タスクと自分を分析すれば、仕事が楽になる
[2013/10/29]
みなさん、お忙しいことと存じます。
目の前には仕事が山積。何から手をつけていいか悩むほど。とりあえず、締切の迫っている仕事を最優先し、それが終わったら次に急ぎの仕事にとりかかる——そんな感じでしょうか? なんだかその繰り返しで1年が過ぎていくようですよね。
でも、こうした悪循環に陥ってしまうと、「いつかやらなきゃいけない重要な課題」がいつまでも残ってしまいます。実はその「重要な課題」を解決することが、仕事の効率や成果を上げることにつながるのですが・・。
「毎日忙しく働いているのに、いつまでも楽にならない。重要な課題にも手が回らない」という悪循環を打破するためには、タイムマネジメントが欠かせません。でもなかには、「タイムマネジメントをしているのだけれど、状況は改善しない」という人もいるかもしれませんね。
タイムマネジメントで大切なことは、タスクと自分の性格を分析することです。人気コンサルタント・黒須靖史さんは、その上で生産管理手法を使って戦略を立て、パフォーマンスをアップする方法を提案しています。今回はその秘訣をご紹介します。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社ステージアップ 代表取締役
中小企業診断士 ビジネスコーチ
黒須 靖史 さん
1987年和光大学経済学部を卒業後、ソフトハウス、SIベンダーにて情報システム企画・設計、業務改善等を担当。1996年に有限会社ステージアップを開業し、コンサルティング活動開始。専門分野は、人財育成、FC本部設立/加盟支援、情報システムの企画・導入支援・徹底活用、個人情報保護対策、ビジネスコーチング、ビジネス氣功と幅広い。著書に「コンサルティング・コーチング」(同友館 共著)、「社内コーチング導入マニュアル」(同友館 共著)、「ITプロフェッショナルのためのビジネススキル」(ソフトバンク)等がある。
「忙しい毎日」の構造
私は経営コンサルタントとして、クライアント企業の組織的パフォーマンスを高めるお手伝いをしています。そうした経験からお話しさせていただくと、企業でよく見られる問題として共通するのが、「仕事の優先順位がうまくつけられていない」ということです。優先順位をつけられないので、「早くやらなきゃいけなさそうなもの」から手をつけます。「早くやらなきゃいけないもの」ではなく、「いけなさそうなもの」です。
そうするとどのような現象が起きるでしょうか? 本当にやらなければならない大事なことが、手つかずのまま残ってしまうのです。
簡単な例では、ブラインドタッチが挙げられます。
ある職場に、ブラインドタッチのできない人がいるとします。必死に働いても、入力が遅いので仕事がどんどん溜まっていきます。その日にやり残した仕事があると、翌日はさらに忙しくなります。次の日はもっと仕事が溜まっています。そうして、早くやらなきゃいけなさそうな仕事に追われる毎日となります。
でも、この人が本当に早くやるべきことは、ブラインドタッチのマスターなのです。ブラインドタッチができれば、仕事の効率が上がることは間違いありません。そのことはおそらく、本人も周囲もわかっているはずです。
しかし、なぜブラインドタッチをマスターしようとしないのか? それは、「いつかやろう」と思っていながら、後回しになっているだけです。つまり、仕事の優先順位を間違っているのです。
タスクの特質を把握する
仕事の優先順位を的確につけるためには、まず、一つひとつの仕事の中身について、管理できる作業単位になるよう細かく分解します。その分解した各作業をタスクと言います。そうして、それぞれのタスクの特質を把握するのです。
そうすると、Aのタスクはジャッジ(判断)を要する、Bのタスクは1人でできるルーティンワーク、Cのタスクは他者とのコミュニケーションが求められる、Dのタスクはクリエイティブな発想が必要など、タスクごとの特質が見えてきます。
その特質を整理すれば、「誰ができるか」「いつまでにやるべきか」「どの順序でやると効率的か」などの対策を立てられます。なかには、「部下をスキルアップさせればできるようになる」というタスクもあるでしょう。
こうしたタスク単位で優先順位をつけることが、タイムマネジメントの基本となります。
タスク管理は、生産管理の現場で日常的に行われている手法です。材料の発注・搬入、治具・工具の調整、部品ごとの成形、組み立て、品質チェック、梱包・出荷などの工程を細かく分類して、処理能力を加味しつつ優先順位や作業員配置などを計画し、効率的な生産を実現しています。
これを個人にあてはめて最適のタイムマネジメントを行おうとするのが、私の提案する方法です。そのため、ガントチャートやPert図など、生産管理やプロジェクトマネジメントでよく使われる手法を用います。
「タスク管理はいつも頭の中でやっているよ」という人もいるでしょうが、見える化して組み立ててみることで、新しい発見ができるはずです。
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性格別のベストタイムマネジメント
もっとも、よりよいタイムマネジメントを実行するためには、タスク戦略に加えて自己の性格分析も欠かせません。なぜなら、性格が異なると、勘案すべき対策も変わってくるからです。自分に合ったやり方を見つけることも、タイムマネジメントの大切な要素なのです。
ごく簡単な性格分析をご紹介しましょう。
縦軸にスピード重視か慎重重視か、横軸にインプット志向かアウトプット志向かを示します。そうすると、図のように性格を4つのタイプに分類できます。
4タイプのうち、たとえばAの人は計画が雑な傾向が見られます。仕事が速く、どんどん成果物を提出しますが、やり直しが多いタイプの人です。ですから、やり直しがどこで生じるのかを把握して、それを見越した上でタイムマネジメントをすれば、さらにパフォーマンスが高くなります。
その対極の性格がCの人です。Cの人は勉強好きで、自分が吸収することを重視します。しかも慎重ですから、なかなか成果物が提出されません。周囲の人からは「何かずっと調べ物をしていて、何をしているかわからない人」に映っているかもしれません。こうした人は、提出締切のタイミングを区切っておくことが大切です。1週間あるいは1日のタイムスケジュールの中にアウトプット期限を設けることで、パフォーマンスを高めることができるでしょう。
公開コースでお伝えすること
私が企業へのコンサルティングを通じて開発したタイムマネジメント術は、まだ書籍などで公表していません。それを、日本マンパワーの公開コースで行う運びとなりました(※注:セミナーは終了致しました。)
公開コースでは、ガントチャートやPert図を使いながらワーク形式でタイムマネジメントの方法を学びます。ご自身の実際の業務について要素分解してタスク戦略を立てますので、すぐに実践でご活用いただけます。生産管理手法は初めての人でもすぐ使えるようになりますし、知っていると非常に役立つはずです。
もちろん、教材には「性格別ベストタイムマネジメント法診断チャート」も付いています。
また、自分だけではコントロールしにくく時間を要する会議やメール送受信などに関する案件についても、具体的な対策をお伝えさせていただきます。
公開コースは個人のタイムマネジメントを対象としていますが、その考え方を組織にあてはめれば、組織のパフォーマンスを高める手段としても活用できます。その点で、できれば社内複数の人が参加されると、より効果的かと存じます。
めざすは週30分だけのタスク戦略で仕事を楽にすること。ぜひご参考になさってください。