組織が活性化されない背景に「人と人との関係性」がある
[2018/06/28]
今、組織全体に対して課題を感じている方はいらっしゃいますか? ご自身の立場や組織風土によってさまざまかと思いますが、たとえば次のように感じることはありませんか?
「社内のコミュニケーションがうまくいっていない」
「社員のつながりによる相乗効果が生まれない」
「職場全体に疲弊感が漂っていて、みんなが活き活きしていない」
「キャリアコンサルティングをしても、現場ではあまり効果が見られない」
「新しい事業やイノベーションが起きない」
これらの原因は、けっして単純なものではないと言われます。その組織に特有の“背景”が隠されているからです。そのため、たとえさまざまな手を尽くしても、期待通りの効果が現れにくいのだと思われます。
そこで参考になるのが、【人と人との関係性に変革をもたらすアプローチ】です。果たしてそれは、どのようなアプローチなのでしょうか?
組織を活性化させる人材を育成する『組織開発ファシリテーター養成講座』の事務局を務める、日本マンパワーの嶋美乃さんにお話をうかがいました。「組織を良くしたい」と考える人には必見の内容です。ぜひご参照いただき、新しい視点のヒントにしてください。
●今回お話を聞いたのは・・・
日本マンパワー
ソリューション企画部
嶋 美乃 さん
組織が抱えている課題
「組織を良くしたい」と考えている方には、組織の抱えている課題がよく見えるようです。特に私は、そうした企業のご担当者様と接する機会があるため、次のような課題感をよく耳にします。これらはすべて「組織の活性化」というキーワードで括れそうです。
「社内のコミュニケーションがうまくいっていないことが原因で、成果にも悪影響を及ぼしている」
「もっと社員同士のつながりが強まると、相乗効果が生まれていいものを生み出せるのに」
「日々やるべきことに追われ、職場全体に疲弊感が漂っていて、みんなが活き活きしていない」
「キャリアコンサルティングをして個々のモチベーションが高まったように感じても、現場に戻るとあまり効果が見られないようだ」
「現状のままだと縮小傾向に陥ってしまうことがわかっているのに、新しい事業やイノベーションが起きない」
そう話すみなさんには、組織を活性化させるための突破口を探している印象がうかがえます。「すでにさまざまな策を尽くしてきたけれど、現状を打開するような次の一手を見つけられない」という方も少なくありません。
組織が活性化されない要因
では、なぜ組織を活性化させるのは難しいのでしょうか? たとえば、「社内会議で新しいアイデアが生まれない」という課題について、次のような仮説が立てられます。
社内会議においては、往々にして、役職者や年長者が率先して発言をしないと、若手社員は発言しづらい雰囲気に包まれる。そうした雰囲気の会議が繰り返されれば、若手社員はますます発言しづらくなる。なぜ発言しづらいかというと、個々の社員に「間違ったことを言うべきではない」という意識が働いているからだ。そうした意識は、脈々と続いてきた組織風土の中で育まれてきた。そのため、急に「新しいアイデアを出してほしい」と言われても、間違えるのが怖くて発言できない。
もちろん、組織によって課題も風土も事情も異なりますので、この仮説があてはまるとは限りません。実は「間違っても許される」自由な社風なのに、個々人の思い込みによって発言を自粛している場合もあるでしょう。いずれにせよ、水面下でさまざまな要因が複雑に絡んでいるものと思われます。
だとすれば、こういう風に考えられるのではないでしょうか。
組織を活性化させるためには、目に見える現象だけではなく、その背後に隠れた要因を探す必要がある。
こうした視点を持てば、課題へのアプローチが従来と違ってくるのではないでしょうか。
人と人との関係性に変革をもたらす
課題へのアプローチを考える中で、ひとつの突破口となり得るのが、「人と人との関係性の変革」です。「人と人との関係性」に変革をもたらすためには、人と人との間で起こっていること(プロセス)に着目します。まさに、先ほど例に挙げた会議の背後に隠れた要因のようなことで、そのプロセスを変革することが突破口になり得ると考えられるのです。
日本マンパワーではそれをプログラム化して、組織を活性化させる人材を育成する『組織開発ファシリテーター養成講座』を提供しています。本講座は、「キャリアコンサルティングや研修などを通じて個人を支援するだけでなく、組織に対しても何らかの働きかけをする必要があるのではないか」という課題意識から生まれました。
ただ、もしかすると、講座名称の印象によって勘違いされるかもしれませんので、少し補足させていただきます。
まず、ここでいう「組織開発」とは、制度や仕組み、人材配置などのハード的側面だけを指すものではありません。人と人との関係性に変革をもたらすことで組織の効果性を高めることを意味しています。「組織の効果性」とは、働く人たち一人ひとりが活かされ、それによって組織が成長していくという意味です。
また、「ファシリテーター」とは、一般的に、会議やワークショップなどの議事進行役だと解釈されがちですが、本講座では全体の中で日常的に働きかける人という意味合いで使っています。限定された場所・時間だけ役割を担う人のことではなく、日常的に周囲へ働きかけている人をイメージしています。
ですから、「組織をこうしたい」という視点を持てる人であれば誰でも、本講座での学びを活かすことができると思います。そして、自分1人が変わるだけでも全体の場が変わる可能性は十分にあります。
たとえば、マネジャーやリーダーの機嫌によって職場の雰囲気が変わることはありませんか? もし、そうした1人の機嫌が悪いことによって周囲の口数が減るようであれば、1人が変わることによって社内のコミュニケーションが改善される可能性があります。あるいは、組織のあり方や方向性について意見やアドバイスをできる立場であれば、その人1人の言葉が組織に好影響を及ぼすかもしれません。
第一人者による理論に裏付けられた学び
組織を活性化させる人材を育成する『組織開発ファシリテーター養成講座』は、そうした広い視野・深い思考で理論に裏付けられた学びをする場です。
そのため、講師は各分野の第一人者が持ち回りで務めています。
ピーター・センゲ著『学習する組織—システム思考で未来を創造する』を翻訳した小田理一郎さん、オットー・シャーマー著『U理論—過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』を翻訳した中土井僚さん、認定プロセスワーカーでプロセス指向心理学の専門家・桑原香苗さん、組織の学習と成長を実現するホールシステム・アプローチに長けた伊場野和夫さん、弊社『キャリアコンサルタント養成講座』の開発や企業内のキャリア開発や組織開発に取り組む水野みちの5人で、全9回の講座と全4回のリフレクションを担当します。
プログラム構成を簡単にご紹介すると、次のようになります。
【第1回】 オリエンテーション
【第2・3回】組織の状況をシステムの視点から見立てる
学習する組織のフレームを用いて、組織のあり方の新たな視点を身につける
<リフレクション1>収穫と統合(内容の振り返りと現場への落とし込み)
【第4・5回】組織の状況をプロセスの視点で見立てる
学習する組織を実現するため、「関係性」について学ぶ
<リフレクション2>収穫と統合(内容の振り返りと現場への落とし込み)
【第6回】 変革シナリオをデザインする
誰が、何を、どう導くことが今の状況にあっているのか、
また、それは経営者を含むステークホルダーにどう映るのか。
<リフレクション3>収穫と統合(内容の振り返りと現場への落とし込み)
【第7・8回】組織に変化を起こす取り組み
組織に変化を起こすダイアローグを学ぶ
<リフレクション4>収穫と統合(内容の振り返りと現場への落とし込み)
【第9回】まとめ
システム思考のアプローチ
講座の詳しい内容については受講していただくほかありませんが、プログラムの中から「システムの視点」について、ほんの入り口だけご紹介します。
たとえばある職場に、相性の悪い上司と部下がいるとします。部下は、何かと報告が遅れがちです。そのため、部下が報告に行くたびに、上司は「お前はいつも報告が遅いな」とイライラします。そうすると部下は、イライラした上司に怒られるのが嫌で、報告することに気が重くなり、ますます報告が遅くなります。それに対して上司は、ますますイライラします。
さて、この2人は相手に対してどのように思っているのでしょうか。おそらく、次のような思いではないでしょうか。
◆上司「いったい、あいつはいつになったら早く報告できるようになるんだ。毎回、俺のことをイラつかせやがって。あいつさえ早く報告に来れば、俺がイライラしなくて済むのに」
◆部下「あの人、いつもイライラしていて嫌だな。報告が遅いのはわかっているけれど、それはあの人のせいなんだ。あの人がイライラしているから、報告に行きたくないんだよ」
もはや、どちらが原因でどちらが結果なのか、わからなくなくなっています。
このように、私たちは何か望ましくない現象が起きると、つい誰かのせいにしがちです。でも実は、「問題の片棒は自分が担いでいる」場合が少なくありません。さまざまな現象の要因を探ると、自分が当事者であることがほとんどなのです。組織の中では、そうした要因が絡み合って、相互に作用しています。
そう考えてみると、新しい視点が生まれるのではないでしょうか。これは、『学習する組織』の中核的内容となるシステム思考のアプローチにつながります。
「組織が良くなればいいな」と思う人なら誰でも
『組織開発ファシリテーター養成講座』は1年に1期で、今年8月から第8期がスタートします。
定員は20名。これまでの受講者の業種・職種はさまざまで、企業の経営者、マネジャー、人事教育担当者、組織戦略担当者、キャリアコンサルタント、経営コンサルタントなどがいます。
受講動機もさまざまですが、根幹には「組織を良くしたい」という想いがあるようです。ですから、受講生同士のつながりも自然に強いものになります。お互いの学びを相互にサポートし合う関係性は、組織の活性化を実践しているようでもあります。
実は私も、事務局を兼ねて受講させていただいた経験があります。その時はほとんど予備知識がなく、組織開発へのイメージは「組織にメスを入れて手術するようなもの」だと思っていました。しかし、実際はまったく違っていて、「システム思考やプロセス指向はとても人にやさしい考え方なんだ」とわかりました。個々人の良さを活かして能力を発揮してもらおうとする、新しくかつ温かい視点に私は惹かれました。
また、以前は「私なんかが言っても・・」といった諦めから、矢印を外に向けることが多くなりがちでしたが、受講後は、これまでとは違う視点で物事を捉えられることが増え、そうすると、人を好意的に捉えられることも増え、気持ちの持ちようが変わりました。気持ちの持ちようが変わったためか、何人もの人に「(いい意味で)イメージが変わったね」と言われることがあり、自分が何かしら良い影響を及ぼせているのだとしたら、とても嬉しいことだと感じています。
今年度の講座説明会は残り2回(7/5と7/12)になります。無料ですので、ぜひ一度、足を運んでみてください。時間の許す限り、この記事の続きもお話しさせていただきます。
「人はまだまだ可能性に満ちている」「組織はまだまだ可能性に満ちている」と感じていただけたら嬉しいです。
もちろん、説明会に参加したからといって、受講していただく必要はまったくありません。また、参加にあたって組織開発の予備知識がなくてもまったく問題ありません。「組織をよくしたい」という想いがあれば十分です。そうした方に、「人や組織の可能性に新しい視点がある」ことを知っていただけたら幸いです。