ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 vol.19

人の心はどう動くのか?〜企業内で活用するための学び

[2017/01/30]

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  CDA(キャリアカウンセラー)の活躍のフィールドは多岐にわたります。たとえば主なものだけでも、企業の人事部門、人材ビジネス業界、行政機関、学校、独立開業などが挙げられます。
 なぜ、これほどまでに多岐にわたるのでしょうか。それはおそらく、社会に必要とされているからではないでしょうか。社会に必要とされているからこそ、キャリアコンサルタントが国家資格化され、幅広い業種・職種の方々が資格取得を目指すのでしょう。
  また、資格活用のあり方が多様であることも、活躍フィールドが広い理由のひとつだと言えます。
  本記事でご紹介する齋藤朋子さんは、2007年に建設会社へ転職。2013年に『キャリアカウンセラー養成講座』(『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)を受講しました。入社当時は採用業務が中心だったにもかかわらず、その後はさまざまな施策を実現。現在は「人」に関わることすべてをワンストップで行い、社員の人生全体を支援するヒューマンリソースセンターの長として活躍しています。
  活躍の理由は必ずしも資格だけによるものではないでしょう。ただ、「養成講座で学んだことはさまざまな場面で活かせている」と言います。それに至る齋藤さんの足跡をご参照ください。

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社 松下産業(総合建設会社)
 ヒューマンリソースセンター長
 国家資格キャリアコンサルタント
 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
 特定社会保険労務士
 AFP(2級ファイナンシャルプランナー)
 宅地建物取引士
 齋藤 朋子 さん


無意識のうちに取引先から信頼を失う経験

  私は新卒で総合商社に入社しました。そこで人と人との関係を強く意識したのは、営業部門に異動した時です。入社6年目のことでした。社会人になって初めて、取引先との交渉を求められました。
  新しい担当業務は、鉄鋼メーカーと部品メーカー、部品メーカーと自動車メーカーとをつなぐ、鋼管流通の営業事務でした。在庫を管理し、必要量の材料や部品を指定工場に納入してもらうため、電話で依頼するような仕事です。
  そんなある時、ある部品メーカーの工場長さんにいつものように電話依頼した際「あんたの言うことなんか聞かないよ!」と言われたのです。思い当たる原因はありませんでした。無意識のうちに、工場長さんから信頼を失ってしまったようです。
 そこで私は必死に考えました。
  「どうしたらこの人と信頼関係を取り戻せるのだろう?」
 ようやく思い立ったのが、在庫管理状況の明示でした。「もしかしたら、担当者には伝えていても工場長さんに在庫管理状況が伝わっていなかったのが原因かもしれない」と考えたからです。そうして私は、在庫数量を明記した表を作成し、ファックスで伝えるようにしました。
  そうしたところ、工場長さんが私を信頼してくれるようになったのが手に取るようにわかりました。その後は少し無理なお願いも、「あなただから」と引き受けてくれるようになりました。


人の心の動かし方に強い関心

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  この一件で、「人との信頼関係は無意識に壊れることがあると同時に、相手が何を求めているかを熟慮して行動に移せば信頼関係を取り戻すことができる」ということを身をもって実感しました。
  また、人の心の動かし方について強い関心を持つようになりました。
 人の心を動かすという意味では、こんなこともありました。
  私が仕事で大きなミスをした日、直属の上司が電車で一緒に帰ってくれたのです。口下手な上司でしたので、何の会話もないまま電車の吊り革につかまって帰りました。でも、私にとっては上司の温かい気持ちが伝わってくるように感じました。「言葉を交わしていないのに、どうして励まされたように感じるのだろう?」と、不思議に思ったのを覚えています。


人はルールや仕組みだけでは動かない

  その後、結婚や出産・子育て、その他の理由で、いくつかの会社を転々としました。時系列に言えば、新卒入社の総合商社の後、派遣社員として別の総合商社に、出産後は専業主婦、正社員として士業事務所、ベンチャー企業と移っていきました。また、その間に社会保険労務士の資格も取得しました。
  現在の総合建設業・松下産業に入社したのは2007年です。社長面接での受け応えをよく覚えています。
 「齋藤さんはなぜ人事の仕事をやりたいのですか?」
 「はい。人の心を動かすのは難しいけれど面白いと感じています。例えば、人事がどんな立派な制度を作ったとしても、その運用を社員がきちんと納得し、活用してくれないとうまくいかない。そんな経験をしてきたからです」

  転職を繰り返す中でさまざまな人に接して学んだことで、そうした考えに至ったのでしょう。「ルールや仕組みだけでは人は動かない。きちんと運用するためには、こちらから働きかけなければいけない」という考えは、今でも大事にしています。

                                             2つの理由からキャリアカウンセラー養成講座を受講

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  『キャリアカウンセラー養成講座』を受講しようと思ったきっかけは2つあります。
  ひとつは、社員のモチベーションアップの必要性を感じていたからです。かつてベンチャー企業で働いている際、会社の状況や上司の態度などが原因で、私のモチベーションは下がっていきました。また、ほかの人のケースを見聞きすると、異なるさまざまな原因でモチベーションが上がったり下がったりすることがわかりました。
  そこで、「モチベーションはどうすれば上がるのだろうか?」と社外の研修・セミナーを受けていたところ、日本マンパワーの営業担当者から『キャリアカウンセラー養成講座』を勧められたのです。
  最初は通信講座だけを受講しました。本気で資格を取るつもりはありませんでしたから。ところが、テキストを読んでいくつかの理論に触れていくうちに、「私の求めていた答えはここにあるのでは!」と光が当たったのです。

  もうひとつのきっかけは、私が採用に関わった1人の中途入社社員が早期退職したことです。彼は辞める直前に私にこう言いました。
   「悩んでいる時に齋藤さんに話を聴いてほしかった」
  実は、彼は他の業界を望んでいたのですが、求職者目線の採用姿勢に魅かれ、つい内定を承諾してしまったとのことです。冷静に考えたらこの業界を希望していなかったという自身の気持ちに入社直後から気づいたようでした。それを私に相談しようとしたのですが、今、振り返るに、私は、(多分)彼の気持ちに気づいていたのに気づかぬふりをしたのです。なぜなら、人と1対1で対面して話をすることに恐怖感があり、相談を受けてしまったら答えを提示しなくてはならないという責任が生じると思ったからです。
 でも私は本来、採用するだけでなく、職場定着するまでの責任と義務を果たさなければなりません。それができなかったことを彼に気づかされ、ものすごく大きなショックを受けました。そのため、面談や相談に大切な傾聴を学べる『キャリアカウンセラー養成講座』通学コースを受講したのです。


通学コースを受講して良かったこと

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  通学コースを受講して良かったと思うことはたくさんあります。
  まず、社員との面談・相談対応が怖くなくなったことです。CDAの考え方のひとつに「答えはクライエント(相談者)の中にある」というものがあります。退職した彼の場合も、私が答えを出す必要はなかったのです。傾聴の実践も学ぶことができました。以降、自ら積極的に面談や相談の対応をするようになりました。
  また、それまで多くの人材開発に関する社外研修・セミナーに参加していましたが、今ひとつ腑に落ちない点が拭えませんでした。それは、私に基礎知識がなかったからです。でも、通学コースで学んだことで基礎知識が身につき、関連研修・セミナーの内容をより理解できるようになりました。
 クラスメイトとの出会いも貴重な財産です。通学コースのクラスメイトは私を含めて24人。老若男女、さまざまな仕事・立場の人の生き方や考え方に触れることができました。特に、カウンセリングを実践演習するロールプレイングでは、実際の悩みをクラスメイトに打ち明けます。そうして自己開示することによって、人と人との距離感がぐんと縮まり、あっという間に素晴らしい仲間ができました。
  また、定年退職時期を迎えて再就職しようとしている人、50歳を超えても新しい世界を学ぼうとする意欲のある人、セカンドライフの選択を考えている人などのお話を聴けたことは、自分の意識改革にもなりました。人を支援する部門の担当者として、「自社の社員にも将来が充実するような選択肢をもたせられたら」と、非常に参考になりました。

 CDAの資格試験は、クラスメイトと一緒に学習するなどして、無事合格することができました。

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★齋藤朋子さんは、会社の考え方とも相まって、CDA資格を学習する前後において人事部門の担当者として、その後「人」に関わることをワンストップで支援するヒューマンリソースセンターの長として、さまざまな職場環境改善や福利厚生充実に取り組みます。その内容については来月の当コーナーでご紹介いたします。
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