ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 vol.13

実務経験なしでも、CDAネットワークで仕事に就けた

[2016/09/28]

亜像エラー

仕事から離れ、専業主婦になってから十数年。社会に出ることに不安を抱えながらも、自分が成長し続けられる仕事を探し始めた鈴木恵美さん。お子さんの進路を家族で話し合ったことをきっかけに、キャリアや人生の選択にかかわることに興味を持ち、日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』を受講。クラスメイトの支えなどもあり、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格に見事合格することができました。
 しかし、鈴木さんは当時、仕事に就いていませんでした。キャリアカウンセラーの実務経験がないどころか、その仕事をどのように探せばいいかもわかりませんでした。一念発起して資格取得にチャレンジした時を超える不安が、合格後にやって来たと言います。
 「果たして私はこの資格を活かすことができるのだろうか?」
 そんな鈴木さんは、3カ月後に高校生のキャリア教育を支援する仕事に就きます。さらにその1年後には、大学生対象のキャリアカウンセラーとしても活躍し始めます。
 なぜ、そうした望みが叶ったのでしょうか? そのキーワードは「動くこと」と「CDA同士のネットワーク」です。先月の同コーナーに続く、鈴木恵美さんのストーリー後編、ぜひご参照ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 特定非営利活動法人16歳の仕事塾 コーディネーター・ファシリテーター
 東京理科大学キャリアセンター キャリアカウンセラー
 キャリアカウンセラー(CDA)
 2級キャリア・コンサルティング技能士
 進路アドバイザー検定マスター合格
 鈴木 恵美 さん


仕事はすべてCDA同士のつながりで得られた

 CDA資格に無事合格できたのは非常に喜ばしいことでしたが、私の場合はむしろ、合格したことによって不安や焦りの気持ちが生じてきました。定職に就いていませんでしたので、「果たして私はこの資格を活かすことができるのだろうか?」という思いにかられたのです。当時は、自分の進む方向性すら決めていなかった状態。キャリアカウンセラーとしての実務経験もありませんでしたから。
 とはいえ、せっかく資格を得られたのですから、ハローワークに行って仕事を探し、ある仕事に応募しました。でも、ちょうどその時、義理の父母の体調が悪いことが発覚し、その応募をお断りしました。仕事は諦め、介護に専念しようかとも考えました。
 しかし、それが原因で私が仕事を諦めてしまったら、後々になって義父母に対して負の感情を抱いてしまうかもしれません。そう考え、キャリアカウンセラーの仕事は諦めませんでした。ですから逆に、義父母がCDAとしての活動へのモチベーションを高めてくれ、背中を後押ししてくれたように思います。
 もっとも、キャリアカウンセラーになるために何をすればいいかわかりません。そこで、「できることから始めよう」と思い、CDA資格取得者の方が集まる研修や勉強会、支部会などに積極的に参加しました。その行動が、今の私のキャリアにつながっています。というのは、そうした場で「こういうことをやっていきたい」と発信をすると、「こんな仕事があるよ」と情報を提供してくださる方が少なからずいらっしゃるからです。同じように、試験に向けて一緒に勉強した仲間で作っているFacebookグループにも仕事の情報が入ってきました。
 今やらせていただいているお仕事は、すべてこうした人とのつながりから始まったものです。CDAの強い結びつきとネットワークには本当に驚かされるとともに、たいへん感謝しています。


高校生が将来のことを考えるきっかけづくり画像エラー

 現在の仕事は、特定非営利活動法人16歳の仕事塾のコーディネーター・ファシリテーターとして週に2日くらい、東京理科大学キャリアセンターのキャリアカウンセラーとして週に3日の活動をベースにしています。ほかに、不定期で再就職を望まれる方への就職支援セミナー講師や主婦の方たちへのキャリアカウンセリングなどをやっています。

 「16歳の仕事塾プロジェクト」は、高校生を対象としたキャリア教育の支援機関です。高校から委託を受け、授業枠1〜2コマを使わせていただき、今のことばかりを考えがちな高校生が将来のことを考えるきっかけづくりを行っています。
 たとえば、第一線で活躍する社会人に講師となってもらってお話を聞く「社会人授業」、社会人へのインタビューを通して自らの将来を考えるきっかけやヒントを得る「社会人へのインタビューワークショップ」、今の自分の興味や好みの自己分析などをする「右脳・左脳ワークショップ」、地域社会とのつながりの中で役割を果たすことが自分らしく生きることであることを学ぶ「社会の中の自分〜役割を考えるワークショップ」、主体的に生きていくために、時代の変化に伴う職業の変化や働き方の違いを理解する「勤労観・職業観ワークショップ」などのプログラムがあります。
 私がこの活動に関わったきっかけは、先ほどお話したCDA資格取得者によるFacebookグループで、プロジェクトの代表者から「一緒にやりませんか?」と声をかけてもらったことです。2014年の4月頃です。CDAに合格したのは2014年の1月ですから、わずか3カ月ほどで望みの仕事が見つかったことになります。
 その中で私は、最初、授業のファシリテーターを任されました。高校生の前で話をする、場づくりが大切な役割です。難しい役割ですが、キャリア教育の必要性は感じていましたので、精一杯努めました。それを認めていただけたのか、その後、代表者から「コーディネーターとしてもやってくれないか」と打診していただきました。コーディネーターとはいわば裏方のような役割で、学校関係者と打ち合わせをしたり、講師となっていただく社会人の方をアサインしたりするのが役割です。もちろん、喜んでお引き受けしました。
 プロジェクトのスタッフはみなさんすごく前向きで活発、いい人ばかりで、刺激を受けながら取り組んでいます。授業の後には生徒に「振り返りシート」に書いてもらうのですが、前向きな思いが書いてあるのを読むと、役に立っていることを実感できて非常にうれしく思います


大学キャリアセンターでのキャリアカウンセリング

 それと併行して理系の私立大学でキャリアカウンセラーとして働き始めたのは、2015年4月からです。一般的に、キャリアカウンセラーとして大学で働くためには経験が重視されることが多いのですが、私の場合は運よく紹介していただきました。
 ちょうど家庭の状況に時間的な余裕ができてきた頃で、私自身、ひとつの組織で専門性を深めるよりも、さまざまなことをやってみたいという思いが強かったので、それを周りの方に伝えていました。そしてチャンスが訪れたのです。
 大学生と接することは、高校生のそれとは違った面白さがあります。理系の子たちですからすごく論理的ですし、私には持ち合わせていない感性を持っています。
 でも、自己肯定感自己効力感が低かったり、思い込みが激しかったりする学生もいます。そうした子たちには、「私にはこう見えるけど」などと本人が思っている枠組みとは異なる枠組みでお話ししてみます。そうすると「そんな風にも捉えてもらえるんですか?」と顔色がすーっと変わってすっきりした表情になってくれます。一人ひとり個性が違いますが、自分を広い視野で見てもらって「今のままの自分でいいんだ」「自分ってもしかするとすごいのかも」と思ってもらえるように伝えられる仕事に、大きなやりがいを感じています。毎日「あぁ今日も良かった」と帰宅の途についています。
 できれば今後は、カウンセリングに加えて、キャリアデザインの授業などにも携われればなあと思っています。そして、ものの考え方やクリティカルシンキングなどのワークを取り入れ、自分に自信をもって、自分の意見をアサーティブに相手に伝えられるようになってくれればと思います。

 再就職に向けた就職支援セミナーの講師は、16歳の仕事塾や大学のキャリアカウンセラーの予定が空いた時に務めています。ほかにも単発で、主婦の方たちへのキャリアカウンセリングや、大学生を対象とする就職合宿などのお手伝いを頼まれることもあります。これらも、CDA同士のつながりでご紹介されたお仕事です。
 その人たちの気持ちを受け止めた上で背中を押し、少しずつ未来のお話をしていくことで、明るい表情を見られるのはうれしい限りです。同時に、その人たちのお話が私自身にとっても代理学習となり、いつも勉強させていただいています。


画像エラー一歩動くだけで違うものが見えてくる

 つい3年前までは専業主婦で、社会や仕事に対して不安・弱気だった私が、今こんなに外に出ているのは、なんとなく不思議に思われるかもしれません。実際、主婦友だちも驚いています。
 私がこうなり得たのは、「やってみた」からだと思います。十数年もの間、専業主婦をしていて職務経験がないのだから、やってみるしかなかったのです。
 こうした私の姿を見たせいか、主婦友だちの中には、正社員として就職した人や、資格に挑戦する人も出てきました。そうした友人はみんな、「やってみて良かった」「今、とても面白い」と活き活きした表情をしています。
 主婦の方の中には、「私にできるか、自信がない」「自分のために時間やお金を使うのが後ろめたい」「何をやりたいかわからない」などの理由で、はじめの一歩を踏み出せない人が多いかもしれません。「何かやらなきゃいけないと思うけど・・でも・・」と自分に言い訳したい気持ちになることもあるでしょう。
 でも、一歩動くだけで違うものが見えてくることはよくあります。もしそれで失敗したとしても、失敗したことがわかっただけで一歩前進になるはずです。これは、高校生にも言っていることでもあります。
 「とりあえず動いてみよう!」
 頭だけで考えて動けなくなるのではなく、一歩動いてみた上で、自分の感覚や気持ちを確かめてみる。その後で、二歩目を出すかどうかを判断すればいいように思います。そうすれば、自分の関心ある分野や得手不得手が見えてくるような気がします。


今後の自分がどうなっていくのか楽しみ 画像エラー

 私もまだはっきりと将来に向けての目標が決まっているわけではありません。これまでは、周囲の人に恵まれて得られた仕事に対して、「いろんなことをやってみたい」という気持ちでがんばってきただけです。まだまだ、視野を広げさせてもらっている最中なのだろうと思います。ですから、その流れに乗って、今後の自分のキャリアがどうなっていくのかがむしろ楽しみです。
 一方で、「このペースのままでいいのかな?」という焦りもあります。でも、「他人は他人、自分は自分」と考え、ワーク・ライフ・バランスを大切にしながら、出会った人たちに学習させていただき自己成長しながら、一歩一歩前進んでいこうと思っています。

 CDAの学習を通して、こんな風に前向きに考えられるようになったことも、自分にとってすごくプラスになりました。人の役に立つようにと挑戦した資格ですが、自分の人生を肯定的に捉えることができるようになり、人としての幅が広がったような気がします。


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