ちょっと一息

キャリアカウンセラーの資格活用 Vol.9

子育てをしている専業主婦が自分の生き方にOKと思えるようなお手伝いを

[2016/05/30]

コラム6月号(キャリアカウンセラーの資格活用-1)

 人生は十人十色。いろいろな事情があり、想いがあり、選択があり、過程があります。何か同じひとつの現象に出合った時も、どのように見えるか、どのように感じるかは人によって異なることでしょう。
 野々垣みどりさんは、大学卒業後、法律特許事務所に就職しました。その後、紆余曲折があり、外資系金融機関で働きながら、社会人大学生になります。
 そんな時、専業主婦となって子育てをする友人たちの言葉にショックを受け、次のように考えたと言います。「“子どもを産んで育てる”という、言ってみれば究極に素晴らしい“人材育成”をしているお母さん達が、どうして自分の生き方を、なんの価値も生み出していない・・・なんて思いながら生きなくてはならないのだろう?」
 野々垣さんは現在、大学や企業でのキャリア支援に携わるとともに、地域のお母さんたちのキャリア支援活動に取り組んでいます。
 なぜこのような経緯をたどってきたのでしょうか? 現在に至る過程のお話には、私たちが見過ごしている新たな発見や、ポジティブで社会的意義のある考え方、キャリアカウンセラー資格の活かし方など、興味深い内容がぎっしりと詰まっています。
 女性にも男性にも読んでいただきたい内容です。ぜひご一読ください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社エマージェンス 代表取締役
 駒沢女子大学人文学部 非常勤講師
亜細亜大学国際関係学部 キャリアコーディネーター
 亜細亜大学キャリアセンター1・2年次プログラム“Career Garden”コーディネーター
 キャリアカウンセラー(CDA)
 野々垣 みどり さん


弁護士、米国公認会計士を目指していた頃

 私は、企業・金融関係法務を主な業務とする法律特許事務所に就職し、司法試験に向けての勉強をさせていただきながら、弁護士業務をサポートするパラリーガルという仕事をするという二足のわらじをはいて社会人生活をスタートしました。
 ところが、入職3年目くらいにボスである弁護士が突然亡くなってしまいました。法律特許事務所は閉所することになり、挑戦し続けた司法試験にも未だ合格しておらず「これからどうしようか?」と悩みました。パラリーガルの仕事を通じて、ビジネスや金融の仕組みがさっぱりわかっておらず、知識も足りていない自覚がありましたので、もう少し実体験を通して学んでみようと思い、司法試験は一旦休止して、業務上一番関わりが深かった金融業界を覗いてみることにしました。
 金融業務経験のない既卒者が銀行や証券会社に就職するのは非常に難しい状況でしたが、幸い、英語力を活かして、とりあえずスイス系証券会社の派遣社員になることができました。フィナンシャルコントロールという経理・財務・税務申告、外部監査対応や日銀・大蔵省などへの報告関連業務をする仕事です。その後、何社かの欧米系金融機関やヘッジファンドで、派遣社員、契約社員、正社員とさまざま雇用形態で働く経験をしました。
 ある時、当時勤務していた銀行の上司から「アメリカか日本の公認会計士の資格を取りなさい」と言われ、比較的合格しやすいアメリカの公認会計士を目指すことにしました。ただ、受験資格のひとつに、大学等で一定以上の会計単位を取得していなければいけないという要件がありました。そこで、大学に編入学し、働きながら勉強をはじめました。


コラム6月号(キャリアカウンセラーの資格活用-2)

専業主婦になって子育てする友人の発言にショック

 30歳前後の頃は、生まれたばかりの友人の赤ちゃんや、スクスク育っている友人の子ども達の顔を見に行きがてら、学生時代の友人と会っておしゃべりをする時間を持つことが少なくありませんでした。
 そんな時、ふと寂しいような残念なような気持になることが幾度となくありました。さぞかし企業でも目覚ましい活躍をしていくだろうと思っていた、学生時代にすごく優秀だった多くの女性の友人たちが、結婚・出産を機に会社勤めを辞めて、M字カーブの形状通りの状況になっていたのです。しかし、「寂しさ」や「残念」な気持ちになる以上に、衝撃を受けたことは、私、ただの子持ちの専業主婦になっちゃった」「仕事をしていないから、社会に全然役に立ってないし、何の価値を生んでいない」などと、友人たちが口々に言うことに対してでした。
友人たちは、「自分が産んだからには、できるだけ一緒に子どもといたい」「自分が産んだ子どもを、自分の手でしっかり育てたい」「子育てを楽しみたい」というそれぞれの想いを大切にして、子育ての時期には、自分なりに満足ができそうだと思える生き方を選んだのではないかと思います。それにもかかわらず、「ただの子持ちの専業主婦」「社会的価値を生んでいない」と思ってしまうのは、どういうことなんだろうか?いったい何が、友人たちをそのような気持ちにさせてしまうのだろう?と考え込んでしまいました。
 子育ては「人が人を育む営み」で、子どもだけでなく大人もまた共に育つ、すばらしい“人材育成”システムと捉えることができるのに、その意味や意義を見失いがちになってしまう何かがあるのだろうなと思いました。そのために、自分の生き方にOKと思えないでいる女性が世の中にはたくさんいる。そんな状況を知ったことにより、このような女性たちが、自分の生き方にOKと思えて、いつかは自分らしく生きてこられて良かったな、と自分の人生に愛おしさと誇りを持ってもらえるようなお手伝いができればいいなあ」という想いが生まれてきました。


社会人大学で「キャリア」と出合う

 まさにそんな時、社会人大学で「キャリア」に出合いました。会計関係の単位をコツコツと取得していたところ、会計単位以外であと12単位ほどあれば卒業することもできることに気付きました。そこで「人的資源管理論」「組織開発論」「社会心理学」「産業心理学」などの科目も履修してみたところ、複数の授業の中で「キャリア」や人間性の理解が進む学びに出合えたのです。「この学びを続けたら、もしかしたら、私の友人たちと同じように感じている女性の役に立てる何かが見つかるのではないか? 何ができるかわからないけど、そんなことができたらすごく嬉しい!」と、偶然の出合いにワクワクしました。
 そんな話を親戚の女性に話していたら、彼女が人がどういう風に生きていくかに関わる資格や仕事があるんだよ」と教えてくれました。それがCDA資格であり、キャリアカウンセラーです。ちょうど彼女は、CDA(キャリアカウンセラー)の資格を取得したばかりだったのです。
 私は早速、日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』を申し込みました。


コラム6月号(キャリアカウンセラーの資格活用-3)

自分の世界が広がり、そして自分の過去ともつながっていく充実感

 実はその頃、私自身も自分の生き方に迷っていました。法律特許事務所の閉所に伴い、ちょっと覗いてみようと思って入った金融業界ではありましたが、自分が大切にしたい何かを置き去りにしたままで、長く居すぎた感じが大きくなってきていました。
 ですから、キャリアカウンセラー養成講座』通学コースの学習はすごく興味深く受講することができました。自分の過去を言語化して棚卸するワークや、モヤモヤしていることが言語化されている理論の学習などを通して、自問自答を繰り返し整理をすることができました。
 また、クラスメイトは、いろいろなバックグラウンドがあり、いろいろな想いを抱いて学びに来ています。そうした人たちと触れ合える楽しさ。クラスメイトと生き方について話すことで、自分の世界が広がっていく充実感を覚えました。
 試験では少し足踏みしましたが、2007年にCDA資格を取得することができました。

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★CDA資格を取得した野々垣みどりさんは、その後、どのような経緯で大学や地域での活動に携わっていくのでしょうか? 本記事の続きは来月の当コーナーご紹介いたします。

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