ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方vol.32

「自分らしいキャリア形成」は広い視野から

[2011/03/30]

キャリア_1104 自分らしいキャリア形成の方向性を見つけるためには、「Will−Can−Mustの視点から自分と仕事を捉えてみる」ことが大切だと、先月のキャリ達でご紹介しました。Willとは「自分のやりたいこと、好きなことや大切にしたいこと、興味や関心、価値観など」、Canとは「自分のできること、ヒューマンスキルや職務上身についた力などを含めて広い意味での能力」、Mustとは「やらなければならないこと、求められること、自分ではコントロールできない制約条件や環境など」でしたね。思い出していただけましたか?
 さらに、キャリア形成の方向性を見つけるためには、「Will−Can−Mustの全体に目を向けること」「Willの領域を広く捉えること」の2つが大きなヒントになるということもご説明しました。
 そこで今回は、「Willの領域を広く捉えるための具体的な方法」についてご紹介します。先月に引き続き、キャリア支援を日々推進する原恵子さんのお話です。ぜひご参考にしてください。

●今回お話をうかがったのは・・・
 原 恵子 さん
 〔主な資格〕CDA、産業カウンセラー、心理相談員、認定MBTIユーザー

Career Seed 代表
日本マンパワー「キャリアカウンセラー養成講座(通学コース)」講師
教育出版社、派遣会社を経て独立。現在は、キャリア支援に関わる実践と研究に取り組む。具体的には、キャリアカウンセラーなどキャリア支援職者に対する専門家教育やスキル向上支援、産業領域を中心としたキャリア開発やコミュニケーション分野の講師として活動。その一方で、筑波大学大学院(人間総合科学研究科)においてキャリア支援職者の職務特性や職業的発達についての研究を進めている。

 ※肩書き・経歴は取材当時のものです。

Willを広げる「ライフラインチャート」

キャリア_1104_2 キャリア形成を考える上でのWillとは、自分のやりたいこと、好きなこと、大切にしたいこと、興味や関心、価値観などを意味します。それは、業種や職種のような表面的内容ばかりをさすわけではありません。たとえば、「自由な雰囲気や職場を求める」「気の合う仲間と一緒に働く」「人に感謝される」「新しい経験ができる」「美しい環境を好む」「社会貢献への意識を高く持ち続ける」「仕事と生活のバランスを大切にする」など、プロセスにあたる点もWillに含まれます
 こうしたプロセスの部分にまで広げてWillを捉えることができると、キャリア形成の方向性を広げることができそうです。また、Willを広く捉えようとすればWillを深く掘り下げることにもつながり、人生における自分のパターンやキーワード、自分の価値観や基準などを改めて見つけることができるかもしれません。
 Willを広げて深堀りするための具体的方法はさまざまありますが、比較的簡単な方法として、「ライフラインチャート」をご紹介します。


自分の過去をていねいに思い起こす

 ライフラインチャートとは、縦軸に満足度(充実度)、横軸に過去の年齢(時間軸)をとった、グラフのような曲線を指します。キャリア開発の各種研修や、日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座(通学コース)』でも用いられるツールのひとつです。

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 具体的なワークとしては、たとえば次のように行います。
 まず、ライフラインチャートを描く前に、幼少期から現在に至る自分や周辺環境について、「どのような時期にどのような経験をしたか」「いつ何が起こったか」などを思い起こします。自分史を書くようなイメージで書き出していくといいでしょう。あとでライフラインチャートと年代を対応できるよう、左端を幼少期(過去)、右端を現在として、縦書きの年表のようにするとわかりやすいかもしれません。
 書き出す内容に決まったルールはありません。たとえば、主なできごと、印象に残った人や本でもいいですし、仕事や人間関係の成功体験・失敗体験、生活環境の変化、趣味やスポーツ・旅行のことでも構いません。書き方も自由です。幼少期から書き始めても、現在から書き始めてもいいので、思いつくままに書いてみましょう。少し時間がかかるかもしれませんが、ていねいに、パズルを埋めていくように自分を振り返ってみてください。


自分の満足度(充実感)を曲線でつなぐ

 自分史のようなものを書き上げられたら、いよいよライフラインチャートを描きます。横長の長方形に、左端が0歳時、右端が現在〜将来、上方は満足度(充実感)が高く、下方は満足度(充実感)が低いと設定してください。ここにフリーハンドで(上図のように)曲線を描いてみましょう。
 前もって書き出した自分史を見ながら、「この頃は仲間とのつながりが楽しくて活き活きしていたなあ」「仕事が面白くて没頭していたなあ」「肉体的には厳しかったけど笑顔で過ごしていたなあ」などとプラスイメージを抱ければ上方へ、「当時は楽しくなかったなあ」「あまり自分らしくなかったかも」などとマイナスイメージであれば下方へ。そんなふうにして描いてみると、いくつかの山と谷ができると思います。
 そうしたら次に、それぞれの山や谷の時期に何があったのか、簡単な説明文をフキダシ形式で書いてみましょう。

ライフラインチャート(モデル)


自分特有の共通点がヒントになる

 こうして描いたライフラインチャートの中に、みなさん特有のWillが隠れていそうです。ライフラインチャートを見ながら、以下の次の2つの問いかけについて考えてみてください。

 ①「山の時期」に共通することは何だろう?
  自分はなぜ、満足(充実感)を感じていたのだろう?
 ②「谷から山に上がる時」、何が起こっていたのだろう?
  何をきっかけにして、谷を脱する転機となったのだろう?

 この2つの方向で考えてみると、「自分なりのパターン」や「人生におけるキーワード」が見えてくるかもしれません。この、個々に特有なパターンやキーワードも、Willを広げて捉えるためのヒントになるでしょうし、自分の中を脈々と貫いているような根源的なWillは、今後の自分にとっての大切な基準や動機付けにつながるのではないでしょうか。

 なお、もうひとつわかりやすい方法として、カードといハッピーキャリア_1104_3うツールを使う方法もあります。たとえば、日本マンパワーが提供しているものの一つとしてバリュー(価値観)カードがありますが、15枚のカードを使い仕事やキャリアを通して「自分が何を得たいのか」あるいは「何を大切にしているのか」を、リラックスした楽しい雰囲気の中で改めて探索することができます。いわば、「自分の価値観や基準」に基づいて自己探求を促すためのツールで、このような方法もWillを広げたり深掘りすることにつながっていきます。機会があれば一度試してみてはいかがでしょうか。

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