第1回試験の合格をつかんだ学習法をインタビュー
[2017/01/30]
昨年4月に新制度が始まった国家資格キャリアコンサルタント試験も、すでに2回の試験を終え、全体傾向が見えつつあります。第3回試験は、2月19日に学科・実技論述試験、2月25日〜3月5日に実技面接試験が実施されます。受験を控えるみなさんにとっては、本格的にエンジンがかかっている頃ではないでしょうか。
そうした受験生のみなさん、あるいはこれからキャリアコンサルタント試験を目指すみなさんに向けて、先輩の合格体験インタビューをお届けいたします。
お話ししていただいたのは、第1回キャリアコンサルタント試験に合格した伊藤宏昭さんです。学習の工夫などを詳しくおうかがいしましたので、ぜひご参照ください。きっとヒントになるはずです。
●今回お話を聞いたのは・・・
食品メーカー
営業職
伊藤 宏昭 さん
国家資格キャリアコンサルタント
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
75歳まで働くために自分で自分を活かす
私がキャリアコンサルタント(当時はキャリアカウンセラー)の学習を始めたのは、勤務先のキャリアデザインセミナーを受講したのがきっかけです。50歳の社員に義務づけられたセミナーで、将来のキャリアについて考える内容でした。
ちょうどその頃、私は「75歳まで働けるように、これまで培ってきた営業スキルだけではなく、何か別のスキルも身につけたい」「自分が必要だと思われるためには、自分で自分を活かすしかない」と考えていたため、セミナー内容に興味を惹かれました。そこで、セミナーのファシリテーターを務めていた人事担当者に尋ねたのです。
「今日のような話はどこで勉強するといいのでしょうか?」
そうしたら、次のような答えが返ってきました。
「CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)というキャリアカウンセリングの資格があるんです。養成講座があるので、それを受講してみるのはひとつの手ですね」
キャリアカウンセリングの知識はまったくありませんでしたが、コーチングの資格は持っていました。その違いにも関心があり、日本マンパワー『キャリアカウンセラー養成講座』(『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)の通信講座だけを受講しました。するとさらに興味が増し、通学コースの受講も申し込みました。第48回埼玉クラスです。
信号待ちの時も「まとめノート」で復習
当時は国家資格化前で、CDA試験は1次試験(学科)と2次試験(実技)に分かれ、1次試験に合格した人だけが2次試験に進むことができました。ですから、まずは1次試験に合格する必要があります。
ただ、私は営業職のため、平日の夜に勉強時間を設けるのは難しい状況でした。そこで、出勤前の早朝に自宅学習することにしました。通学コースのスクーリングを終えてから試験日までの1カ月半は、毎朝4時に起床、平日でも1日に最低2時間は勉強しました。休日は平均6時間くらい勉強しました。
学習方法で工夫したのは、「まとめノート」を作成したことです。試験に出題されそうな要点や、問題演習で間違えたところを小さなリングノートにまとめ、スーツのポケットに入れて持ち歩きました。そうして、電車の中や食事の合間、信号待ちをしている時などに覚えるようにしたのです。
ほかに、日本マンパワーのWeb版答案練習やサブテキストなどにも取り組みました。特にWeb版答案練習では「全問約400問を3回繰り返して解く」「間違えた問題についてテキストに戻って確認する」ということを心掛けました。
それが実って、初回受験で1次試験に合格することができました。
クラスメイトと自主練習会
現制度の実技面接試験にあたる2次試験、ロールプレイングには苦労しました。当時のCDA2次試験の合格率は今より厳しく40%ほど。それもあって、結果的に合格までに3回の受験を要しました。
初回の第48回試験に向けては、初めてということもあり、日本マンパワーの『エクササイズコース』(現在の『ロールプレイング強化コース』の前身)などのオプション実習講座を計3回受講しました。ほかに、養成講座のクラスメイトと自主練習会を3回実施しました。
自主練習会の開催にあたっては、何人もの有資格者に協力していただきました。授業をサポートしてくれるスタッフの方に有資格者を紹介してもらったのです。クラスメイトとは日頃からSNSなどで情報交換していましたので、スムーズに開催することができました。
ただ、それだけ練習しても、本試験では気負いと極度の緊張もあり、まったく手ごたえがなく終わりました。練習の時から自覚していましたが、次の質問ばかり考えていて、クライエントの気持ちに寄り添って傾聴することができていなかったのだと思います。予想通り不合格となりました。
録音・逐語録で自分の弱点を把握
次の試験に向けては、「自分の強み・弱みをイチから見直してやり直そう」と、『エクササイズコース』に2回、自主練習会に3回取り組みました。自分のロールプレイングを録音して逐語録も作成(テキスト化)しました。そうすれば、自分の弱点がよくわかるからです。
その頃の私の最大の弱点は、クライエントが発する感情のキーワードを拾うことができないことでした。当然、自己探索に向けての気づきを促すような問いかけにも至りません。
しかも、試験直前のある勉強会で同じ受験生から腑に落ちない指摘をされたことで、自分が目指すべき方向性も見失ってしまいました。『エクササイズコース』や有資格者に協力いただいた自主練習会では的確なアドバイスをいただいていただけに、少し悔やまれます。
とはいえ、それが私の実力だったのでしょう。本試験ではクライエント役の人があまり話をしてくれず、焦って質問してもかみ合わない。頭が真っ白になってパニックに近い状態になり、不合格でした。
「5年あればいつかは受かるだろう」
3回目のチャレンジは、国家資格として第1回目の試験です。試験制度が大きく変わりました。
受験生の中には、試験制度の変化に戸惑う人がいたようですが、私は非常に気が楽になりました。なぜなら、受験資格の有効期限が2年間から5年間に伸びたからです。「5年あればいつかは受かるだろう」と開き直ることができました。
新しく導入された実技論述試験にあたっては、養成講座のインストラクターが教えてくれたことを自分なりに咀嚼し、テキストの理論編をもう一度読み返すなどしました。
また、キャリアコンサルティング技能検定2級の論述試験も参考までに解いてみました。その練習を通して、「論述試験で高得点を取れば面接試験の点数が多少低くても合格できるだろう」と考えることができるようになり、ますます気が楽になりました。
実際の本試験では技能検定とは傾向の異なる予想外の出題内容でしたが、前半15分、後半25分と時間配分を決めたことが功を奏し、残り5分で見直す余裕もありました。結果的に高得点をとることができました。
この時間は目の前にいるクライエントのために
面接試験に向けては、前2回と同様に『ロールプレイング強化コース』と練習会に取り組みました。ここで大きく変わったのは、ロールプレイングに対する姿勢です。それまで私は考え方が間違っていました。以前は「ロールプレイングは試験のため」だと思っていたのですが、「ロールプレイングはクライエントのため」だとわかったのです。「ロールプレイングの時間は、目の前にいるクライエントのために使うべき。試験だと思っていたら受からない」ということが腑に落ちました。
それに気づくことができたのは、オプション講座のインストラクターや有資格者から「目の前に困った人がいたら、支えてあげたいと思うのでは? もし子どもが泣いていたら、『どうしたの?』って聞くのでは?」などと温かくアドバイスしていただいたからです。
そう考えられるようになってから、周囲から「前とは打って変わって、ずいぶん良くなったね」などと褒めてもらえるようになりました。コツコツと学んでいれば合格に近づいていくのだと思います。
ある程度自信を持って臨んだ本試験当日。会場の控室では何度も腹式呼吸を繰り返しました。「腹式呼吸をすれば緊張が和らぐ」と日本マンパワーのインストラクターに教えていただいたからです。
いよいよ自分の番になって試験室へ。そうしたら、クライエント役の人が見覚えある顔。なんと、前回の試験でパニック状態になった時と同一人物だったのです。すごく驚きましたが、「15分間をこの人のために使うことが大切」と考えて冷静に対応することができました。しっかりと自己探索の促しまででき、無事合格することができました。
諦めなければ失敗に終わることはない
今振り返ってみると、将来の自分のキャリアを真剣に見つめて、諦めることなく、自分を成長させるために謙虚さをもって学び続けてきたことが、合格に結びついたのだと思います。
もっとも、学習はこれで終わりではありません。むしろ、これからさらに勉強していきたいと考えています。そのため、心理学やカウンセリングの書籍も多く読むようになりました。
今後は、まず勤務先でキャリアに関する悩みや不安を抱いている社員の支援ができるように自己研鑽し、いずれは若年層の就業やキャリアデザインの支援ができればいいなあと考えています。
最後になりますが、これから受験をする人には、諦めないことが最も大切だと思います。諦めなければ失敗に終わることはないのです。私はある先輩から次のように言われました。
「自分が合格する状態になれば合格する」
確かにその通りなのだろうと思います。ぜひ頑張ってください。