1975年、山形市生まれ。98年に大学を卒業し、株式会社PHP研究所に入社。書店ルートの営業、ビジネス書の編集、ビジネス雑誌の編集、広告営業、企業出版や社内教育コンテンツの法人営業と、出版社の主要な「売る仕事」と「つくる仕事」を担当。2020年11月から日本マンパワーの「キャリアコンサルタント養成講座」(横浜17-1)で学び、21年夏の第17回試験で合格。21年10月にアルマ・クリエイション株式会社に移り、経営者向けの勉強会の企画・運営を担当している。
私は、出版社で雑誌の広告営業を担当していました。その関係で、クライアントである日本マンパワーさんに取材でお邪魔して、キャリアコンサルタント養成講座のお話をうかがったのがきっかけです。
私はその頃、「このままこの仕事を続けていてもいいのか」と悩んでいました。新卒で入社した出版社に20年以上勤め、「売る仕事」と「つくる仕事」の両方を経験してきたのですが、自分のキャリアに対しては「中途半端だな」という思いを持っていました。編集一筋、営業一筋という人を見ると、気後れしてしまうところがあったのです。自分の軸が定まっていない、という感覚でした。
そんなときに、キャリアコンサルタント養成講座について取材をして、「自分もキャリアを学んだら、何か見えてくるかもしれない」という考えが頭に浮びました。私は何事もまずはやってみよう、というタイプなので、取材を終えるときには、講座を申し込むことを決めていました。
スクーリングはオンラインを選ぶこともできましたが、コミュニケーションのとりやすさを考えて通学のクラスを選択しました。(横浜17-1クラス)
クラスメイトは20代〜60代と幅広い年齢で、人事関係だけでなく、さまざまなお仕事の方がいらっしゃいました。年齢も仕事も異なるメンバーが、一つの目標に向かって励まし合いながら頑張るというのは、これまであまり経験してこなかったので大変新鮮でした。20代の若者とその親くらいの年齢の受講生が、対等な立場で意見を交換したり、冗談を言い合ったりする雰囲気は、とてもあたたかくて、毎回通うのが楽しみでした。
そうした雰囲気になったのは、講師を担当してくださった坂巻美和子先生とアシスタントを務めてくださった吉田明美さんの存在が大きかったと思います。坂巻先生は、私たち受講生が突拍子もない質問をしても、それを柔らかく受け止めて、ご自身の経験を踏まえて答えを返される。その様子は、先生のキャリアカウンセリングでの応答を垣間見るようで、大変勉強になりました。
また、アシスタントの吉田さんは、より受講生に近い立場から、おすすめの参考書や勉強法などのアドバイスをしてくださり、とても役立ちました。カウンセリングのロールプレイングの際にご自身のカウンセリングの経験をもとにアドバイスをくださったのも、貴重な学びになりました。
キャリアを学ぼうとすれば、当然ですが自分自身のキャリアについても振り返る必要があります。私は、先に書いたように、自分のキャリアについて「中途半端さ」を感じていたため、それと正面から向き合うことに抵抗がありました。しかし、坂巻先生や受講生の方々がご自身の経験を積極的に開示してくださったことが励みになって、私自身も自分のキャリアを振り返り、感じていることを感じたままに素直に伝えることができるようになったと思います。そうして自分のキャリアを冷静に捉え直すことができたからこそ、これからのキャリアについても、地に足の着いた形で考えられるようになったのではないかと感じています。
スクーリングは、週に一度、3カ月程度の期間でしたが、そのなかで受講生同士がキャリアについて話し合うことで、過ごした時間以上の絆が生まれた気がします。最終日は学校の卒業式のような名残惜しい気持ちになりました。
横浜で開講するクラスでは、カリキュラムの終了後から学科試験・論述試験、面接試験までの間に、卒業生の先輩方のサポートのもと自主的な勉強会が行われているのですが、こうした受講生同士のつながりがあったから、勉強会の運営もスムーズにできて、引き続き励まし合いながら、勉強を継続できたのではないかと思います。
私は、自分にとって何か軸になるものを探したいという気持ちからキャリアコンサルタント資格に挑戦しました。いま振り返ってみても、キャリアについて学んだことは、本当によかったと思います。
養成講座で代表的なキャリアの理論家について学びましたが、私はその中でも特にサニー・ハンセンの考え方に心が惹かれました。有名なキルトのたとえが象徴する、人それぞれの人生は二つとして同じもののない、かけがえのない芸術であるという考え方です。
私はそれまで、キャリアとは会社でのポジションや実績など、客観的に評価されることを積み重ねることだと無意識に思い込んでいたように思います。しかし、この考え方を知って、自分が囚われていた固定観念から解放されるような気がしました。
ダグラス・T・ホールのプロティアン・キャリアという言葉にも大変感銘を受けました。昇進してより大きな権限で組織を動かすということにあまり魅力を感じていなかった私にとって、個人の満足を重視して、必要であれば自由にキャリアの転換を図っていくという考え方は、現状から一歩を踏み出す勇気を与えてくれたような気がします。
私は、試験合格から数か月後に新卒以来23年半勤めた会社を辞めて、新しい一歩を踏み出しました。その決断の背景には、いま書いたようなキャリアの学びがありました。自分が感じていた感覚を、理論家の考え方を知ることで確信にできたことで、迷うことなく決断できたと思います。キャリアについて学んだことは、結果的に自分のキャリアチェンジを決断する大きなきっかけになりました。
以上は、あくまで私の体験談ですから、ほかの方々には当てはまらないかもしれません。しかし、「キャリア」や「キャリアコンサルタント」という言葉に惹かれるのであれば、きっとそこにあなたの人生を変えるきっかけがあるように思います。いまそう感じている方は、ちょっとの勇気を出して、新しい一歩を踏み出してみることをお勧めします。
筆記試験については、三つの勉強法で対策しました。一つは、『みんなで合格キャリアコンサルタント(みん合)』の本を購入して、通勤時間中に読んで問題を解く、というやり方です。養成講座のテキストでもやったように、できなかった問題はチェックして、解けるまで繰り返す、というやり方を続けました。また、電車が混んでいてテキストが広げづらかったり、時間があまりなかったりした場合は、『みん合』のサイトの「一問一答」でスキマ時間も勉強に充てました。
もう一つは、学科試験の過去問を繰り返し解く、というやり方です。直前の第16回からさかのぼって10回分の過去問を解いて、できなかった問題にチェックをして、それを正解するまで解きました。正解を確認する際には、『みん合』の過去問解説を読みながらじっくり確認しました。解説を読んで、時には不明点を調べながら理解するという形でやっていたので、1回分の問題を終えるのに半日かかることもありました。過去問をある程度の量を解くとわかりますが、同じような問題が何年か経って再び出題されるケースがよくあります。過去問を繰り返し解くやり方は、そうした出題傾向にも対応しやすくなると思います。
また、過去問を解くと同時に、『みん合』で公開されている過去問の出題範囲表(『出題範囲マトリックス「タテヨコくん」』)を活用して、特に間違いの多い出題範囲はどこなのかを確認しました。私の場合、「キャリアに関する理論」や「人事及び管理労務管理の知識」「労働関係法令」などに間違いが多かったのですが、そうした苦手ジャンルについては、第1回の過去問までさかのぼって解きました。最初は苦手だったジャンルもそうして集中的に解くことで間違いが少なくなり、得意ジャンルへと変えることができました。
筆記試験の対策の3つ目は、自分なりのまとめノートを作ったということです。なかなか覚えられない人名や用語、間違えやすい数字などを、ジャンルごとにノートに書いてまとめるようにしました。きれいなノートをつくることが目的ではないので、色は赤と黒でシンプルに、自分が読めればいい書き方で、労力をかけずにまとめました。これで何度も見直すと、覚えの悪い自分でも覚えることができましたし、試験直前に見直すノートとしても役立ったので、取り組んでよかったと思います。
自主勉強会の多くの時間を面接試験対策のロールプレイングに充てていました。ロールプレイング15分、口頭試問5分、フィードバック15分、休憩5分の計35分を1セットにして、それを3回繰り返す、というパターンが多かったです。受験者は、一人一回はキャリコン役ができるように組み合わせを考えて実施しました。
私は、ロールプレイングの場になかなか慣れず、緊張して質問に詰まったりしどろもどろになったりすることが多かったのですが、次第に冷静にキャリアコンサルタント役ができるようになりました。そうして初めて、自分のコンサルティングの組み立てについて考えられるようになったと思います。私と同じように、緊張して頭が真っ白になるタイプの人は、まずはある程度の回数をこなして「慣れる」ことが必要だと思います。
対策講座で、キャリアコンサルティングに関する理論や技法を学んだわけですが、面接の場で、頭で考えてからそれを応答に活かすのはなかなか難しいと思います。それについて勉強会のサポーターから、「とにかく相手に気持ちよく話してもらうことが大切」というアドバイスをいただいたことを覚えています。養成講座で学んだ、面接の基本的な技法を復習したうえで、面接の練習では、相手の話に集中して、相手が話したいことを話してもらうということを意識してやっていたと思います。
面接のあとの口頭試問については、ある程度時間をとって練習と振り返りをすることをお勧めします。先ほど、相手の話したいことを話してもらうように意識した、と書きましたが、その面接の受け答えの意図を問われるのが口頭試問ですから、「なんとなく」と答えるわけにはいきません。「相談者は○○とおっしゃっていたので、私は○○と考えました」と答えられるようにならなくてはならないのですが、最初はまったくできませんでした。しかし、口頭試問の練習を重ねるうちに、面接でもそれを念頭に置いた受け答えが自然にできるようになっていきました。ですから、口頭試問は大切で、時間をとってやったほうが良いと思います。
面接の対策について付け加えると、論述試験と面接試験はつながっている、という話もよく耳にしました。論述試験の過去問を繰り返し解いていくと、相談者の問題点がどのあたりにありそうか、そこから先の面接はどんなことを聞いて展開していくかについて、次第に見えてくるようになります。その感覚は面接にも活きてくるので、論述と面接の練習に並行して取り組むことで、両方の力が次第に高まっていくと感じました。