50歳、予期せぬ3つの出来事がきっかけで学びの道へ
[2017/09/28]
国家資格キャリアコンサルタント。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。いずれも、キャリア形成を支援する専門家であることを証明する資格です。
では、そのキャリア形成の支援の専門家たちは、果たしてどのようなキャリアを描いてきたのでしょうか? また、なぜ資格取得を目指し、その過程でどのような学びをしてきたのでしょうか? 今、どのような活動をしているのでしょうか?
ちょっと興味がわきますよね。
そこで、キャリア支援資格を取得している方にインタビューをしました。第1弾は、保険会社の営業職として活躍されている鈴木千春さんです。営業職ですから、キャリア支援自体を仕事としているわけではなさそうです。ところがご本人は、「仕事面でもプライベート面でも、いい意味で自分が変わった」と言います。
管理職の方や仕事でもやもやしている方は必見です。ぜひご覧ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
保険会社勤務
営業職
国家資格キャリアコンサルタント
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
鈴木 千春 さん(男性)
人事異動で気が抜け、悩む
私がキャリアの資格に興味を抱いたきっかけは3つあります。ちょうど50歳の時、まったく予期していなかった出来事が3つ重なったのです。
まず1つは、社内で人事異動があったことです。
それまで私は、28年間、保険の営業一筋で働いてきました。営業と言っても、自分で保険を販売するわけではありません。代理店契約をしている法人や個人の方と協力し、チームで力を合わせて販売に取り組んできました。必ずしも楽な仕事ばかりではありませんでしたが、みんなで同じ方向を目指して働くことは、とてもやりがいがありましたし、目標に到達すると大きな達成感を味わうことができました。自分なりに、得意なコミュニケーション能力を発揮して、最前線で働いているつもりでした。
異動を告げられた時は、営業部門の管理職をしていました。営業スタッフを束ねる立場です。
一方、新たな異動先は営業を後方で支援する部門です。キャンペーンの販売促進物を作成したり、広告を打ったり、販売用の提案システムを推奨したりする仕事です。傍目には似たような仕事だと思われるかもしれませんが、私にとっては以前とまったく性質の異なる仕事に感じられました。それまでチームで仕事をしていたのが、個人の仕事に変わる。外を飛び回っていたのが、デスクワークに変わる。代理店とかかわる機会もなくなる。異動してしばらくは気の抜けた状態になってしまいました。そして、悩みました。
「自分が今までやってきたことは何だったんだろう?」
「自分はいったい何ができるのだろう?」
ライフプラン研修で自分を振り返る
2つ目の予期せぬ出来事は、社内のライフプラン研修を受けたことです。50歳前後になると、社員全員が強制的に受けさせられるものです。
その研修の中で、講師から出されたクイズは今でも覚えています。
「20歳から60歳までの仕事の時間と、定年後60歳から80歳までの自分の時間は、どちらが長いと思いますか?」
40年間と20年間の比較ですから、当然、20歳から60歳までの方が長いに決まっている。そう思いましたが、実は違いました。仕事時間を週40時間×50週×40年、定年後を1日12時間×365日×20年で計算すると、定年後の時間の方が長いのです。
それまで「定年後は好きなことやって過ごせばいい」と思っていただけに、少なからず驚きました。同時に、「自分がやってきたことは、これからどうなるんだろう?」「営業って、別に資格でもないしなあ」「これから長く生きて、自分は何ができるのだろう?」など、不安な気持ちにもなりました。自分の将来について立ち止まって考えたのは、その時が初めてかもしれません。
ライフプラン研修では、中学生以降の自分を振り返って棚卸しして、「人生曲線」を描くというワークもしました。時間の流れを横軸に、自分の心の状態を縦軸にとって、曲線を描きます。そうすると、山あり谷ありの曲線になりました。それまで自分の人生は横一直線のイメージしか持っていなかったので、これにも驚きました。
その後、グループワークなどにも取り組み、研修後には自分の強みを確認することができました。結果、多少の不安は生じたものの、さまざまな気づきを得ることができて、心が整理されたような気がします。異動で落ち込んでいた気持ちも、少し楽になりました。
妻が持っている資格を勧められる
3つ目の予期せぬ出来事は、妻の言葉です。
研修に感動した私は、妻に「すごくいい研修だったよ」と、内容を説明しました。そうしたら妻が言うのです。
「それって私が持っているCDA資格で学んだ内容と同じだ!」
確かに、妻がキャリアに関する資格を取ったことは知っていました。でも、それが研修の内容と同じようなものだとは想像もつきませんでした。
「そうなんだぁ。知らなかった。あの研修を会社のみんなが受けられるといいなあ」
私が異動で悩んでいたのと同じように、社内にも、希望する部署で働けずにモチベーションが下がっている社員、何かをあきらめながら仕事をしている社員など、辛い思いの社員がいるはずです。だから、会社の業務をよく知っている自分が講師役になって、「あの研修を会社のみんなに受けてもらえればいいなあ」と思ったのです。
その時の妻の返事はこうでした。
「あなたなら、きっとできると思うわ。資格取ってみたら」
その言葉を聞いたら、居ても立ってもいられなくなりました。そしてすぐに、妻も学んだ日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)に申し込み、第46回CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)試験を目指して学習を始めました。
養成講座での学び、自主勉強会での学び
『キャリアカウンセラー養成講座』の通学コースでは、インストラクターの先生やクラスの仲間から多くの刺激を受けました。特に、先生によるキャリアカウンセリングの実技を目の当たりにした時は、相手に寄り添ってすごく傾聴されている姿が衝撃的で、「この人、すごい! こうなりたい」と強く思いました。
また、人づてに教えてもらった自主勉強会にも参加しました。それは、CDAを目指す受験生がロールプレイングの試験対策をするため、有資格者も協力して一緒に学習をする集まりです。私が参加した自主勉強会には、受験生と有資格者とを合わせて100人近くのメンバーがいました。そこでもさまざまな気づきを得ることができました。
年齢的に知識を記憶するのはたいへんな面もありましたが、クラスの仲間と情報交換会をするなどして、なんとか1回の受験で合格することができました。
ただ実は、資格を取得してからの学びの方が大きいように思います。そして、その学びは、今でも別の形で続いています。
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★3つの予期せぬ出来事がきっかけでCDA資格を得た鈴木千春さん。資格に直結する仕事をしているわけではありませんが、今でも学び続けていると言います。そして、以前は考えもしなかった意外な場で活躍をなさっています。その内容は・・来月の当コーナーでご紹介いたします。
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