椅子に座ったまま「気づきのヨガ」でストレス解消
[2015/12/24]
みなさんは「ヨガ」にどのようなイメージを持っていますか?
「おしゃれなウェアを着た女性が、ヨガマットの上でポーズをとっている」「とても体が柔らかい人ばかりで、自分にはできそうにない」「美容に効果がありそう」といったところでしょうか。でも実は、こうしたイメージで知られているヨガは、ヨガのほんの一部でしかありません。
今、ヨガ本来のストレスマネジメント能力を上げる絶大な効果を実感できる「オフィスヨガ」が注目を集めつつあります。オフィスヨガとは、その名の通り、オフィスで行うヨガのこと。ウェアに着替える必要がなく、デスクの椅子に座ったまま、老若男女問わずにできるヨガ。
このオフィスヨガを通じ現代人のストレスマネジメント能力を上げる活動を行なっているのが、無藤智恵美さんです。無藤さんは、女優やオリンピック選手など数々の著名人にもパーソナルセッションを行ってきた経験の持ち主。「オフィスヨガとはどのようなものか」「ヨガがなぜストレスに効くのか」など、詳しくおうかがいしました。
そのポイントは「ご自身の気づき」にあるそうです。ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
無藤 智恵美(ムトウ チエミ)さん
Yoga World. Tokyo代表
日本マンパワーマネジメントコンサルタント
大手ヨガスタジオのマネジャーを経て、広尾にあるラグジュアリーヨガスタジオ「Deportare Yoga」にてトップアスリートや政治家にパーソナルセッションを行う。現在はYoga World. Tokyo代表として独立し、「日本のリーダーを変えて日本を元気にする」を目標に、組織内研修やセミナー、オフィスヨガを通じて「ビジネス×ヨガ」の普及に努めている。
ヨガ=ポーズは間違い
ヨガは日本でも一般的に知られるようになりましたが、多くの人が誤解しているようです。その最たるものが「ヨガ=ポーズ」という認識です。「ヨガは女性だけのもの」「ヨガはヨガマットの上でするもの」「体が柔らかくなければできないもの」「男性には恥ずかしいもの」などの考え方にも、大きな誤解があります。
このような誤解が生まれた理由は、インドでヨガを知ったアメリカ人がポーズの部分だけを美容に応用し、それが日本に伝わったからだと言われます。もちろん、ヨガは美容にも効果がありますが、もっと別の部分にも大きな効果を発揮することができます。
「ヨガとは、グループや個人の目的に合わせて処方する薬のようなもの」とイメージしていただくとわかりやすいでしょう。その内容も、ポーズだけではなく、呼吸法や瞑想(メディテーション)、あるいはそれらの組み合わせによって、行う人の目的に沿ったものとなります。
「ヨガとは何か」についてはさまざまな捉え方があると思いますが、私は「ポーズ・呼吸法・瞑想などを使ってその人がより良く生きるためのヒントを提供するもの」だと捉えています。「より良く生きる」という言葉は非常に範囲が広いのですが、現在は特にストレス解消に注目しています。
ご自身の気づきを提供する
ヨガが「ヒントを提供するもの」と言った理由は、気づくのはあくまでご自身だからです。何かを直す前提条件となるのは、ご自身の気づきなのです。
たとえばある日、子どもがリビングの電灯をつけっぱなしにして就寝してしまったとします。翌朝、お母さんが「電灯つけっぱなしだったわよ」と注意しても、子ども本人が「いや、私は絶対に消したはず」と思っていたら、その後も消灯に対する意識は変わりません。でも、「あぁ、確かに消し忘れちゃった」と気づけば、次から「きちんと消さなきゃ」と意識を変え、行動につながるきっかけになるはずです。
ヨガとは、こうしたご自身の気づきを提供することを非常に大事にしているのです。
ストレス解消も気づきから
ストレス解消についても同じことが言えます。ストレスを解消するためには、まずご自身にストレスがかかっていることを気づく必要があります。そうしなければ、ストレスを解消しようと考えないからです。
また、ストレスに気づくためには、ストレスとは何かを知ることが大切です。ストレス解消を目的としたセッションでは、私はその部分から入ります。簡単にご紹介しましょう。
ご存知の方も多いと思いますが、ストレスとは外部からの刺激によって歪みが生じることです。いわば、自分の身に危険が迫った時の防御反応だと言えます。危険が迫った時、私たちの体はストレスに対抗しようとして、無意識にあらゆる生理機能を使います。
たとえば、山でクマに遭ったとします。そうすると人の体は硬くなります。それは、筋肉を収縮させることで、どんなことにも反応できるように筋肉が準備をしているからです。また、筋肉をしっかりと使うために血糖値が上がる、血流を促すために血圧が上がる、心拍数も上がる、息が荒くなる、視野を広くするために瞳孔が開く、ほかの器官に血液を送るため胃腸の血流を抑えて消化不良になる、などの反応が生じます。これらはすべて、ストレスがかかった場合の生理現象です。
もちろん、クマがいなくなれば、体は正常な状態に戻ります。しかし、ストレスのかかる時間が長くなると、その状態の方が普通になってしまい、慢性的な体調不良につながりやすいのです。
ヨガがストレス解消に効果がある根拠
では、なぜヨガがストレス解消に効果があるのでしょうか? それは、ヨガの呼吸法・瞑想・ポーズをすることによって、ご自身が普通ではない状態の自分に気づくからです。
なぜ普通ではない状態に気づくかと言うと、普通の状態を体感できるからです。たとえば、体を緊張させることと弛緩させることの両方を体感すると、その違いを理解できます。それによって、自分がストレスで緊張している状態に気づきやすくなり、これはストレス状態をリセットすることになります。そしてもう一つ良いことが、身体がリラックスを覚えるので、自然にリラックス上手になれることです。
しかも、ヨガをすることによって、心拍数を下げたり、呼吸数を下げたりするなど、リラックスした状態になることができます。
あまり知られていないヨガをご紹介するなら、たとえばこんな例もあります。
ある人が、上司から理不尽なことを言われて、イライラと怒っているとします。そのままの状態を放置していると、ストレス状態が維持されてしまいます。そんな時には、呼吸法や瞑想を使います。
たとえば、ひとつの呼吸法では、椅子に座ったまま目を閉じて、手を体の横に下ろします。そして、目を閉じたまま、手のひらを天井に向けながら、両手を横から頭の上まで持ち上げます。両手の手のひらを合わせて、10秒間押し合います。10秒経ったら、息を吐きながら、手のひらを下に向けてゆっくりと下ろします。腕が体の横に来たら、二呼吸、肩の力を抜いてリラックスします。それを何回か繰り返します。そうすることで、呼吸が深くなり、呼吸数も下がります。
また、「なぜ自分はイライラしているのか」と考える瞑想も効果的です。そうすることで、ご自身が「怒りの原因」に気づくことができます。それは怒る心のマネジメント能力ですので、毎回怒りの原因を考えるクセをつければ、やがて無駄に怒らなくなり、ストレス耐性が高くなります。
もちろん、ヨガをする人の状態や目的によって、ほかにもさまざまな方法があります。ヨガを適切に行えば、個人差はあるものの、ほとんどの人が呼吸数を下げ、心拍数を下げられることがわかっています。
オフィスヨガでメンタル・スキルを養う
そうしたヨガの中でも、オフィスヨガとは、ビジネスパーソンの方を対象とした職場で行うヨガを指します。私たちYoga World. Tokyoでは、お客様のオフィスなどに出張してヨガを行っています。男性でも女性でも構いません。着替える必要もなく、ご自身のデスクや会議室の椅子に座ったまま、ヨガマットも不要で行うことが可能です。
これによって、忙しいみなさんの時間を短縮して、必要な健康やメンタルタフネスを手軽に手に入れることができます。
さらにヨガを‘使う’ことで、キャリアアップに必要なメンタルスキルを養うこともできます。アスリートがメンタルトレーニングを欠かさないように、ビジネスにおいてもメンタルトレーニングは欠かせないものです。
6月には日本マンパワーの公開コースとして、『ストレス社会を快活に乗り切る「メンタル・バランシング術」〜椅子に座ってできるヨガで「イライラしない」自分をつくる〜』というセミナー・イベントも行う予定です。ヨガは、マスターさえすればいつでもどこでも無料で行うことが可能ですので、ぜひ一度体験してみてください。
少しでも、みなさまが元気になるお手伝いができれば幸いです。
※編集部注:公開コースは終了いたしました。