ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 vol.18

「誰かの役に立ちたい」をベースにさらなる葛藤

[2016/12/20]

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入社3年目ながらOA機器やIT関連の商社でトップ営業となるも、ある飲み会がきっかけで自分の人生に疑問を持ち、退職を決意。ところが1年半も定職に就かず、生活が立ち行かなくなって、人材会社に入社。未経験ながらも一度に100人以上の未就業者支援に取り組み、大学生の就職を助ける技法を編み出す。さらには、さまざまな人と会うことで、その技法が書籍として出版されることになったが・・。

 前回の同シリーズでご紹介した、高田裕明さんの30歳までの道のりです。今回はその後編です。
 高田さんは出版が決まった後、思いもよらぬ行動に出ます。そして現在、大学での講師やカウンセラー、自ら主宰する就職活動塾の塾頭として活躍するに至りました。高田さんの興味深いCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格活用をご一読ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 就職請負人
 高田 裕明 さん

 ◇就活支援私塾「高田塾」塾頭
 ◇私立大学 非常勤講師
 ◇CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)


個人事業主の就職請負人としてスタート

 より多くの学生が苦労しないようにと、自ら編み出した3Eステップ法を使った就職ノウハウ本『全員内定!』(サンマーク出版)を出版できることになりました。出版できたのは人とのご縁のおかげです。私は、この書籍を足掛かりに、個人事業主の就職請負人として大学生向け講演・セミナーや就職支援などの活動へと展開しようと考えました。
 ただ、その前にひとつだけ気がかりがありました。それは、以前に友人と約束した「世界一周」です。
 「おそらく、このタイミングで行かないと、一生行けないだろう」
 そう思い、本を書き上げてから書店に並ぶ間の期間を利用して、世界一周の旅に出かけました。訪問先はフィリピン、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、マレーシア、インドネシア、トルコ、ギリシャ、イタリア、オーストリア、チェコ、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、スペイン、アメリカの18ヵ国です。観光地にはあまり行きませんでした。人と会うことを目的としていたからです。フィリピンで語学を勉強した後は、各地に在住している知人・友人と会ってさまざまな話をしました。人との出会いによって生きてきた、私らしい旅だったと思います。
 帰国してからは、3ヵ月ほど本のPRなどで忙しく各地を回りました。「人が集まるところに行けば何かが得られるだろう」との考えからです。3ヵ月で200〜300人と名刺交換しました。あとは本が売れ、大学などから講演・セミナーや就職支援などの依頼を待つだけです。


学校で就職支援の講師とカウンセラー

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 ところが、社会はそれほど甘くありません。著書を出版したからと言って、急に仕事が増えることはありませんでした。いくつかの講師依頼はありましたが、チャンスを生かし切れず、いずれも単発に終わりました。前職時の知人からも仕事をいただきましたが、生業とするには至りませんでした。
 そんな先が見通せない状況から脱することができたのは、キャリアフラッグという会社の代表に会ったことがきっかけです。知人が紹介してくれた人から紹介していただいた人です。つまり、知人の紹介の紹介です。初対面の私の話を熱心に聴いてくれた彼は、「一緒に仕事する?」と言ってくださいました。
 キャリアフラッグは、学校を対象に、キャリアデザインの授業や講座の運営、学生向けカウンセリング、応募書類添削などの支援をするとともに、企業を対象とした採用支援、教育・研修支援などを事業領域としています。私はその登録スタッフとして、大学での就職支援の講師やカウンセラーの仕事を得ることができました。
 この仕事は今でも活動の柱として続いていますので、本当にありがたい出会いだったと思います。


『キャリアカウンセラー養成講座』を受講

 キャリアフラッグの代表者にもうひとつ感謝しているのは、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格取得を勧めてくれたことです。
 当時私は「資格なんて要らない」と思っていました。でも、親身になって勧めてくれましたし、カウンセラーとして能力を高める必要性も感じていましたので、「挑戦してみよう」と思うに至りました。そうして受講したのが、日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)です。
 養成講座の授業ではさまざまなキャリアカウンセリング理論を学ぶことができ、勉強になりました。それまでは実践でしか学んでいなかっただけに、それを裏付ける科学的な考え方は、私にとって非常に新鮮でした。
 また、何よりも勉強になったのは、クラスや自主勉強会などで他の受験生と出会ったことです。受験生は老若男女さまざま。60歳を超えても、5回目・6回目のチャレンジをしている人とも出会いました。社会の先輩たちが何度落ちても諦めず、自分と真剣に向き合って努力している姿を目の当たりにして、大きな感動と衝撃を受けました。
 同時に、資格もないのに現場で働くことができている自分の環境に感謝し、「今まで以上にがんばろう」と思わせてくれました。本当に勉強させていただきました。


                                               大学でキャリアデザインの授業を担当

画像エラー CDAに合格してからは、仕事も着実に増え、私立大学の非常勤講師になることができました。現在は、情報工学科の1・2年生を対象に、年間を通してキャリアデザインの授業を受け持っています。1年生は必修科目で約100人を2コマ、2年生は選択科目で70〜80人を1コマです。
 授業の内容は、コミュニケーション力を高めようとするものです。1・2年生ですから、まだ就職活動に直結する内容ではありません。自分のことを発信する力を養いつつ、自分の意見を持てるように、グループディスカッションや発表などのワークを多く取り入れています。

 もう1つの活動の柱は、就職活動塾「高田塾」です。10人程度の大学生を対象に、1回2時間、毎週1回のカリキュラムで、就職活動の支援をしています。自己PRの作成から面接トレーニングまで、個々の特性に合わせてサポートしています。小ぢんまりと行っていますが、毎年全員が内定を獲得しています。


もっと自分を知るために葛藤中

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 こうして私は、さまざまな人に助けてもらいながら、人を支援する仕事を選んできました。今後も「誰かの役に立ちたい」という思いをベースに、かかわる人たちが望ましい人生を歩めるようにサポートしていければと思っています。
 ただ、自分はまだ力不足であることもわかっています。
 たとえば、学生支援の際に「元気にしよう」と陽の部分にばかりフォーカスしてアドバイスすると、陰の部分にいい面を持っている子にマイナスの影響を与えることもあります。「陰でもいいんだよ」と言ってあげられるようになるべきです。
 しかし私は、陽の方にばかりフォーカスし、陰をないがしろにして生きてきました。ですから、より的確な支援をできるようになるためには、私自身の陰の部分を探し、把握しなければいけないと思っています。もっと自分のことを知る必要があるのです。
 また、「高田君、何やりたいの?」と20代の時に聞かれた質問に、一言で答えられるような人生のテーマが未だに決まっていません。それも見つけたいと思います。自分がどういう人間で、自分ができることは何なのか? 自分のあり方はどのようなものなのか? それを探し、自分の言葉で語れるように葛藤している最中です。

 何も考えずに生きてきた私がこんなことを考えるようになったのは、CDA仲間をはじめとするさまざまな人と出会ったことと、対人支援の道を選んだことによると思います。現在の役割をしっかりと全うしつつ、もっと幅の広い器の大きい人間になれるよう、精進していくつもりです。

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