朝晩の冷え込みが厳しくなり、そろそろ「今度の年賀状はどうしようか?」と意識する時期になってきました。“書は人なり”とよく言われますが、できれば自分らしい直筆で書きたいものですよね。そこで今回は、日本マンパワーのペン字講座を指導している池田修子先生に、ペン字が上達するコツを伺いました。年賀状だけでなく、生活やビジネスの場でも役立つかと思われます。
−いい手本をよく見てよく真似る−
「ペン字の練習で一番の基本となるのは、『よく見て、よく真似る』ことです。いいお手本をより多く見て、そのお手本を真似ながらたくさん書くことが、何よりの練習法だと言えます。
ただ、『よく見る』という行為はなかなか難しいものです。それは、長い時間見るという意味ではなく、文字を分析しながら見るということを意味するからです。たとえば、文字の中心はどこにあるのか、はらいの角度はどれくらいか、どの線を一番長くするかなど。一つひとつの点画に注意を払うことが大切です。
その際、大きく書くことも重要なポイントとなります。なぜなら、小さく書くよりも確かな形を身につけられるからです。また、大きく書くとごまかしがききません。ごまかしがきかないということは、自分の弱点を見つけることにつながります。お手本と自分の字を並べて見比べるとわかりやすいでしょう。
最初はゆっくりとしたスピードで大丈夫ですよ。お手本を見ながら、一画一画ていねいに書いていきましょう。そして、練習を積んで、自分がいつも書くスピードで書けるようになれば、手が自然にペンの運びを覚えてくれるはずです」
−時間がない時は「目習い」を−
「練習に向けての心構えで大切なことは、短い時間でもいいので『毎日書く』ことです。どのような習い事でも同じだと思いますが、継続は確実に力になってくれます。ほんの30分でいいのです。『美しい字を書こう』と意識する時間を毎日の生活に取り入れられれば、きれいな字に変わってくるはずです。
忙しくてペンを持つ時間がない時には、『目習い』という方法もあります。『目習い』というのは文字通り、『目で習う』という意味です。屋外に掲げられている看板でも構いませんし、電車の中吊り広告でも構いません。文字に興味を持ち、分析しながらよく見れば、自分が書くときにとても役立ちますよ」
−すぐに役立つ書き方のコツ−
「すぐに役立つ技術的なコツもいくつかあります。たとえば、第一画目をどの位置から書き始めるか。文字というのは、一画目の位置が変わるだけで、文字全体の重心の位置も変わってくるのです。
また、外形も意識するといいですね。ひらがなにも漢字にも、『この形におさめるつもりで書くとバランスがよくなる』という形があります。たとえば「の」や「水」は円形を意識すると美しくなりますし、「す」や「布」は逆三角形を意識するとまとまりやすくなります。
ほかにも、編と旁(つくり)で構成される漢字なら左右の大小比に気をつける、上下に分かれる漢字なら中心線はどこを通っているかなど、技術的なポイントはたくさんあります。ひらがなであれば、字源を思い描くことも大事なポイントとなります」
−自分らしい書風を伸ばしましょう−
「もっとも、細かい技術より大切なことがあります。それは、『字を書くことを好きになること』です。『好き』という気持ちは、どんなことにも勝る処方箋です。
それに、みなさんが全員、教科書そっくりの字を書く必要はありません。手書きがすばらしいのは、すべての人に個性があることです。書風は人によって異なります。力強い字を書きたい人もいれば、上品な字を書きたい人もいるはずです。
受講生の方の添削をする際、私はそうした個性を大切にしています。あら探しをしてお手本と同じ字を書くよう指導するのではなく、受講生一人ひとりの書風を生かしながら、その人のいい点をさらに伸ばすアドバイスをするよう心掛けています。
ペン字は一朝一夕に上達するわけではありません。『構えず・焦らず・休まずに』自分らしい美しい字が書けるようになることをお祈りしています」
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