オーバー60のスキルを共有して困っている人の力になりたい
[2018/04/27]
「せっかく生きているのだから、やってみた方が楽しいに違いない」
そう話す原川始さんは、ファミリーレストラン隆盛期において、店長、マネジャー、新店トレーナー、事業部長など、長く第一線で活躍されてきました。多忙で厳しい仕事であるにもかかわらず、次々と新しい試みにチャレンジすることができたのは、そうした姿勢から生まれたのだと思います。
また一方で、次のようにも語ります。
「どこの店舗・どこの部門に行っても、快適にしたいという思いは持ち続けていました。そして、快適にするためにはどうすればいいかを一生懸命考えました。放っておいてはいつになっても改善しない。だから、自分が動くしかないのです」
とても含蓄のある言葉ですね。ただ、そんな原川さんにも定年がやってきます。定年を間近に控えた頃は、どうすればいいかわからず、非常に困ったそうです。そして辿り着いたのが・・。
本記事は、これまで2回にわたってご紹介してきた原川さんの完結編。ぜひ、みなさんの働き方のご参考にしてください。
●今回お話を聞いたのは・・・
外食産業会社勤務
CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
原川 始 さん
体調不良、自宅待機、職場復帰
長年働いていると、いいことも悪いこともあります。
今まで働いてきた中で私が最も充実感を得られていたのは、店舗で自由に工夫や企画をして成果を出すことでした。また、アルバイトをはじめとするスタッフとのコミュニケーションや一体感、お客様からの「おいしかったよ」「ありがとう」などの言葉。店舗業務の中には、そうした人とのかかわりによる喜びもたくさん詰まっていました。
しかし、40代後半になって、店舗業務ができない体になりました。忙しく働く中で、体に負荷をかけすぎていたのでしょう。頸椎を痛めてしまいました。重たい物が持てない状態です。そして人事担当と話し合った結果、自宅待機ということになりました。
家族はもしかすると、不安だったかもしれません。「親父はどうしていつも家にいるのだろう?」「クビになってしまうのかな?」と。
もちろん、クビになることはなく、しばらくしてから職場復帰することになりました。復帰して最初の仕事は、店舗開発をしている別会社に出向・移籍して、立地管理という仕事です。その後は、デリバリー部門のコールセンター長。さらに、本部のお客様相談室に異動しました。
この中で最も長かったのはお客様相談室です。いわゆるお客様からのクレームに対応する部門です。精神的に厳しいこともたくさんありますが、結果的に6年間続けることになりました。最後の2年間はリーダーも務めさせていただき、さまざまな勉強をさせていただきました。
定年、誰に相談すればいいのだろう?
一方で、定年の60歳が近づいてきました。妻からも、「あなた、もうすぐ定年だけどどうするの?」と何度となく言われました。もちろん、自分でも意識はしていましたが、どうすればいいかわからない。心の中では非常に困っていました。誰に相談すればいいかもわからないのです。それで、いろいろと調べてみると、どうやらキャリアカウンセラーという仕事に関する相談の専門家がいるらしいことを知りました。58歳の時です。
「ああ、こういう人に相談すればいいんだなあ」
そう思ったと同時に、「キャリアカウンセラーって、どういう人がなるのだろう?」と思い、さらに調べてみました。そうすると、養成講座をしている機関があって、資格を取れば自分もキャリアカウンセラーなれることがわかりました。
「これは面白そうだ、受けてみよう」
そう思って妻に相談したところ、養成講座の受講料を聞いた途端に却下(笑)。「何なの?その訳のわからない資格は!」とまで怒られました。それでも諦めきれず、再度お願いして、再度却下、何か月後に書籍などを見せて説明したら、翌朝、テーブルに受講料が置いてありました。ありがたい限りです。
そうして、日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)を受講し、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の試験を受けました。受講に至るまでの経緯がありますから、合格しないわけにはいきません。筆記試験は2回不合格になりましたが、無事に合格。通学コースのクラスメイトや自主勉強会を通じて、素晴らしい人たちに出会うこともできました。本当に受講して良かったと思います。
オーバー60のスキルを共有して
こうして定年に備えていたのですが、幸運にも、私の60歳の誕生日直前に会社の定年が5年間延長されました。ですから、再雇用になることもなく、まだ引き続き働くことができています。ただ、自分ではこの5年間を「猶予期間」だと思っています。いずれ確実に、定年がやって来るのですから。
では、今の猶予期間で何をしているかというと、たとえば、60歳前後の人たち、主にCDAの有資格者に話をうかがっています。昨年の秋には「オーバー60未来を語る会」という自主学習会を開催しました。会では、CDAの学習などを通じて知り合った50〜70歳ぐらいの人に多く参加いただき、今後の夢などを語り合いました。これからも引き続き開催していくつもりです。
将来的には、これをきっかけとして、CDA仲間のみなさんが仕事で培った得意分野やスキルを集結・共有化して、困っている人に役立つキャリアカウンセリングができないかと考えています。私自身、定年の準備として何をしていいかわからなかったという経験がありましたので、同じように困っている人の力になれればと思っています。まだ漠然とした夢でしかありませんが、こぢんまりとしたものでもいいので、何らかの形で具体化できればと思います。
やりたいことに挑戦できるような社会へ
また、「働き方」という観点で、自分の過去を順に振り返りながらアルバイトスタッフの働き方を思い起こしてみると、時代とともに随分変わってきたなあと思います。私が若い頃は、アルバイトの目的は生活するためが当たり前でした。それがバブル期になるとファッション的なカッコ良さを求め、現在は、何らかの目的をもって真面目に働く人が多いような気がします。
一方、会社に目を向けると、「社員に副業を認めてほしい」と切に思います。本来、勤務時間として拘束されている以外の時間は、個人の自由な時間のはずです。それに対して会社が「自社以外の場で糧を作ってはいけない」というのは、いかがなものかと思います。個人の自由な時間を使って別の会社で働ければ、人手不足解消の一助にもなると思うのです。
さらに、みんなが同じような仕事をしようとするのも気になります。サッカーで言えば、みんながフォワードになろうとする。でも、チームというものは、ミッドフィールダーやディフェンダーなどさまざまな役割の人がいるから強くなるし面白いのです。なぜみんながフォワードを目指すかというと、おそらく評価に直結するからでしょう。でも、人にはそれぞれ「ああしたい」「こうしたい」などの思いがあり、いろいろな人がいるから楽しいと思うのです。
今の世の中のあり方だけを見て、疑問も持たずに「それが当たり前」「仕方ない」と慣らされてしまうのではなく、自由にやりたいことに挑戦できるような社会になればなあと思います。