中小・小規模企業での社内キャリアカウンセリング活用
[2011/11/25]
仕事のストレスから引き起こされる、社員のメンタルの不調。
経済情勢の激しい変化に伴う、将来への漠然とした不安。
コミュニケーションの不具合による、若手社員の悩み・離職。
初めて部下を持つ立場に戸惑う、リーダー候補社員の不安。
個々の諸事情から生じる、仕事へのモチベーションの低下。
こうした状況は、どのような会社にも潜んでいるものと思われます。キャリアカウンセラーは、このような状況の解消に向けて、社員に“気づき”を与えることでサポートする専門家です。
先進的な企業では社内に専門部署を設置し、相談や面談、研修などを通してキャリアカウンセリングの取り組みが行われています。それにより、社員が活き活きと働き、仕事への好影響をもたらしているというケースも多々あります。
「そんな取り組みができるのは大企業だけだろう」と考える人がいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。中小企業・小規模企業でもキャリアカウンセラーとして活躍する人事担当者は珍しくなく、むしろ「組織が小さいからこそ幅広く活用できる」面があるようです。
社内キャリアカウンセリングの導入状況に詳しい日本マンパワーの坂室繁さんに、その活用方法と効果についておうかがいしました。ご参照ください。
●今回お話を聞いたのは・・・
株式会社日本マンパワー
キャリアドック部 CDA企画課
専門課長
坂室 繁 さん
幅広く活用できる中小・小規模企業
キャリアカウンセリングを行う実務家のための資格・CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)は、2000年から資格認定が始まりました。まだ10年ほどの歴史しかありませんが、企業の人事部門やハローワークなどの公共機関、人材ビジネス業界、教育機関などで、1万人を超すCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)が活躍しています。
企業においては、人事・教育部門の中にキャリアカウンセリングの仕組みを導入している会社や、社員のキャリアを支援する専門部署を設置している会社もある一方で、社内の仕組みを構築してからではなく、人事部門の方がCDA資格を取得し、「自分の業務の中でキャリアカウンセリングの取り組みを始める」というケースがあります。こうしたケースの方が、中小・小規模企業の方にとってはスムーズかつ幅広く実践に活用しやすいようです。
1人の人事担当者が社内改善することも
中小・小規模企業では、1〜2人の人事担当者が採用、教育、労務、制度設計などを兼務しているケースが少なくありません。ですから、担当者1人がCDA資格を取得し活動することで、採用、教育、労務、制度のすべてにキャリアカウンセリングの考え方やスキルを採り入れ・活用することができるのです。実際、人事担当者ご自身が社内を動き、社員の話をじっくり聴くことによって、社内の問題の解消にご貢献されているという事例はよく聞きます。 具体的にどのような場面でキャリアカウンセリング機能を活用できるかというと、たとえば次のことが挙げられます。
まず、社員が個々に抱える悩みや不安についてのキャリア相談。相談内容は、たとえば「自己のスキルと求められる成果とのギャップ」「上司をはじめとする周囲との人間関係の悩み」「将来に対する不安」「職場環境への不満」など、各人のさまざまな問題に対応することが可能です。
また、相談という形をとらなくても、人事担当者から社員に声をかけることで話し合いの場を持つことも有効です。たとえば、社員の話をじっくり聴くことで、メンタルヘルスの予防につながったり、離職の防止につながることもあるでしょう。
人材教育面においても、面談や研修を通して、モチベーションの向上や自律的就労の促進などを図ることも可能です。CDA資格では人の成長を支援するスキルを学びますので、採用面接や個人面談の現場でも大いに役立つはずです。
社内キャリアカウンセリングの効果
では、人事担当者がキャリアカウンセリングの機能を社内で発揮することで、どのような効果が生まれるのでしょうか?
まず、社員一人ひとりが仕事に対する当事者意識を形成できること。これにより、周囲環境の不平・不満を言うのではなく、仕事と正面から向き合ってもらうことで、「何のために働くのか」「周囲は自分に何を求めているのか」「自分は何を不満に感じているのか」「自分は今後どうすべきか」などについて自らの気づきを促すことができます。
また、周囲とのコミュニケーションがうまくいっていない場合は、キャリアカウンセリングを行うことによって、報告・連絡・相談の連携が改善され、結果として、チームの仕事の品質が安定する、ヒューマンエラーによるミスが減る、残業時間が減る、お互いに他社員を気遣い職場が明るくなったり、上司・部下相互の理解が深まったりするというなどの効果も見られています。これらの効果の積み重なりが、最終的には仕事の業績向上・生産性向上にもつながっていきます。
キャリアカウンセリングとは、けっして「ウチの会社は小さいから」と敬遠すべきものではなく、小さいからこその利点を活かして社内改善に活かすことができるものであると確信しています。