感情を上手に使えば、自分も周囲もハッピーに
[2014/01/30]
「どうしてそうなの? 腹立つわぁ」
相手の行動に対して、怒りがわいてくることってありますよね? どうして相手は、人を怒らせるようなことをするのでしょうか?
人の行動の裏側には、何らかの感情があると言われます。ですから、人を怒らせるような行動をとった相手にも、きっと何らかの感情が働いているはずです。
同じことを自分にあてはめたら・・。みなさんの行動の裏側にも、きっと何らかの感情が働いています。以前に失敗した言動も成功した言動も、感情が元になっているものと思われます。
「だったら、感情をうまく使えばいいんじゃない?」
勘のいい人ならそう思うでしょう。その通りです。ビジネスで成功を収める人は、感情を賢く使っていると言われます。特に人間関係がスムーズにいくかどうかは、感情の使い方が大きく影響するようです。
感情の使い方という点で、注目されているのがEQです。EQは「こころの知能指数」と呼ばれ、感情という視点で能力を測定する指数です。ただ、IQと違って、誰でもトレーニングすればEQを高められ、対人関係力を高められると言われます。
そこで本記事では、EQにスポットを当てました。お話をおうかがいしたのは、EQトレーナーとして研修講師や感情ダイアログカフェのファシリテーターなどで活躍する岸川祐子さんです。ぜひご一読ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
岸川 祐子 さん
学習塾にて遠隔教育事業開発に従事した後、eラーニングのコンテンツベンダーにて企業研修用eラーニング教材の開発・エディター業務を経験。2003年より総合電機メーカーにて、論理思考力トレーニングの社内オリジナルプログラムの開発、およびインストラクションを担当。2007年EQグローバルアライアンス公認プロファイラー、およびEQトレーナー資格を取得。2009年フリーの研修講師として独立し、現在に至る。対象職位は新入社員から管理職まで幅広く、トレーニング実績(対象者数)は延べ6,000人を超す。専門分野は、ビジネスを円滑に進めるためのメッセージ発信トレーニング、論理思考力の基礎と実践トレーニング、論理思考力をもとにした文書作成力・プレゼンテーショントレーニング、人間関係力向上のためのEQトレーニングなど
感情を上手に使えればハッピーな人生に
EQとはEmotional Intelligence Quotientの略で、直訳すると情動知能という表現になります。ダニエル・ゴールマンの書いた『EQ〜こころの知能指数』という書籍によって、「こころの知能指数」だと捉えている方が多いと思います。
ただ、IQ(知能指数)と違って、EQを「高い」「低い」という視点で測定したり判断したりすることには、少し違和感を覚えます。なぜなら、「生まれつきの先天的な能力である」という誤解が生じやすいからです。
ですから私は、いつもみなさんに「EQとは人間関係の中で感情を上手に使う能力ですよ」とご説明しています。読み書きや自転車をイメージされるといいでしょう。生まれつき読み書きのできる人はいません。けれども、トレーニングをすれば、読み書きできるようになります。自転車に乗るのも同じですね。初めて自転車にまたがる時は勇気が要りますし、バランスのとり方が難しく感じます。でも、練習して慣れてくれば、自分の思い通りに乗りこなせるようになります。
そんな感覚でEQというものを捉えて感情を上手に使えれば、素敵な人生になるのではないでしょうか。
職場でEQを使える人と使えない人の差
EQが注目されているのは、感情をうまく使って行動することは、誰にとっても重要な課題であると、認識されるようになったからではないでしょうか。
たとえば、みなさんの職場でも、上司が部下を叱る場面が見られると思います。上司によっては、「どうしてできないんだ!」「だからダメなんだ!」「あの時もダメだった!」などとひたすら怒りをぶちまける人もいるでしょう。こうした人は、感情をうまく使えていない人だと言えます。職場の雰囲気が悪くなるのはもちろん、部下の仕事へのモチベーションが下がるかもしれません。場合によっては、部下が「パワハラを受けている」と感じたり、メンタルヘルス不調に陥ったりするかもしれません。
一方、感情をうまく使っている上司は叱るのが上手です。単に怒るのではなく、部下への期待のメッセージを織り交ぜます。たとえばこんな言い方です。
「この間、あの仕事をやり遂げたあなただったら、確実にできると信じて任せたんだ。今でもそれを信じている。だから、できるまでやってほしい」
もうひとつ例を挙げましょう。
リーダーがメンバーに説明をしている時、メンバーが憮然とした表情をしているとします。こんな時、感情をうまく使えないリーダーは、メンバーの表情に触れず、引き続き説明をします。あるいは、頭ごなしに怒ります。いずれの行動も、人間関係の改善を期待することはできません。
ところが、感情をうまく使うリーダーであれば、「メンバーが憮然とした表情をしているのは、何か理由があるのだろう」と考えます。そして、あえて自分の感情をぶつけます。たとえば、「君がそういう表情をしていると、私も話しづらいんだよ。でも、それには何か理由があるんだろう。よかったら聞かせてくれないか」という風に。自分の感情を意識的に伝えることによって、建設的な話し合いにつなげようとするのです。そうすることで、メンバーの本音を引き出し、合意形成を図りながら職場のコミュニケーションをはかることが可能になります。
まず、自分の感情と行動の関係を知ること
EQを最大限に使うためには、意識して感情を伝えることが欠かせません。そのためには、順序立ててトレーニングをすることが大切です。
私はそうしたトレーニングのお手伝いをしていますが、日本マンパワーの公開コースでも講師役をしています。
公開コースではまず、EQの概要についてご説明いたします。
次に、事前に受けていただいたEQI(行動特性検査)の結果について、私からご説明しながら検査結果をフィードバックさせていただきます。EQI(行動特性検査)とは、ご自身の感情の状況や使い方、さらに感情によってどのような行動が導かれているかを把握するアセスメントツールです。受講者の方はみなさん、「ここまで細かく自分の感情がわかるとは思わなかった」「過去の自分の経験がこんなに影響しているんだ」など、驚きながらも喜ばれています。
自分を知るということは、いわば感情の棚卸しだと言えます。これは非常に重要な作業で、EQトレーニングのファーストステップだと思います。自分の感情や、感情と行動の関係性を知らなければ、それを意識的に使うことはできないからです。もちろん、自分のことがわからなければ、他者の感情と行動の関係性もわかりません。
なかには、「EQはテクニック。部下をほめたり、笑顔を見せたり、言動に気をつければうまくいくんじゃないか」と思っている人がいるかもしれません。でも、テクニックは大切ではありますが、うわべのテクニックだけでは真実味を帯びた言動にはなりませんし、長続きもしないでしょう。
なお公開コースでは、自分のありたい姿、ありたい姿にたどり着くための今後の行動計画などもカリキュラムとして予定しています。ワークやエクササイズを通して、行動の裏側に感情があることを肌で感じていただきますので、きっとビジネスでもプライベートでもお役立ていただけるはずです。
感情と行動との関係はずっと続きます。長い人生のうち、たった1日だけですので、そうした機会を持たれてはいかがでしょうか。
自分自身のことを知りたい方、感情の棚卸しをしたい方、人間関係で悩まれている方、職場のリーダーおよびリーダー候補の方に、ぜひ受講を検討いただければと存じます。