学んだことを面接試験で100%発揮するために
[2018/04/27]
5月下旬から6月上旬にかけて、第8回キャリアコンサルタント試験が実施されます。受験を控えるみなさんにとっては、これまで以上に試験対策が本格化する時期かと思います。
そこで本記事では、実技の面接試験対策にスポットをあてます。なぜなら、これまでに受験した人から、
「自主勉強会でいろいろ言われて、何が正しいのかわからなくなった」
「何回か練習をしたけれど、どうも納得のいくロープレができない」
「頭ではわかっているつもりだけど、何がいけないんだろう?」
という声が多く聞かれたからです。
でも、みなさんは『キャリアコンサルタント養成講座』のスクーリングでみっちりと学習されてきたはずです。実は、その学びの中にこそ、面接試験で求められることが詰まっているのです。ただ、養成講座で学んだことをロールプレイングで使えていないだけなのかもしれません。
養成講座で学んだことを、面接試験で100%発揮するために——日本マンパワーで面接試験対策講座の講師を務める原博子さんに、その方法や考え方をうかがいました。「合格はしたけれど、まだ自信がなくて、資格を活用できていない」という資格保有者の人にも非常に参考になるお話です。ぜひご一読ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
2級キャリア・コンサルティング技能士
JCDA認定 ピアファシリテーターアドバイザー
日本キャリア開発協会 東関東支部 千葉地区役員 PF担当
社会保険労務士
原 博子 さん
ロールプレイングがうまくできない原因
私は、日本マンパワーの『面接基礎確認講座 ロールプレイング基本コース』と『模擬面接特訓講座 ロールプレイング強化コース』という試験対策講座で講師をしていますが、そこでの経験を踏まえて、望ましい面接試験対策について考えていることをお話ししたいと思います。受験を控えたみなさんが最短期間で合格するために、さらに資格取得後もすぐに役立てられるように、参考にしていただければ幸いです。
まず、事実として知っておいてほしいことがあります。それは、みなさんが『キャリアコンサルタント養成講座』のスクーリングに通い、すでにしっかりと基礎を学んでいるということです。面接試験における判定のポイントは、主訴・問題の把握、具体的展開、傾聴、口頭試問となりますが(日本キャリア開発協会の場合)、いずれも養成講座で学んだ内容です。もしかすると忘れてしまった部分もあるかもしれませんが、少なくともおぼろげには覚えているはずです。
でも、いざロールプレイングをすると、うまくできないケースが少なくありません。その原因はおそらく、養成講座で学んだことを実践でどのようにアウトプットすればいいのか、完全にはつながっていないのかもしれません。養成講座の限られた時間の中でのロールプレイングの練習では、学んだことが体に染み込むまでに至るのは難しい現状もあるのでしょう。
こうした状態を解消し、面接試験で力を発揮するためには、養成講座から実践でのアウトプットへと橋渡しをする学びが、非常に大切になってきます。
合格への近道はロールプレイング練習だけではない
橋渡しとして最適な学びは、『面接基礎確認講座 ロールプレイング基本コース』(以下、基本コース)だと私は考えています。養成講座での学びを改めて整理して、腹落ちした状態で試験に臨める講座であるという意味で、できるだけたくさんの方に受講していただきたいと思っています。
基本コースは9:30から17:30までです。面接試験に向けての準備を1日に集約していますが、そのプログラムは本当によくできています。主な内容をご紹介しましょう。
まず、試験の概要や会場などについて、オリエンテーションをします。最初に、自分たちが目指す目標を見定めるためです。
次に、養成講座で学んだ中から、面接試験で特に必要とされる重点について復習します。たとえば、「キャリアコンサルティングの目的」「自己概念」「信頼関係を築くための基本条件」「マイクロ技法」などです。養成講座の内容を思い出してもらえるように講師が問いかけますので、受講生のみなさんも、「あ、そうだ、そうだ」「思い出した」「確かに見たことある図だ」などと、自分が学んだことを思い出すそうです。
実は、すでに学んだことを思い出して自分にしっかりと定着させることは、試験対策としてとても大事なのです。復習をした上でロールプレイングに臨む受講生と、復習しないでロールプレイングに臨む受験生とを比べると、その差を感じずにはいられません。
最も顕著に表れるのは、「自分は何をするためにクライエントの前に座っているのか」という根本的な目的が明確か曖昧かという点です。
キャリアコンサルティングとは何か? 何をするためにクライエントの前に座っているのか? そのために、どのような姿勢で、どのように働きかければいいのか?
そうしたことがモヤモヤしていると、迷子のように、どうクライエントにかかわればいいのかがわからなくなってきます。そんな迷子の状態から脱却するためには、やはり復習が必要なのです。
また、実践でどのようにアウトプットすればいいのかという点については、理論と実践の橋渡しが欠かせません。そのため私は、理論をご説明する際も、キャリアコンサルティング事例を挙げながらお話しするようにしています。事例を理論と照らし合わせて理解することによって、養成講座で学んだことを「ロールプレイングで使える力」に変えてもらえればと思っています。
受験を控えるみなさんは、どうしても「ロールプレイングの練習」ばかりを重視しがちになってしまいますが、こうして基本から順を追って身につけていくことが、結局、合格への近道になるのではないかと思います。
判定ポイントに精通した講師のフィードバック
基本コースでは座学だけではなく、伝え返しのワーク、代表者2人によるロールプレイングと意見交換・解説、ロールプレイングの実践練習もします。
ロールプレイングの実践練習では、3人ずつのグループに分かれ、受講生全員がキャリアコンサルタント役2回、クライエント役2回、オブザーバー役2回をするプログラムとなります(参加者の人数により、クライエント役、オブザーバー役の回数は異なる場合もあります)。キャリアコンサルタント役以外の役割をすることにも学びは多くあります。たとえばクライエント役を全身全霊でやれば、自分の心の動き方が見えてきます。オブザーバー役も、その心の動きを見ることによって、「キャリアコンサルタントがこういうかかわりをすると、クライエントの心はこう動くんだ」ということが把握できます。
また、各グループには講師が1名ずつ付き、講師がフィードバックを行います。このフィードバックが非常に重要なポイントで、私たち講師は全員、試験の判定ポイントに沿ってフィードバックしています。
講師は全国に多くいますが、ほとんどが一定の養成研修や実践トレーニングを受け、オーディションに合格して選抜された講師等の経験のある方々です。くわえて、講師同士の勉強会や刷り合わせも行っています。それによって、試験の判定ポイントを深く理解していますし、多くのキャリアコンサルティング事例も身につけているので、受講生の特性に合ったフィードバックをすることが可能です。概念をロールプレイングの場面に当てはめて言葉で表現する経験も多々あるため、フィードバックの解説もぶれません。
たとえば、受講生の中には「自分のロールプレイングは何もかもダメだ」と思い込んでいる人もいますが、実はそんなことはなくて、誰にもいい点と悪い点があります。講師はその個々の特性を見極めた上で、課題に強弱をつけつつ、「なぜ望ましくないのか」「どうすればいいのか」を一緒に整理して、みなさんが受け入れられやすいように表現を工夫しながらフィードバックするようにしています。ですから、その後の対策が立てやすくなるのではないかと思います。
受験生の方は、クラスメイトなどと一緒に自主勉強会を行うこともあるかと思います。そのこと自体はもちろん素晴らしい取り組みです。ただ、フィードバックについては、判定ポイントの解釈や理解度が人によって異なりますので、ご注意いただければと思います。その点については、ぜひ面接対策講座の講師を信頼してください。
自分の中の何かが作用していることも
さらに基本コースのいい点は、養成講座のクラスメイトとは異なる人と出会い、同じ試験を目指して1日を過ごすことによって、グループの力が芽生えることです。
たとえばこんなことがありました。グループの中に1人、クライエントの自己概念に深く問いかけるような質問が苦手な人がいました。フィードバックの時にそのことを伝えると、「踏み込むのが怖い」「深く聞いてはいけないんじゃないか」というのです。そして、「人に踏み込めない自分がいるように思う」というのです。どうやら、人をあまり詮索してはいけないと教えられて育ってきたようです。その人にとっては、基本コースが自分と向かい合う時間となり、それによってロールプレイングでかかわりが浅くなりがちなご自身のスタイルに映し出された根本的な部分に気づくことができました。
このように、真剣にキャリアコンサルティングをしようとすると、自分に向き合わざるを得なくなります。キャリアコンサルティングには、キャリアコンサルタントの自己概念が大きく影響しているのです。
そして、このようなフィードバックのやりとりを傍で聴いている同グループ内の受講生にも、場の雰囲気が伝わります。「自分も素直に打ち明けてみよう」「自分の場合はどうだろう」と、自分に向き合う勇気につながっていく場合もあります。
そうした意味で、基本コースは自分と向かい合う1日でもあるといえるかもしれません。ロールプレイングがうまくいかない原因には、自分の中の何かが作用している場合もありますので、それを見つめる機会はとても大事だと思います。
実際、受講生のみなさんの表情を見ていると、朝と夕方では変化が見られます。復習やロールプレイング練習によって何かを得られたのかもしれませんが、もしかすると、グループのエネルギーによってモチベーションが得られるのかもしれません。
有資格者がクライエント役の強化コース
一方、『模擬面接特訓講座 ロールプレイング強化コース』の特徴は、クライエント役がキャリアコンサルタント有資格者であることです。クライエント役が受験生の場合は、どうしてもキャリアコンサルタント役にサービスしてしまって、質問されていないことまで話してしまうケースが多々あります。でも、強化コースでは、有資格者がクライエント役ですから、そんなことはありません。試験と同レベルのクライエント役だといえるでしょう。ですから、本番さながらの緊張感をもって、ロールプレイングに臨めるはずです。
また、口頭試問の実践練習も行います。口頭試問の答え方には、知らず知らずのうちに自分の考え方のクセや理解不足の部分が表れることがありますので、そうした点もチェックすることが可能です。
しかも、定員がわずか6名の受講生に対して、講師が2人付きます。徹底的な少人数制の中、各講師のフィードバックを1回ずつ、計2回受けられます。基本コースを受けた経験のある方は、強化コースも受けられると、さらなる成長が期待できると思います。
資格取得後にも即戦力として役立つ
最後に、ぜひお話ししておきたいことがあります。
みなさんは、なぜキャリアコンサルタントになろうと思われたのでしょうか?
養成講座を受講して、キャリアコンサルタントの資格を得ようとした動機が、一人ひとりにあるはずです。それを今一度思い起こしてみてください。
この資格を取って、どのような「ありたい自分」を実現していきたいのでしょうか?
試験前になると、どうしても合格することだけに目が行きがちです。でも、最終目標は違うのではないでしょうか。
今、面接試験の合格率が以前より高くなり、人によってはあまり苦労をせずに合格できる場合もあります。ただ、合格したからといって、必ずしもすぐにキャリアコンサルティングができるとは限りません。有資格者の中には、「合格したけれど自信がない」「資格を活用できていない」という人が少なからずいます。それは非常に残念なことだと思います。
その意味で、講師として私は、資格を取得してからも役立つような講座になるよう心掛けています。もちろん、試験に合格してもらうことが最優先ですが、合格後にも即戦力として使える力を身につけていただきたいのです。
その点で、特に基本コースは非常に価値のある講座だと思います。受講後のみなさんのお話を聴くと、「キャリアコンサルタントになりたいと思った原点に戻れた」という声が少なくありません。もちろん、養成講座で学んだことを実践で活かすための橋渡し講座としてアウトプットの仕方も学びますし、キャリアコンサルティングに臨む姿勢を確認し、自分と向き合う1日にもなります。
ある程度の費用と時間はかかりますが、けっして無駄にはならないはずです。できれば有資格者の人にも受講していただきたいと思うほど、魅力に溢れた講座です。担当講師のひとりとして、自信を持って皆さんに受講をお薦めしたいと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。