ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方vol.56

女性のマイナス感情をプラスにチェンジ

[2013/04/26]


 テレビドラマを見ていると、「主人公の気持ち、わかるなあ」「私、この人に似てるかも」と感じることはありませんか?
 また、「この登場人物、すごく腹が立つ」と怒りを覚えたり、「いいなあ、私もあんな環境で暮らせたらよかったなあ」とうらやんだりすることもあるでしょう。
女性1 映像を見てふと頭をよぎるそうした気持ちは、素直な自分の感情を表しているものだと思われます。でももしかすると、自分の奥底に隠された価値観はまったく違うかもしれません。たとえば、「気持ち、わかるなあ」という思いは、自分の劣等感を代弁してくれたからかもしれません。あるいは、「腹が立つ」という気持ちは、自分の中にもある「自分の嫌いな部分」が強調されているからかもしれません。
 「テレビドラマ」と「感情」と「隠された価値観」。
 『女性向けキャリア開発研修 For−W』の前半では、この3者と同じような関係を再現し、深く掘り下げます。そして、自分らしい素敵なキャリアを築けるきっかけとなるようにサポートします。
 果たしてどのような研修なのか、また、どのような狙いでそれを企画したのか?——開発プロジェクトメンバーの女性3人にうかがいました。


●座談会出席者
 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 研究開発グループ
 小出 真由美 さん

 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 ソリューショングループ
 木下 幸代 さん

 株式会社日本マンパワー
 人材開発企画部 事業推進グループ
 嶋 美乃 さん


4人の女性の、4本のストーリー

——『女性向けキャリア開発研修 For−W』では、企業研修としては珍しく、映像を見るセッションがあるとおうかがいしました。どのようなものなのでしょうか?
 文字だけで展開する4人の女性のストーリー映像を研修の序盤でご覧いただきます。
木下 「私にも同じところがあるかも」と思えるような、4人の女性が主人公です。
 妬みや嫉みなど、女性特有の感情も含めて。
小出 さわりだけご紹介しますと、1人目のストーリーは、「母のような専業主婦にはなりたくない」と思ってきた女性が主人公です。「男性と同じように働かなきゃ」と頑張ってきたのだけれど、ある時、育児休暇明けの同僚のフォローをする状況になった。同僚は時短で早く帰るのに、自分は遅くまで残業しなければならない。「なぜ自分の都合で早く帰る人の仕事を自分がしなきゃいけないの?」——そんなモヤモヤした女性のストーリーです。
女性2 2人目は、入社当初、周囲に認めてもらおうと頑張ってきた女性のストーリーです。でも、社内の風土が原因で、男性社員にしか仕事が回らない。「女の子は笑っていればいいよ」と軽んじられ、だんだん割り切って働くようになる。会社で活躍する気持ちはすっかりなくなっていく女性のストーリーです。
木下 3人目の女性は、専業主婦をしている女性です。「子どもができたら仕事は辞めるもの」と思って、喧嘩別れのような形で会社を辞めたが、ある日、時短で活き活きと働く元同僚とばったり再会。「自分の選択は間違っていたのかな?」と揺れる気持ちを描くストーリーです。
 4人目は、これまでやりがいを持って一生懸命働いてきた女性が、プロジェクトで活躍する後輩に嫉妬したりもするが、自分自身にも昇進の話が舞い込み、迷いながらも自分ならではのリーダーになることを選択していくストーリーです。


映像への感情に、自分の欲求が隠されている

——なるほど。4本ともよくあるようなお話ですね。
木下 はい。等身大の女性を描いていますので、おそらく誰もが4本のストーリーのどこかで「そういうこと、確かにあるよね」と思い当たると思います。
小出 主人公と同じように、モヤモヤしたり、イラッとしたり、悩んだり、自信がなくなったりするのではないでしょうか。
 そうした自分のネガティブな感情や、映像を見て印象に残ったシーンに、実は自分の価値観や欲求が隠されていることが少なくありません。
小出 「今まであまり意識していなかったけれど、妙に3本目の話が引っかかる」と思ったのなら、もしかするとそこに、自分の気にしている価値観や欲求があるかもしれないのです。あるいは、「あの人がうらやましい」と思ったのなら、その気持ちの裏に本当の欲求が隠されているかもしれません。
 たとえば、容姿がすごくキレイな人がいて、「私もあんな風にキレイになりたい」とうらやむとします。でも、実際にキレイになれたとしても、自分の気持ちが満たされるとは限りません。キレイなこと自体がうらやましいのではなくて、「キレイが故に手に入るもの」がうらやましいことがあるからです。その場合、「手に入るもの」が得られれば、本当にほしいものはキレイな容姿ではなかったということになります。4人の映像でも、自分の感情の先にある価値観・欲求に気づいていただければと思います。
小出 そのために、映像を見ていただいた後に対話セッションを設けています。ここでは、映像を見て「こころに残ったストーリー」「ネガティブな感情」をグループで語り合っていただきます。でも、けっして「ネガティブな私はなんて心が狭いんだろう」などと結論づけるのではなくて、感情の裏に隠された自分を知って、自分のキャリアを考えるきっかけにすることを、第1ステップの目的としています。
 映像自体も、「こんな嫌なことがありませんか」という趣旨の映像ではありません。4人の女性主人公それぞれに展開があり、自分のキャリア形成に希望を抱けるような内容になっています。
木下 女性には妬みや嫉みなど、男性に比べてマイナスの感情が働きやすいと思います。そのマイナス感情をプラスに変えていただくのも、対話セッションの目的のひとつです。そのためのツールが「自分を知る 感情チェンジシート」です。


自分を知って、マイナス感情をプラスへ

——「自分を知る 感情チェンジシート」とはどのようなものでしょうか?
小出 自分が何を欲求しているのかを思い出してもらうためのシートです。たとえば、仕事で腹が立つことがあれば「どうなれば腹が立たないのか?」、不安なことがあれば「何を知れば落ち着くのか?」「起こってほしくない展開はどうなのか?」、うらやむ気持ちがあれば「何を手に入れたいのか?」などを明らかにすることで、本当の自分を知るヒントにしていただきます。
 嫌いな人がいる場合、その人の嫌いなところは自分にもあって、嫌いな自分を見ているようだから拒絶反応が起こる、という説もあります。たとえば、「人によって態度を変える人が大嫌い」という人は、実は、自分にも身に覚えがあるからかもしれません。女性3
小出 表に表れる感情だけを自分だと捉えるのではなくて、裏の欲求を捉えることで本当の自分を知り、前向きにキャリアを考えられるのではないかと思います。
木下 もっとも、「今までの自分の感情を思い出せ」と言われても、急に思い出せるものではありません。ですから、思い出すきっかけにもなるように、最初に映像を見てもらうのです。私の場合、自分の過去を思い出して、「あの頃、厳しいことを言われたなあ」とか「私、よく頑張れたなあ」など、次から次へと思い出して、最後には涙が出てきました
 私たちも、観るたびに心を揺さぶられるポイントが違って何度泣いたことか。
小出 対話セッションでほかの人の話を聞くと、「そうだ、そういえば私にもそんなことがあった」と思い出すこともあります。


過去を洗い出して固定観念から卒業

——対話セッションの後は、どのような内容になるのでしょうか?
木下 「これまでの自分とこれからの自分」を見つめるセッションに移ります。これは、たとえば「○○はこっちがいいに決まっている」などと自分に染み付いてしまった固定観念について、これからも大切にしていくのか、あるいは卒業するのかを自分で決意するために、過去の自分の価値観を洗い出すワークです。
小出 私たちは、「こうしなければならない」とか「こうあるべきだ」と決めつけていることがあると思うのです。以前、誰かに言われたことや何かの出来事の影響で、自分の殻や枠を決めているように。でも、今まで「絶対だ」と思っていたことを、「それって本当に絶対なの?」と考える機会はほとんどありません。その機会を研修で行おうとするものです。
 固定観念に縛られて「身動きができない自分」もいるんですよね。
木下 研修ではL・サニー・ハンセンの提唱した「サークル・オブ・ライフ」を元にしたシートを使うのですが、まず、過去に自分に影響を与えた人や出来事、その時の自分の気持ちなどを書き出して、自分を振り返っていただきます。
小出 「この時、あの人に言われた言葉が結構心に残っているんだ」とか、「あの人のやり方が素敵だと思って、自分もそうしようと思ったんだ」など、今の自分を作っているいろいろなことがわかります。女性4
 それを3人1組で語ってもらうことで、さらに深く、自分の価値観まで洗い出されます。
小出 「今考えると、この固定観念(思い込み)は今の自分には合わないから、もう卒業してもいいかも」ということを気づくきっかけにもなります。
木下 自分を束縛していた考え、狭かった視野——そんな考えから自由になるきっかけになるはずです。今までのうれしかった思いも嫌だった思いも含めて、これからの自分に役立てていただければと思います。

★座談会の続きは来月以降の同シリーズでご紹介いたします。

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