多くの人が争うように「ぜひウチに来てほしい」と自分を誘ってくれる——プロ野球で言えばドラフト1位の選手。そんな夢のような存在になれればいいですよね。
みなさんはいかがでしょうか? 周囲にそんな人はいますか? 中にはいるのかもしれません。非常に高い成果を上げている、社内のエース的存在の人が。
ただそうした人であっても、その状態がずっと続くとは限りません。会社の役員に登りつめるような一部の人を除き、平均的な会社員は定年後に継続雇用されたとしても、社内事情によって従来通りの活躍の場が用意されるのは難しいからです。
では、どうすればいいのでしょうか? シニア世代の置かれた実情に詳しい日本マンパワーの秋本暢哉さんは、「それでも『ひっぱりだこ』になれる方法はある」と言います。いったいどのような方法なのでしょうか? ぜひご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
人材開発営業部
ソリューショングループ 専門部長
マネジメントコンサルタント
秋本 暢哉 さん
「ひっぱりだこ」になるために自分を磨く ある企業の担当者とシニア世代への職務提供のお話をしていた時のことです。とても良い言葉をうかがいました。
「
自分が社内外からひっぱりだこになれるかどうか? シニア世代個人にとって、それが大きなポイントになります」
定年退職が近づいてきた時、社内に残るにしても社外に出るにしても、あちこちの人
からひっぱりだこになるような人材になれば、自分のキャリアの選択肢は拡がります。選べる選択肢が多い分、
職業人生の後半をハッピーに過ごせる可能性が高まります。
ひっぱりだこの状態になるためにはどうすればいいと思いますか? 非常に大切なことが2つあります。
まず1点目は、自分を磨き続けることです。現在のような環境変化が激しい時代では、持っている能力・知識・技術などが陳腐化してしまうことがどうしても起こりえます。そのため、新しい能力・知識・技術などを身につけるといった意識と行動を継続する、という意味です。そうした意識で行動していれば、おそらく周囲の誰かがその姿を見ています。そして「あの人は勉強家だな」「あの人は常に新しいものを吸収しようとする人だな」と認知してもらうことができれば、「ウチに来てほしい」と声をかけてくれる人が増えるでしょう。また誰かに紹介される可能性も高まるものと思われます。
ですから、自分を磨き続けると同時に、それを周囲に認知してもらえるように情報発信しておくことも大切です。
一緒に働きたいと思われるようなコミュニケーション
ひっぱりだこになるための2点目のポイントは、コミュニケーションです。たとえ職務能力が優れていたとしても、コミュニケーションがうまくいっていなければ、周囲から「あの人とは一緒に働きたくない」と敬遠されるかもしれません。それは非常にもったいないことです。ですから、「あの人と一緒に働きたい」と思われるように、日頃からコミュニケーションを円滑にしておくことが重要なのです。
ただ、年を重ねて立場が上になってくると、自分からコミュニケーションをとろうとする姿勢が弱くなりがちです。特に、年下の人に対してはなおざりになる人が多いようです。でも、だからこそ自分が歩み寄って積極的にコミュニケーションをとる人は職場でも稀少価値となり、ひっぱりだこになれると考えてみてはいかがでしょうか。
考え方を変えないと幸福度が下がる 職業人生の後半をハッピーに過ごすためには、ひっぱりだことは別の、大事な視点があります。
内閣府がまとめた『国民生活白書』(2008年12月)に、国民の
幸福度に関する分析がなされています。そこに、「年齢による幸福度の推移」に関する日米比較データが掲載されています。それによると、
米国では40歳前から79歳にかけて幸福度が右肩上がりとなっています。幸福と感じる度合いが年齢とともに高くなっているのです。一方の
日本はというと、15歳から60歳代後半にかけて右肩下がりで、以降も少し上がる程度です。つまり、中学を卒業してから、
年齢を重ねるごとに幸福感が下がっているのです。こうした日本のパターンは、世界でも珍しいそうです。
白書ではその理由を、他国では「高齢期に入ってからは考え方を変え、後半の人生を楽しく充実させようと努力するから幸福度がまた高まるのではないか」と考察しています。逆に言えば、
平均的な日本人は人生の後半で考え方をあまり変えないから幸福度が下がる、と言えます。そうした意味で、シニア世代を迎える前に、
自分なりの新しい価値観を見つけておくことが非常に大事になります。
自分なりのモチベーションの源泉や強みを整理してみよう ですからみなさんも、
一度立ち止まって、今後の人生をゆっくりと考えてみることをお勧めいたします。
たとえば、
「自分は何のために働くのか?」
「自分が生きがい・働きがいを感じるのは何なのか?」
「いつくらいまで働きたいのか?」
「どこでどのように働くのか?」などを俯瞰してみるといいでしょう。
そうして、
自分のモチベーションの上げ方を整理し、それに合わせたビジョンを思い描いておくのです。できればシニア世代になる前、
30歳代後半から40歳代のミドル世代の頃からそれを意識しておけば、将来に向けて有効に働くことでしょう。
仕事に対する考え方や将来ビジョンは人によって違いますので、「自分なり」で構いません。「プライベートを楽しむため」でも「仕事を通して誰かに感謝されるため」でも「若い人の力を育てるため」でもいいのです。そうした整理をしておけば、それが
モチベーションの源泉となり、ハッピーな人生につながるものと思われます。
一人で考えるのが難しいようでしたら、キャリアカウンセリングを受けたり、キャリアプランニングのセミナーを受けたりするのが有効です。日本マンパワーでは、誰でも受講できる通信講座や公開コースを用意しておりますので、ぜひご活用ください。