ちょっと一息

キャリアの探し方・作り方 vol.11

仕事ができる人に学ぶ「課題解決」の手法

[2007/11/29]

 週末、冬物の洋服を買いに行ったら、店員さんが「こちらはいかがですか?」「こちらは今年の新作です」「これは流行していて、人気の商品ですよ」と、たくさん商品を勧めてくれました。でも、勧めてくれた洋服は私の好みじゃなかったり、予算に合わなかったり・・・。そもそも、新作や流行にはまったく関心がないし・・・。
 みなさんはそんな経験、ありませんか? 買い物に限ったことではなく、誰かに営業されている時、取引先の人と打ち合わせしている時、社内で会議をしている時など、「もう少し、こちらの事情を理解した上で話してくれればいいのに」と思うこと、ありますよね。
 営業職の人の場合は、そうした「売る側」と「買う側」の意識ギャップを埋める手法が日常的に行われているようです。そしてその手法は、すべての仕事に応用できるばかりか、個人のキャリアアップにも役立つそうですよ。仕事ができる人のノウハウ、ちゃんと聞いてきました!

●今回お話を聞いたのは・・・
 株式会社日本マンパワー 人材開発営業本部 東京営業部 第3課
 黒田 留以 さん


−課題解決型の営業スタイルとは−
 「例に挙げられた洋服屋の店員さんの場合、ひと言、『どのような品をお求めでしょうか?』と尋ね、お客様が店に足を運んでくれた理由を考えれば、売る側と買う側の意識ギャップが埋まり、満足して購入してもらえる可能性が高くなります。

 このように、買い手の状況を把握し、的確な課題を抽出した上で、解決を図るための提案を行う営業スタイルを、課題解決型営業問題解決型営業ソリューション型営業などと呼びます。私はけっして自分を『できる営業担当』だとは思っていませんが、そうした解決型の営業をしようとは心掛けています。
 なぜなら、自分が買い手の立場になった時、一方的に商品・サービスを押しつけられるよりも、こちらの事情を理解してくれた上で提案してもらった方がありがたいからです。

 私が課題解決型営業をするために最も心掛けていることは、お客様の話を十分に聞くことです。お客様の要望や事情がわからなければ、的確な提案ができないからです。
 ですからまずは、お客様の情報をたくさん引き出そうと努力しています。引き出した情報は会社に戻ってから整理して、お客様の理想を阻害している課題を探します。その課題は、必ずしもお客様が自覚しているとは限りません。むしろ専門家として、お客様の気づかない課題の発見に努めます。そして、その課題を解決するための商品やサービスを提案するわけです」


−双方向の対話による意思確認が必須−
 「もっとも、こうした手法がいつも成功するわけではありません。お客様によっては課題解決型の営業を好まず、『いくつか提案してくれたら、それを見て考えるよ』という人もいます。洋服に例えれば、服を並べて選ぶのが好きな人です。また、商品・サービスの質だけでなく、『いつもよくしてくれるから』などと人間的な信頼関係によって購入先を選ぶ人もいます。
 一方、営業担当者の力量によっては、課題解決型営業がマイナスとなる場合もあります。たとえば、売る側と買う側の課題把握にズレが生じているケース。営業担当者が『これが課題だ』と思って提案しても、相手が考える課題が違っていたら、提案すればするほど相手にとっては苦痛です。もしかすると、たとえ営業担当が示した課題が"正解"であったとしても、お客様に『上司の決裁が得られない』『予算が足りない』などの事情があるかもしれません。
 実際、私も若い頃、幾度となく失敗をしました。今でも思い出すのは、『提案型』という言葉を誤解していたこと。お客様の状況をヒアリングするまではよかったのですが、いざ提案という場面になった際、一方的に長々と話し続けてしまったのです。結果、提案が終わった時、お客様と私との間には大きな意識ギャップができていました。
 本来であれば、提案の途中でお客様の意思を確認すべきだったのです。営業力のある先輩に同行させてもらった時、お客様の要望や状況とズレがないか、お客様との双方向の対話を通じて、確認しながら提案しているのを見て、勉強させていただきました」


−キャリアアップにも活用できる4プロセス−
 「ただ、こうした失敗があることを考慮しても、『課題解決型営業』『押しつけ型営業』に比べて効果が高く、買い手にとっても好ましい営業スタイルだと考えます
 また、課題解決の手法は営業職だけでなく、すべての仕事にあてはまるように思います。たとえば、社内システムの処理速度を迅速化するためには、
 (1)なぜ今は速度が遅いのかという【現状把握】
 (2)どれほど速くしたいのかという【目標設定】
 (3)迅速化を阻害している【課題抽出】
 (4)課題の解決を図るための【解決策提案】
の4つを順に分析する必要があります。これは、経理や生産など別部門でも同じことが言えるでしょう。業務改善に欠かせない、基本的プロセスだと思います。

 個人の人生におけるキャリアアップにも、同様の手法を活用することができます。
 実際、私が営業を担当しているキャリア開発研修の現場でも、
 (1)自己分析および環境認識  【現状把握に該当】
 (2)キャリアビジョンの設定  【目標設定に該当】
 (3)ビジョンに近づくための課題確認  【課題抽出に該当】
 (4)課題を行動に移すためのプラン策定  【解決策提案に該当】
というプロセスで、モチベーションを高めながら目指す将来へ近づくためのワークを行っています。

 みなさんの日常にも、課題解決の手法を取り入れてみてはいかがでしょうか」

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