解の理由」を理解してください。もし納得できなかったり、問題文や選択肢の内容を理解できなかったりする場合は、該当箇所のテキストを見直しましょう。テキストに書かれていない内容については、マーキングしておいて後で覚えましょう。

 このようにして全科目の過去問を1年分読めば、理解度がさらに高まります。第1次試験の特性もよく理解できはずです。ゴールデンウィークまでに時間的な余裕があれば、テキスト3回読みのクールに、過去問読みを組み入れることも効果的です。


本試験日まで問題演習と復習を繰り返す

 過去問1年分が終わったら、今度は時間を意識しながら過去問を解きます。できれば『1次試験模範解答解説集』バックナンバーをご購入いただくなどして、少なくとも3年分取り組みたいところです。 また、年数だけでなく、同じ問題を繰り返し解くことも大切です。出題範囲が試験前年の白書および当年の施策である「中小企業経営・中小企業政策」を除けば、3回でも4回でも5回でも時間的余裕のある限り解ことをお勧めします。
(注釈)
※『中小企業経営・中小企業政策』は毎年情報が更新されますが、出題傾向を知るために一度は必ず過去問を確認しましょう。

 また、『中小企業診断士受験通信講座』には『実践問題集』が付いています。こちらは日本マンパワオリジナルの良問が数多く掲載されていますので、過去問と同様に取り組んでください。

 なお、オプションとなりますが、1次答案練習会』『1次公開模擬試験』を受けられるのも効果的です。特に『1次公開模擬試験』は、会場受験の雰囲気を経験できますし、直近の時事的問題も出題されますので、ぜひお勧めします。毎年6月中旬に行いますので、その時までに過去問をある程度解いておくのを目標としましょう。
 もちろん、模試後の実力向上は十分に可能です。試験直前まで『1次試験模範解答解説集』『実践問題集』『1次公開模擬試験』を繰り返し解きつつ、テキストや自作ノートで復習していけば、合格できる実力が養われることと思います。


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実務で使える「キャリア形成につながる知識」

 繰り返しになりますが、第1次試験にあたって日本マンパワーが推奨する学習法は、暗記中心学習ではなく理解中心学習です。そのためテキストも、在宅で独学される方でも理解しやすいように、重点ポイントとなる基本事項についてていねいに解説してあります。
 時折、「日本マンパワーのテキストは読み物だ」という声を、良い意味でも、また批判的な意味でも聞くことがあります。確かに読み物のように感じるかもしれません。なぜなら、理解することを目的としてテキストを作成しているからです。
 診断士試験に初めて挑戦する方は、もしかすると「暗記しやすいように、出題されそうなところだけ簡潔にまとめてあるテキストの方がいい」と思われるかもしれません。しかし、暗記だけでは第2次試験にはつながりにくく、使える知識とするのは困難です。

 私たちは、第2次試験を見据え、合格後の知識活用も見据えて「実務に使える知識」「キャリア形成につながる知識」を身につけていただくことを願っています。そのように学習することが、冒頭に申し上げた試験で求められる原則の学習をマスターする近道ではないかと考えています。

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